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アンチとは、逆襲のヒーローだ  作者: 死馬奇大造
〜在り方と、生き方を〜
22/23

Record.19『甦る、原点』

 説明はこのくらいですね! という言葉で締めくくられた。僕は緊急会議に続いて、別室で2度目の小さな会議に参加させられ、西の会長による説明を受けていた。

 他にも東の会長や、ちょっとした役員達がいる。

『リカーの酒亭』に潜入捜査するために、事前に知っておくべき情報を、色々と聞かされていたんだ。


 まず、実際に捜査しに行くのは、明日の夜中らしい。ハロウィン当日に、チャッカマンが現れるとされる21時と、同じ時間に行ってみて情報を収集して欲しいそうだ。

 潜入捜査には、私服っぽく見える特別なヒーロースーツを着用して行き、録画機能を使って本部にいる人たちにも、常に現地の状況が分かるようにする、と。つまり、ヴィランとしては動けないって事だ。

 あと、オーナーは"リカー"という『凶悪レベル2.0』のヴィランらしくて、警戒してって言われた。けど正直、横島を倒しちゃってる僕からすると、もはや怖くない。

 とはいえ、そもそも潜入捜査なわけだから、バレちゃいけないんだけど。明日か……初めてヒーローとして行くな。


「苦労かけたね、ビリー殿……昨日は、すまなかった。我々東京義会が遅れたばかりに、君に横島を任せてしまった」

 東の会長が謝ってきた。この人は優しいように思えて、実は何かを企んでいる……かもしれない。朱雪から貰ったボイスレコーダーを聞いて、疑うようになったんだ。


「いえ、そもそも僕は、横島を倒さないといけなかったんで……事務所から、1週間で横島を捕まえないとヒーローを辞めさせる、みたいな事を言われました。会長は、その事を知らなかったんですか?」

「……初耳だね、私は今衝撃を受けている。それは一体、誰からの命令だったのかな?」

 僕が、直接言われたのはワイズ班長だけど、多分トラ・ゴーアだと思います、って言うと東の会長は、呆れた様子で又もや謝ってきた。けどその謝罪は、多分嘘だ。

 恐らくトラ・ゴーアから下された命令は、元より会長から伝って下りてきたものだと思ってる。

 なにせ会長は、裏で僕を『殺戮の救世主(メサイア)』と謎の名で呼び、あまつさえ徹底的に追い込むとか言ってんだ。


「東風さんにお聞きしたいのですが……ビリーさんは何故、東京義会所属ではないのですか? 横島を凌駕するほどの実力者でありながら、トラ・ゴーアの配下に置くなど……」

 疑問をうかべる西の会長は、過去の僕を知らない。だから、そう思うのも当たり前だろう。

 恐らくトラ・ゴーアは、横島に勝てるほどの力を持っていない。両者と戦ったことのある、僕だから分かること。多分、今の僕は、トラ・ゴーアなんかよりも強いだろう。

 ただ、トラ・ゴーアは政府に守られてるから、どうすることも出来ないと、前に東の会長がいっていた──


「そうだね。これ以上……トラ・ゴーアを自由にさせる訳にはいかない。ビリー殿は、とても優秀なヒーローであり、未来を作り替えることの出来る、救世主だ」

 救世主……言い換えると──『殺戮のメサイア』。

「是非とも、東京義会に帰ってきて欲しい」

 え? なんだよ、急に……前まで、トラ・ゴーアから僕を救うことは絶対に出来ない、みたいな感じだったじゃないか。心変わりでもしたって言うのか?


「帰ってきて欲しいということは、ビリーさんは元々東京義会だったのですね! では、復帰という形に?」

(──落ち込んだヒーローの、下克上ということね!!)

 復帰と言えば聞こえはいいけど、東の会長が近い存在になることで、僕は常に見張られているかもしれない、という危機感の元、動かなきゃいけなくなる。

 こんな急に僕の復帰を要望してきたって事は、このタイミングで僕を、管理下に置きたい理由があるんだろう。

 とはいえ、東の会長が企んでいる事は探りたいし、朱雪にも会いやすくなる。朱雪は、会長の息子であるにも拘わらず、同じく会長を疑っている人物だ。

 何事にも利点と欠点は存在する。なら、現状維持ではなく変化を求めていくとしようか。


 ──僕、ビリーは、ヒーロー第一本部の『東京義会』へ復帰することにした。約5年ぶりの、帰還だ。



 会議は終了し、東の会長から個人部屋を与えられた。ここは、昔に借りていた部屋と同じところに思えるけど、東京義会に所属していた期間は1年もなかったから、あまり覚えてないな。

「酒呑童子の息子、よくやったぞ」

 部屋で1人になり、なんとなくボーっとしてたら、不意に朱雪がやってきて声をかけられた。

「ヒーローを続けられただけでなく義会に戻ってくるとは、期待以上の結果だ。それに父が、酒呑童子の息子に執着している理由も分かった──あの光は、魔法か?」

 あの光?……あー横島を気絶させた電撃のことか。電力100パーセントを放ったから、閃光の如くだった。


「あんたの言っていた通り、ボイスレコーダーからヒントを得たんだ。魔法じゃない、ただの電気だよ」

「電気を生みだせる時点で、只事じゃないぞ」

 それは……そうか。大きな話になるけど、地球上で変な力を持っている生き物は、意外といたりする。でも流石に、電気を生みだし操ることの出来る力なんて、極稀だろう。

 人間は元より電気信号で動いていて、僕の電気も理論に基づいた力なんだと、オメガは言っていた。

 僕には闇の感情という電気が溢れんばかりにあるらしい。でも、超能力といった方が通じるかもしれないな。


「よし、では行こう。準備はいいか?」

 僕は唐突な話の切り替えに、戸惑いながらも意味を聞く。

「前に言っていただろう。酒呑童子の息子が無理難題の任務に励んでいる間に、俺もやる事をやっておくと。実は、お前の父親の居所が、ついに分かったぞ」

 え、っと僕は思わず声を漏らし、目を見開いた。

 元東京義会所属のヒーローであり、今は『凶悪レベル3.6』のヴィラン、"酒呑童子"──僕の実父だ。

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