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少年(少女)は足掻いている  作者: 草次城
ベラドンナ編

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15/36

(15) 王宮とノンビリ茶会と告白

 


 公爵について特筆すべきことはない。アスターが大人と一緒に段取りをつけていたからだ。

 俺が証言台に立ってから退出するまで、公爵はまるで自分の書斎にいるようで、一度だけ俺を見たときも嫌ぁな感じで笑っていた。判決を下されても処刑台に首を差し出しても、最期の最期までふてぶてしく構えていたと聞く。


 時節は春になっていた。ドレスの生地が変わって錯覚かもだが肘を曲げやすくなった。朝と日が暮れてからはまだ寒いが、俺の部屋から見える中庭は雪化粧を落として春支度を整えつつある。


 柔らかな日差しと爽やかな風を浴びて育ちゆく草花は、どことなく俺とシオンの思い出のエデルワイス邸を彷彿とさせる趣があるような違うような。


 俺は、なぜか出て行けと怒られないのをいいことに、まだ王宮に滞在させてもらっていた。長兄こと現コルチカム公爵の世話してもらって復学すべきだとは思いつつ、どっしり腰を据えている。


 単純に王宮の居心地がよくて引っ越す気になれなんだよな。気心の知れた侍女のライアこそいないけど、必要な品は届けられたし髪も化粧も世話されて屋敷での生活と特に変わんないし。


 強いて言えば、淑女命令が解かれた弊害で、歩き方一つとっても自分しか頼れなくなったのには困っているが、それは王宮ではなく俺個人の問題だからな。

 その点は周囲が俺を気の毒がってくれてる間に修正しようと頑張っている。今まで無意識にやってたことを意識するのは難しい。どの筋肉が動いてるのか感じながら筋トレをする感じで神経を使うんだ。うんざりすることしばしばだけど、それが自由の代償とすれば安いもんだ。


 そして何よりここにいればアスターと断然気軽に会える。


 今日もこれから茶会だ。侍女の人を従えていそいそ向かった場所は、窓の大きい白く明るい部屋だった。腰の高さいくつもの風景画が、レリーフの装飾はあれどあっさりした室内に色を添えている。

 出されたおやつは黄色くて薄いタルトだった。チーズタルトかな。しょっぱいやつ。いやこれ甘いわ、好きな味。


 感想は表に出さない。食べる早さも注意する。アスターに勘づかれたら、あいつ自分の分そっくりそのままよこしてくるんだよな。俺はおかわりもらうって何度言っても聞きやしない。お前もちゃんと一緒に食えっての。


 今回はアスターによる表情読み取り防止に成功し、つつがなく会話が続く。


「ライアの呪いは解かれたよ。健康そのもので君を心配しているそうだ」

「それはよかった。ライアにはいつかお詫びをしなくてはね。巻きこんでしまったんだもの」

「きっとすぐ会えるさ。夏には公爵も一段落つくはずだ」

「今はまだ後始末で忙しいのね。私が言うのもなんだけど、お気の毒なお兄様。無関係だったのにあの人の負債を背負わされてしまって」


 正直長兄など顔すら曖昧なんで、このタルトより薄っぺらい響きになったけど、同情したのは本心だ。ただでさえ長兄の肩には義姉と甥姪の将来だけじゃなく他のきょうだい親戚の出世も乗っかるんだ。余計な荷物はさぞしんどかろう。

 彼以外のソレルを含めた兄姉と母は知らん。変に責められてないといいとは思う。


「……彼が心配なら、僕と結婚すれば風当たりは弱まるかもしれないよ」

「それはいい案ね」


 結婚ねえ。そろそろ俺は進路を決めないとな。前公爵に俺の意思を無視して放り込まれるのは断固拒否だったけど、自分から入るなら修道院もいい。あそこは運営も自分たちでやる忙しくも自由な場所らしいし、典型的な貴族男と結婚しなくてすむなら選択として大いにありだ。


「兄上にはまだ嫡男がいない。僕は王女と結婚して子供をもうけることを望まれている。そして陛下はコルチカム公爵の増長を危惧していた。僕と君と結婚はあり得なかったが、状況が変わった。公爵は報いを受ける時が近く、次代の当主は王家に負い目がある。妹の君と僕が結婚すれば周囲は彼が無関係だったと察するだろう。そして王家は最も近い位置に監視を置ける。派閥は僕を憚って盛り返すまではいかないはずだ。二者両得だよ」

「そうねえ。でも後継ぎの問題があるでしょう」

「女王を戴けばいい。亡き兄上にもバーチ兄上にも娘はいる。彼女たちにもし王位継承権があれば僕よりも順位は高くなる。女王は所詮背後にいる男の傀儡にしかなれないというくだらない迷信と決別する時が来たんだ。そもそも過去何回も中身の詰まっていない頭を王冠置きにしておきながら、性別が変わった途端に判断力を案じだすなど笑止千万。これ以上権力争いの相手を増やしたくない軟弱者が女性の教育の機会を奪うだけでは安心できずに結託して妨害しているんだろうよ。その不正をただす大きな流れが来ているんだ。僕たちの結婚の障害はないばかりか利だけがある。そう言っても過言じゃないんだよベラドンナ」

「……そ、そうね……?」


 なんかすっげえ早口じゃない?


 冗談にしては熱っぽくまくし立てられてる気がするんだけど、アスターは俺が本気で兄を心配してると誤解して励まそうとしてんのか? でも雰囲気がちょっとそうでもないというか、うーん、指摘しちゃえ。


「アスター、それじゃあなんだか口説かれてるみたいだわ」

「そうだよ」




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― 新着の感想 ―
書籍化してほしいくらい面白いです!
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