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13話 「達成の鍵」 4/6

 おばさんにお礼を言って、領主のお屋敷までの道を聞いて別れた。


 目指す領主の屋敷は、今は帆が折れて動いていない風車の角を曲がってまっすぐらしい。

 基本的にだだっ広い一面麦畑。


 壊れた風車の目印もわかりやすかったが、そこまでたどり着く頃には、領主の屋敷自体、領主という身分に恥じないような「お城」と言ってもいい豪邸だったので、遠くからも目印になって迷わずに到着できた。

 大きい分、近くに見えても結構遠かったけれど……。


 到着すると大きさは圧巻で、敷地の境界一つとっても、今まで見てきた家はどれも塀や垣根とは比べ物にならない立派なものだった。


 門までやってきところで、いったいどうやって声をかけていいものかと、門の前で四人でまごまごしていると、門の横の人の顔ほどの大きさの格子窓がカタカタと開き、中から年配の男性が顔を出した。


 「お嬢方、チャリオット様に何か御用かね。」


 「はい。私たちは…」とまた自己紹介を始めるやいなや、

 「お嬢、それは!あぁ、そうでしたか。わかりましたぞ。我々はあなた方を待っていたのです。とりあえずお入りください。」

 どうやら私の達成の鍵がまた、この門を開ける鍵になってくれたようだった。


 中から門が開かれて、さっきのおばさんと同様、背の低いおじさんが出てきた。

 身なりはさすが豪邸の使用人といった感じで、パリッとした燕尾服を着ている。


 「よく来てくださいました。その達成の鍵。わかっておりますよ。待っておったのです。おぉ、そっちはとても背の高いお嬢ですな。強そうな子分を連れておられる。さ、入ってください。」


 子分って…。

 それにしても、この村の人たちは、自分の言いたいことを矢継ぎ早に口にするお国柄の様だ。


 「子分って、オラの事…だよね…」

 とストローが後ろでつぶやいたので、振り返ってちょっと困ったような顔で笑って見せた。


 門番のおじさんの案内で応接間と思わしき立派な部屋に通され、ソファーに座っているように言われたので待っていると、ドア越しに廊下の遠くから、先ほどのおじさんと若い男性の言い争いの声が聞こえてきた。

 何を揉めているのか、なんだか、若い男性の方がおじさんにさとされているような感じに聞こえた。


 「とにかく、お話を聞いて頂いて、助けていただくのです!」

 「嫌だって言っているだろう!」


 「まだ、そんなわがまま言っておいでですか!これが最後のチャンスかもしれないのですよ、ローニーさま!」

 「嫌だと言ったら嫌だ……!」

 「うだうだ言っていないで入られよ!」

 

 怒号と共に乱暴にドアが開き、雪崩れるように若い男性がおじさんに押され、バランスを崩しながら応接間に入ってきて倒れた。


 男性は、何事もなかったように立ち上がり、身なりを整えた。

 「これは失礼いたしました。」とおじさんも平静を取り戻して、若い男性の斜め後ろについた。



 「お嬢方。このお方が、このチャリオット領の領主。ローニー・チャリオット様であります。ちなみに、わたしくは執事長のセバスチャンと申します。」


 「は、初めまして…」と口々に挨拶をした。


 ローニーと紹介された男性は背は低いが、この村では背が高いほうなのだろうか。

 おじさん改めセバスチャンよりも少し背が高い。

 年齢は青年の範囲かなと。


 「この村に災いがあってからというもの、ローニー様は、ずっとこの事態にお心を痛められ、解決に向けて尽力されてまいったのです……」と少し芝居ががった口調でセバスチャンが話し始めたのを、ローニーが手を上げ、話の続きを止めた。


 「もう良い。私は臆病者の領主でよいのだ。獣は人を襲ったことがないのだから、放っておけばよいのだ。」


 「何をおっしゃっているのですか。あなたはこのチャリオットの土地を治める領主なのですぞ。しかも、チャリオット家は由緒正しき武家。敵と戦わずして領土を守れるとお思いですか?」


 「私は戦いは嫌いだといつも言っておるであろう。こんな平和な世の中、武家であったとしても戦って土地を守るなんて世ではないのだ。」


 「あぁ、嘆かわしい。今のお言葉を先代のお父様やお母様がお聞きになったら、どれだけ悲しまれることか……」


 どこか芝居ががった二人の会話をあっけにとられて見ていたら、ローニーが気が付いてくれたようで、私のそばへ来た。


 「初めまして。改めて、私がこの土地の領主。ローニー・チャリオットです。」

 と、軽く曲げた右腕を胸の前に添え、左足を少し後ろにそらしつつ頭を少し下げた。貴族風のあいさつなのだろうか。


 こんな身分の人と接したことなんてないので一気に緊張が高ぶって、オドオドしてしまう。

 ス、スカートでもつまみ上げて会釈っぽい事をするべきなんだろうか……?と、ソワソワしていると、構わずローニーが話の続きをしてきた。


 「あなたが、達成の鍵の持ち主なのですね。」

 「はい。……そのようです。」


 「お名前は?」


 「メイシア・フリーといいます。あのぉ……で、こちらが一緒に旅をしているお友達のストロー・プリセズと、ウッジ・エンプレイスと、チャルカ・ストレングスです。」


 「では、メイシア嬢、ストロー嬢、ウッジ嬢、チャルカ嬢、今晩はこちらでゆっくりと旅の疲れをとって明日出発されるがよい。食事と部屋を用意させるとしよう。後の事は頼んだぞ、セバス。」


 そういうと、ローニーはセンターベンツの入った立派なジャケットをひるがえして部屋の外に出て行った。

 セバスチャンは、頭を下げてそれを見送り、ローニーが出ていくと、顔を上げて私たちを見た……目が潤んで真っ赤だった。




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