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第4話 ボーナスゲーム

トーフーがボーナスゲームのクイズについて説明してくれる。


「例題で説明します。こちらのボードをご覧ください。問題文でわかりにくい所がありませんか? あったら、ご遠慮なく質問してください」

「わかるわ。大丈夫よ」


凄い。アイちゃんは文字も読めるらしい。5,6歳くらいで文字が読める子どもは、貴族の子どもでもそんなにいない。どこで習ったのだろう? やはりアイちゃんは貴族の子どもなのか? それはさて置き、例題はヒントまであり、簡単な問題のようだ。


例題 下の1番から3番の中から、キーワードにふさわしい番号を1つ選びなさい。


キーワード 花札の3月。

ヒント 花札のカードは月ごとに花が描かれている。その中には動物が描かれているカードもある。


1月 マツ  2月 ウメ  3月 サクラ  4月 フジ  5月 アヤメ 

6月 ボタン(チョウチョウ) 7月 ハギ(イノシシ) 8月 ススキ 

9月 キク  10月 モミジ(シカ) 11月 ヤナギ  12月 キリ

 

選択枝

1番 ムズカシイヨー 

2番 イイウマダ

3番 サクラサク


正解 3番 サクラサク


キーワードの3月の花はサクラ。3番のサクラサクには、サクラが含まれているから3番が正解ということだな。ここは俺が答えておく。


「サクラを含む3番が正解ということか?」

「はい、その通りです。では、本番です。こちらがボーナスゲームの問題になります」


トーフーがボードを裏返しにして、取り出した。


「お1人様が1題を答えていただきます。最初はお嬢さんから、制限時間10分でお願いします。」

「ちょっと待って。私はこういう問題に答えるのは得意じゃないの。お兄ちゃん、間違ったらどうしよう」


アイちゃんが青ざめた顔で聞いてきた。落ち着いてもらおう。小さい女の子が間違っても仕方ない。そう思って声をかける。


「アイちゃん、間違えてもいいよ。落ち着こう。深呼吸をしようか」

「わかったわ」


アイちゃんは、スーハースーハースーハーと深呼吸をした。少し落ち着いてきたようだ。青ざめた顔色が元に戻ってきた。そして、トーフーに言った。


「もう大丈夫よ。始めましょう」

「わかりました。制限時間10分でお願いします。では、スタートです」


トーフーがボードをひっくり返して、問題が見えるようになった。


ボーナスゲーム問題  


第1問 花札を使った問題です。チョウチョウが6,イノシシが7います。シカ

はいくついるでしょうか?


アイちゃんは、例題のボードをじっくり見ていたが、例題のボードを見ながら自信なさそうに答えた。


「え~と、え~と、そうだわ!10だわ。6月の所にチョウチョウ、7月の所に

イノシシって書いてあって、10月の所にシカって書いてあるもの」

「10でよろしいですね」

「えっ、ちょっと待って。う~ん、え~と、どうしようか。うん、やっぱり10

でいいわ」


トーフーが少し間を取ってから、ニッコリして告げた。


「正解です。お嬢さんのおっしゃる通り、チョウチョウは6月だから6、イノシ

シは7月だから7、シカは10月だから10ですね」

「やったわ~、正解だったわ~。間違っていたらどうしようと思ってドキドキし

たわ。正解で良かった~」


アイちゃんが安心した様子をして笑顔で言う。おめでとう、アイちゃんよくやっ

た、よく頑張った。さあ、俺も正解しなくては。


「次の問題を開始してよろしいでしょうか」


問題の書かれたボードを裏返しにして取り出してから、トーフーが俺に確認してくる。俺は自信満々に答える。


「はい、始めてください」

「では、第2問です。制限時間10分でお願いします。ではスタートです」


トーフーがボードをひっくり返して、問題が見えるようになった。


第2問下の1番から10番の中から、キーワードにふさわしい番号3つを選び

なさい。


キーワード 花札の「イノシカチョウ」  


1番 イロイロアルヨ  2番 イチゴミルク  3番 ヤマノオクリモノ

4番 コレハチガウ   5番 サラダガスキ  6番 スタートボタン

7番 コイノヨカン   8番 ハシレヤハシレ 9番 コドモガウマレルヨ

10番 アシカノケンチャン


自信満々に答えたものの、パッと見ただけではわからない。第1問より難しい問題だ。イノシカチョウ、イノシカチョウと頭の中で唱えながら、1番から10番の文字を見ていく。すると、なんとなく分かってきた。


イノシカチョウ、つまり、イノシシとシカとチョウチョウを探せばいい。イノ

があるのは7番のコ「イノ」ヨカン。シカがあるのは10番のア「シカ」ノゴ

マチャン。あれ、チョウがあるのはない。問題ミスか?いや、もっと考えてみ

よう。


イノシシは7月だから7番、シカは10月だから10番、チョウは6月だから6番か?

6番スタートボタン、そうかチョウチョウの描かれているカードの花はボタンだ。花札でボタンとチョウチョウはセットだ。逆に言うとチョウチョウとボタンはセットだ。そう考えていいはずだ。だから、ボタンを含む6番、これが答えだ。


「選ぶのは6番、7番、10番」


トーフーが微笑んで宣言する。


「正解です。おめでとうございます」


アイちゃんが、満面の笑みを浮かべて抱きついてきた。


「お兄ちゃん、すご~い」

「ありがとう。アイちゃんが応援してくれたからだ」


2人とも正解できた、いい結果が出せた。本当に良かった。思わずアイちゃんを高く抱き上げてしまった。アイちゃんはキャッキャッとひとしきり喜んでいる。すると、トーフーが口を開いた。


「数字合わせゲームにチャレンジできます。心の準備はよろしいですか?」

「準備はできています」

「大丈夫よ。いつでも始めていいわ」


2人の返事を聞いて、トーフーが上に向かって『スタート』と言うと、0から9までの10個の数字が空中に浮かびクルクルと自転を始めた。そして、トーフーが再び説明する。


「お客様の合図で回転が止まり、10個すべてが同じ数字になったら当たりです。豪華な賞品がもらえます。特に10個すべてが7でそろったら大当たり、家がもらえます。今だと思ったら、ストップと叫んでください」


それを聞いたアイちゃんが、頼んできた。


「私、横笛で曲を演奏して、お兄ちゃんを応援するわ。だから、お兄ちゃんがストップと叫んで」


そして、アイちゃんは横笛を吹き始めた。その曲は俺も知っている『女神様にお願いします』だ。ゆっくりしたテンポで、いい夢を見ているようなやさしい感じの曲である。


曲を聴いていたら『0に合わせて叫んで! 3,2,1』という声が聞こえた気がしたので、あわてて0に合わせてストップと叫んだ。すると10個の数字の回転はだんだんゆっくりになった。


 9個の数字は次々に7で止まった。残り1つの数字の回転が、今にも止まりそうなくらい遅くなる。3から4,4から5、5から6になり6で止まった。

ダメか、そう思ったら6の数字が再びゆっくりと、7になろうと回転を始めた。半分ほど回転した所で6に戻ろうと逆に回転し始めた。


ああ、やっぱりダメかと思ったら、急に回転して7になった。とても信じられない。10個の7がさまざまな色に輝いた。とても美しい。アイちゃんも横笛を吹くのを止め、見つめている。


ヤナギの部屋上部の雲が薄くなっていく。明るい青空が広がる。空から大合唱が聞こえてきた。すごい人数の大合唱だ。『喜びの歌』、有名な曲である。梅、桜、藤いろいろな花の花びらの吹雪が舞う。


その中を10個の7が一列になって、空を飛び、ダンスを踊るように、ある時はゆっくり優雅に、またある時は速く剣舞のように舞い踊る。素晴らしい。アイちゃんと2人で、見とれてしまった。

 やがて、合唱が終わり、10個の7も光りながら消えていった。空にもまた雲が広がった。それを見ていたら、トーフーが祝福してくれる。


「おめでとうございます。大当たりは花札の屋敷開業以来初めてだそうです。私の聞くところ、最低でも200年は出ていないとか」

「えっ、そうなの?」


「はい、10個の数字の中から、7の数字だけが10個並ぶ確率はとても低いのです。ですから景品がとても豪華になっております。

1年ごとに予定されていた巨額の予算がすべて繰り越されて、それはもう大変な金額になっております。


その結果、景品の家の維持管理費、執事やメイドなどの人件費、食材や服、その他の生活に必要な物品の購入費、すべて無料となっております。その他、家のことについては現地で詳しい説明があるかと思います」


これは夢か? 夢なのか? 一生の運をすべて使い切ってしまったかもしれない。そんな事を思っていたら、アイちゃんが体当たり、いや抱きついてきた。


「お兄ちゃん、すご~い。すごい、すごい、すごいよ~~~」


俺はアイちゃんを両手で高く持ち上げて言った。


「アイちゃんが横笛を吹いて応援してくれたおかげだよ。ありがとう」

「うん、私も頑張ったよ~。とっても嬉しいの~」


コホンと咳払いをしてから、トーフーが説明を続けた。


「この水晶球に手を触れてください。家の所有者としての登録をおこないます。なお、15歳以上の方に限りますから、登録はお1人様ですね」


そうか、登録できるのは大人の15歳以上か。アイちゃんはダメなのか。どうしよう? と思ったら


「私はいいわ。お兄ちゃんが一緒でなければ家は手に入れなかったのだから」


いい子だ、いい子すぎる。しかし、俺が家を独り占めするわけにはいかない。アイちゃんが15歳になったら、改めて相談しよう。それまではアイちゃんとの共同所有と考えるのがいい。

そんな事を考えながら、水晶球に右手を触れると水晶球が光った。


「これで登録終了です。次にお2人ともこのペンダントを身につけてください。このペンダントを身につけていると、国内であればどこからでも、転移陣なしで、家の転移陣へ転移できます。その逆はできませんが。


今回、転移先のアドレスは、景品の家です。景品の家と念じてください」

「私、行ってみた~い。すぐに行こうよ~。速く~」


ペンダントを2人とも身につけた。すると、アイちゃんがキラキラした目で俺を見つめてきた。なぜか急いで家に行きたいようだ。その熱意に負けてすぐに転移することにした。トーフーにお礼を言って、アイちゃんと手をつないでから念じた。


転移! 景品の家



お読みいただきありがとうございます。

良かったら、誤字報告等お願いします。


参考

喜びの歌 交響曲第9番 より 

作曲 ベートーヴェン  作詞 フリードリヒ・フォン・シラー


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