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アンチとは、逆襲のヒーローだ  作者: 死馬奇大造
〜ヴィランにも、なった〜
17/23

Record.14『ヒーロー対ヴィラン』

 渋谷の交差点、豪雨の中。

 ッ!!──完全に対等だ。僕は、横島に拳を振るうが避けられ、横島の蹴りも僕には当たらない。この戦闘が始まってから約10分、未だにお互いの攻撃は1度も当たっていない。

 一旦、距離を置き、僕と横島は呼吸を整える。

「貴様……少し見ないうちに、体つきが変わったか?」

 そう、実は僕も気づいていた。体内に異常な量の電気が流れているおかげか、最近は、何もしなくても筋肉が発達している。

「あ、分かる? けど、もっと変わったのは──」

 僕はすぐに横島へと接近し、向かってくる攻撃をかわして小さく跳び、足を横に振った。「──強さだよ」と途切れた語りを続けて、いわゆる飛び蹴りをやったんだ。

 足は、横島の側頭部を直撃したが、横島は軽く頭を抑えているだけで、あんまり効いていないっぽい。


 この機会を逃すな、攻撃を緩めるなッ!! そう自分に言い聞かせ、追い打ちをかける。

 脳が揺れているのか、反応の悪い横島は、僕の攻撃を避けることが出来ていない。横島も反攻してくるが、簡単に交わすことが出来ていた。

 横島は、図体がデカい。第六感を体験して、相手の行動を体で捉えられるようになった僕は、小柄を活かして上手く懐に入る。蹴りを交わし、横島の顔を手のひらで掴むと、そのまま後ろ向きに思いっきり倒した。

 横島の殺気が、電気として犇々と伝わってくるんだ。もう、電流を視認せずとも攻撃を避けられる。

 ただ、相手の行動を読み取ることが出来るのは、横島も同じだから、気をつけ……ッ!?

 僕は、雨に濡れた地面で足を滑らせ、一瞬のうちに横島から途轍もなく重い一撃を、背中に喰らってしまった。横島は、両手を組んでハンマーのように振り下ろす、技を繰り出してきた。

 背中が割れてないか、心配になるくらい痛い。


 すぐさま距離を置いて、電気による回復に励む。僕の体内には、異常な量の電気が流れている。

 ほっとけば、すぐに回復するはずだ。まあ、骨イカれてたら厳しいけど……立ってられるし、大丈夫だと思う。

 それにしても、本当に雨がすごい。まさかコケるとは思わなかった。横島と少し離れただけなのに、姿が見えなくなってるし。

 横島の殺気は強烈でわかり易いから、位置は把握できるんだけど。視界不良は普通に戦いずらいな。


「おいそこのやつ!! おい!!」

 ん? 大きな声を出しながらこちらに向かってくる人影が……まさか一般人か?! いやいや、危ないぞ……。

 あ、全然ちがう。ヒーローだ、しかも僕の知っている……トラ・ゴーアと同じくらい嫌いなヒーローだった。

「私が来たからにはもう安心だ、って、おまえかよ。もっとまともなヒーローを期待していたんだが」

 僕が所属している東京ヒーロー事務所の、ワイズ班長だ。僕はこの人の班に入っていて、数々の嫌がらせを受けてきた。

 手柄を横取りされたり、僕のことを忘れて出動したり、班の中で僕一人だけ孤立状態だった。挙句の果てには、横島を捕まえろとかいう無理難題を押し付けてくる始末。

 それらが仮に、トラ・ゴーアとかの指示でやっていたとしても、許せるわけがないものばかりだ。

 とにかく憎い。憎くて仕方がない。

 殺意すら芽生えてしまう。


「おまえ、さっさとどっか行け。これから横島は、ワイズ班が相手をする。おまえは邪魔になるだけだ」

 雨靄でよく見えないけど、ワイズ班が来ているっぽい。てか、こいつにとって僕はもはや、班の一員ですらないのか。

 ワイズ班が横島の相手をする、か……無理に決まってるのに。あんたら如きが勝てる相手じゃないって。

 雨靄の中からたくさんの断末魔が聞こえる。

 班の仲間の声だと気づいた班長は、焦り始めている。ほら、そりゃそうだろ。とてもいいざまだ。


「班長……何もかも、あんたの勝手だけど。気をつけた方がいいよ、もう僕は、あんたの知ってる僕じゃない」

 そう言い放った僕は、唐突にその場で屈んだ。頭の上に風が起こり、鈍い打撃音が聞こえると、班長が激しく地面に転がってった。

 僕の横には、横島が立っている。体で、肌で、火花散らす殺気を感じ取った僕は、屈むことで横島の攻撃を避けていた。その代わり、僕に当たらなかった攻撃は、班長に直撃したんだ。

(──何っ?!……今のを、避けただと……)

「ありがとう、横島。邪魔なゴミをぶん殴ってくれて。めっちゃスカッとしたよ、本当に」


 静かだ、雨の音しか聞こえない。結局、加勢に来たワイズ班のヒーローたちは、一人残らずやられたのか。

 呆気ないにも程がある、何しに来たんだか。

「どんな程度だ? 確かめに来たんだろ? あんたの本気を引き出せるほどの力……僕が、得たのかを」

「ふむ……申し分ない」

 おもむろに横島が、いつも深く被っているシルクハットを外した。短い髪と、隠れていた額の大きな傷跡が顕となる。


「現時点で、劣勢に立たされているのは俺だろう。もはや貴様にとって、俺との戦闘は、運でどうにかなる話になったようだ。閃光の如く機敏に反応する、その力──」

 ッ!!? グフッ……な、なんだ?!

 横島は、「──見事だ」と会話の流れを残し、強烈な膝蹴りを僕の腹部に当ててきた。

 何故に、避けなかった? いや、避けようがなかった……だって、殺気が消えたんだ──横島から。

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