32話 旅の続きは竜巻に乗って 6/7
「お嬢ちゃんたちは、異国の人に見えるけれど、なんでペンタクルにやって来たんだい?」
食事も終わり、おかみさんがお茶を入れてくれて、まったりモードになっている。
「あーーー……、なんでかな……」
そういえば、どこまで町の人に話していいのか、アレハンドラさんから聞いていなかったと思って目が泳いでしまう。
でもソーラが居なくなった事を隠す為の代役なのだから、すべて秘密なのだろう、きっと。
「あっ、かーちゃん!そういえば、今日神殿でソーラさまに会ったんだ!」
「あんた、また神殿に行ったのかい?」
「そりゃ毎日行くよ。神官になる勉強をさせてもらっているんだから。」
「そんな、なろうと思ってなれる仕事じゃないよ。神官になりたくて神殿に出入りしているなんて、恥ずかしくてかーちゃん、誰にもそんな事言えやしないよ。」
「恥ずかしくなんて無いよ、かーちゃん。」
「ぃんや、恥ずかしい。我が家の恥だ。そんなことより、人が神官になるなんて叶いっこない夢は諦めて、料理人の修行でも始めな。」
「やだね!今日だって、アレハンドラさまに特別な仕事をいただいてきたんだから、期待されているという事だろ!」
「……まぁ、かーちゃんは無理だと思うけどねー、」
「っうっさいなぁ。」
ラロが唇を尖らせた。
「ところで。ソーラさまは元気そうだったかい?」
「うん。今までご病気だったらしくて、外に出ていらっしゃらなかったのか、色白になられていたけれど、もうご病気も全快されたとかで、元気そうだったよ。」
「それは良かったねぇ…元気なのは何よりだよ。」
そんな慕われている話を聞いたら、無理やりの成り行きだったとはいえ、騙しているオラたちとしては心が痛くて仕方がない……
「あははは……」
「そういえば、ストローさんたちは、どうしてあの時に神殿にいたの?」
ほら来た。
ラロが当たり前の質問を投げかけてきた。
今までそれを聞かれなかったのが不思議なくらい、当たり前の質問だ。
オラだったら、いの一番に聞いている。
答えてあげたいが、悲しいかな、その質問に答えられる答えを持ち合わせていない……
「えーーーっと……」
答えに困って、メイシアとウッジを見るが二人ともまったく目を合わせようとしない……。
メリーまでテーブルの上で寝たふりをしている。
するとおかみさんが話し始めた。
「かーちゃん。そのソーラさまの話でピーンと来たよ!」
「ウソだろ!かーちゃん、すげぇな!」
「かーちゃんの推理だと……お嬢ちゃんたちの見慣れない服装を見ると遠くからやって来た方に違いない。そして、ご病気の治られたソーラさま。それを総合して考えると……、」
「うんうん!」
一体このおかみさんは何を言い出すんだろう…医者とでも言うんだろうか…
「このお嬢さん方はきっと……偉い祈祷師さまだよ!変な鳥も連れているしね!」
「かーちゃん、やっぱすげえな!」
「ちがーーーう!」
あ、声に出てしまった……
一気に二人の視線を集め、話し相手が1対2の構図になってしまう。
「え、違うのかい?名推理だと思ったんだけどねぇ。じゃぁ、お嬢ちゃんたちは何しにここへ来たんだい?」
しまった。
適当に話を合わせておけばよかった……。
だって、祈祷師なんて適当に話を合わせられる一番おあつらえ向きの職業だったのに!
あぁ、めっちゃこっち見てる……、えぇい!ままよ!
「……医者です、」
あぁ、メイシアとストローの顔色が青くなった……。
わかっているよ、自分が何をしたのか……、でも助け船を出してくれなかったのはみんなじゃないか……
「わ!すごい!ソーラさまのご病気を治療されたお医者さまなんだね!なんて聡明な方に料理を食べていただけたんだろうね!」
「やったね!かーちゃん!おいらのおかげだよ!」
「でかした!息子!」
わーーー!
よりによって、教養も学もないオラが医者という頭のいい人しかなれない職業だと偽るなんて!
……もう黙っていよう、
沈黙は金……。
そうか、だからメイシアもウッジも黙っていたのか。オラ、やっぱり学がないから……
「だったら、あれだねぇ。」
「あれって、何だい、かーちゃん。」
まだなんか話が続くのか、この親子……
「ほら、一年ほど前から森の中に住み着いているっていう女の子。不治の病らしいんだよ。かわいそうにねぇ。まだ小さいんだよ。なんだったら一度、見てやっておくれよ。ソーラさまを治せるほどの腕前のお医者さまなら、きっとその子も治せるよ!」
「やっぱ、かーちゃん目の付け所が違うな!すげぇよ!ほんとだな!かわいそうだもんな!おいらからもお願いするよ、ストローさん!」
え、やっぱりオラ?……だよね、医者ですって言ったのオラだけだもんね……
「……はい。では明日にでも……。」
メイシアとウッジがため息を吐いた……音が、空しく耳に届いた。




