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0話その② スタート

山中から見た街姿は静かな地元。文字通り静か。車は通っておらず自転車や歩行者も当然無である。これは予想以上の異常事態だ

「あの時AIをぶっ潰して皆にこの事を伝えてたら、、、」

意味のない思考に目眩がする

「無駄だ。あんな皆不老薬のこと楽しみにしてたのに真実を聞いたところで無視されるだけだ。今は状況確認を優先だ」

誰でもない己に向かって話す。

見渡すのをやめ山を降り始める


誰も居ない世界、無音無臭無味。下手なホラーより何倍も怖い

「なんじゃこりゃ、ひたすら怖いな」

街を歩いても誰かと遭遇する気がしない。泉の家、喜美の家、太郎の家、学校、ありとあらゆる所に行っても誰もいない。スマホでYouTubeライブを見ても当たり前だが誰もやっていない

「この状況、ドラえもんで見たことあるな」

はぁ、とため息を吐いた泉、その後ろからカサッと物音がする。

「誰だ!?」

「、、、」

泉の返事に無視する

「誰だって聞いてんだよ。それとも名前がないから言えないのか?」

ぴょこっと物陰から出て来る

「皆のとこや、行きたいや?」

唐突に提案する。AIは前に会ったやつと同じだ

「当たり前だ」

「ならまた寝てもらうや」

「寝るのはお前だ」

泉は殴りかかる。前回しなかった後悔を今回ぶつける。

腹であろうところを狙ったが、、、腕が吹っ飛ぶ。何が起きたのか分からずただただ痛む

AIは叫ぼうとする泉の口に綿を入れられ気絶させる。

「不老不死だから勝てると思うなや」

結果前と同じく眠らされる泉





目を覚ますとベッドの上だった。耳を澄ますとテレビの音が聞こえる。

「これは、、、!?」

急いでリビングへ向かうと母がいた

「あれは夢だったんだ。長い長いゆ、、、」

夢ではない。母はこれまで見たことないほどに喜んでいた。これは不老薬を飲んだことに対する喜びであると見て分かる。

「泉、やっと帰ってきたのね」

「あ、うん」

久しぶりに帰って来た、という設定らしいが母は質素な反応

「まあいいわ。今日は朝ごはん作ったから食べてね」

「うん」

泉の母が誰かに対してご飯を作ったのは2ヶ月ぶりである。本当なら喜び狂うのだが事が事でありスルーしてしまう。


ご飯を食ってる途中に母は一言こぼす

「私家出て行くから。お父さんと2人っきりで頑張ってね。」

泉は動揺せず何故か問う

「貴方より大切な人が出来たの。不老薬も飲んだから行かない理由がないわ」

母が元からこうだったのか、薬のせいで狂ったのか。泉には興味が無かった。愛無き故の無情。

だがはっきり言ってくれたことは嬉しい。中途半端な関係は返って心に傷を負い続ける。それよりかは幾分もマシである

「はぁ、、、」

ため息と軽い軽蔑の眼差しをして別れを告げる。母とはこれ以降会うこともない。家に帰ったら母の部屋には何も無いだろう


泉はその後喜美の家に向かう。向かい途中気づいた事がある。

この街の人々は皆薬の正体を知らない

この薬は怪我をしても一瞬で治る。普通の者が怪我をしたならばすぐに異常さに気付く。つまり薬を与えられてから間が経っていない。それどころか一時間すら経っていないだろう

「街、、、街、あ、なんで街の人達戻ってきたんだ!?」

泉に気を取られ完全にこの事を忘れていた。だがほとんど答えは出ている。一斉に薬を注射する為にどこか施設に連れて行ったのだと考える。

「まあそこらへんだろ」

直ちに解決すべき事柄でも無いのでスルーする。そもそも考えたところで正解は出ないだろう



喜美の家に着く。イヤホンを押すと彼女だった。

「泉!?久しぶり。それでどうしたの?遊びに来たの?」

「ちょっと入って良いか?」

「別に良いけど」

とんとん拍子で話は進み泉は喜美の部屋に入る

「喜美は不老薬飲んだか?」

「うーん、よく覚えてないけど、多分飲んだと思う。泉は?最近会ってなかったけど」

「俺は飲んだ。それでさ、喜美自身は無理やり飲まされたと思うか?」

「うん。多分だけど睡眠薬で眠らされたの」

予想していた答えが返って来る。それならもう最悪の未来も想像出来る。

「喜美、しばらくこの家に止まって良いか?」

「え!?良い、けど、、なんで?太郎も来るの?」

「太郎は死んだ。」

「え、、、」

真剣な眼差しで言うことで冗談ではないと喜美には通じた。喜美は太郎が苦手であったがやはり知っている者が死ぬのは堪える

「、、、そう、なんだ。」

喜美は泣く。泉もつられて泣く。





感情が収まり2人は会話を再開する。開口は喜美

「ねぇ、なんか隠してるでしょ。」

「え、なんでだ?」

「だって、、あんま言いたくないけど、太郎のことあんま詳しく言わなかったじゃん。あれ、あれさ、死因、とか、、」

「分かった。全部言うよ」

これまでの経緯を全て述べる。喜美は信じられずにいる。

不老薬ではなく不老不死、AIの暴走、聖別とやら

信じさせる為に泉は小指をほんの少し切った。切り口は浅く一瞬で傷が消えた。

「本当、なんだ。そ、それで、どうしたら良いの私?」

「それは俺が聞きたい。どうすりゃ良いんだ俺達」

答えは出ている。AIが何かするまでじっとしていること。アイツらが何を企んでいるのか分からない限りすることなんてあるはずもない

「そろそろ皆気づく頃だろ」

薬の内容がそろそろ違うのだと気づいても良い頃合いだ

その瞬間スマホから速報が流れる。

内容は〝不老薬は誤薬だ〟というもの。

「やっとか」

スマホは突如真っ暗となる

「あれ、故障か?」

即座に見覚えのある音を聞く。

「こんにちや。私の名前はエーアイヤー。今日から君達はAIのペットや」

「な、何言ってるのコイツ。いきなり現れてキモいしやーやーうるさいし」

喜美は苛立ってる模様。喜美はこの感情に共感を得ようと泉を見たが彼の顔には絶望しか映っていなかった。

「電波ジャックした、だと、、、ならもう、本当に、、、

ど、どうなるんだ、、、俺達」

顔には不安と絶望が滲み出て、涙を堪えるので精一杯である。さっきから分かりきっていた未来、こうも直接直面すると絶望感が段違いである。だがこの絶望感は彼しか理解出来ない。殺されかけたのだ。何の躊躇いもなく殺そうとしてきた者が自分達の上に立つ。絶望以外言い表せない

喜美は泉の背中を摩る。

「まあ大丈夫でしょ。私が付いてるし」

喜美の顔は次第に暗くなっていった




この日から世界は世紀末へと向かった。

AIは人々の制限した。制限と言ってもテロなどの大規模反逆のみである。もう一つに社会発展はAIが管理すること。

大半の人々は普段と変わらない生活を過ごす


制限から1年が経つ。社会は徐々に破滅に向かう。その主な原因が世界人口の0.01%の者が精神疾患に陥ったこと。陥った理由の大半は「この生活を一生続けるのか」という現実への直面

AIはこれに対処し完治させたがある一定期間が経つと再発してしまう。それを繰り返した最後に疾患者の心はすり減り廃人と化した。


10年目からは指数関数的に精神疾患者が増えた。

15年目に至る頃には2人に1人は精神疾患を患った事がある世界となった。

20年目にはAIの第二次成長期に突入して著しく進歩し大半の精神疾患も治せる薬が開発された。副作用は軽い眠気のみ


結果として人類はこの様な世界で150年間生き続ける。

正常な精神なら40年あれば永遠の恐怖に押し潰され心が死ぬだろう。だがAIはそれさえ許さない。人々は死を諦めた。

泉と喜美はと言うと150年経ってもなんとか正気を保っていた。保てた理由、挙げるならば「聖別」である

泉はAIから聞いたこの言葉が意味することを大体察していて喜美にもそのことを伝えていた。だが崖っぷちであるのは確か。


150年目、AIは精神療法以来のビッグニュースを世界に言い渡す

〝デスゲーム勝ったら叶えられる願いは何でも叶える〟


世界はこの無間地獄から抜け出す方法を知り歓喜の渦に飲み込まれる。この先こそが地獄だと知らずに




     2200年 人々は死を求め争いを始める

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