一話目
そこそこの人生だった。
俺の人生を一言で表すならそう言える。
勉強もスポーツも人並み以上になんでもできた。顔も悪くはなかった。身長もある程度高かった。小さい頃は自分が特別な人間なのではないかと思った時期もあったが、年齢を重ねるうちにどの分野にも上には上がいると感じはじめた。そしていつだったか、俺は努力することをやめ、打算的に生きるようになっていた。それでもお金に困らない暮らしができたのだから「そこそこ」とはまさしく俺の人生だ。
そんな俺だが、つい先程死んだ。
なんてことはない、ただの交通事故だ。仕事の帰り道、いつものように駅前の喫煙所により煙草を吸っていると、壁をぶち破ってトラックが突っ込んできたのだ。トラックと目があった瞬間に悟った。
こりゃ助かんねぇわーーー
こうして、俺は人生に幕を閉じた。
気がつくと、俺は真っ白な空間に立っていた。
最初はぼーっとしていた意識が周囲を見渡すうちに徐々に覚醒していった。
「ここ、どこだ?」
何もなく、見渡す限りすべてが白。これが俗に言う死後の空間なのだろうか。
「そのとおりだよ。君は死んだんだ」
突然、背後から声をかけられる。振り向くとそこには
中性的な顔をした美女が立っていた。
さらりとした金髪に、アメジストのように濃い紫をした瞳。純白の着物に身を包み、見るものを圧倒する神々しいオーラを感じる。というか物理的に光っていた。
「……とりあえず、どちら様ですか?」
一応、聞いてみるものの本能的に理解していた。
目の前に立つ人物は、間違いなく人間ではない。それに普通の人間は発光しない。
これは、まさか神様とか言うパターンじゃないだろうか。
「そうそうそのパターンだよ。君たちで言うところの神様さ!」
大当たり。神様だった。さて、ここで疑問なのは神様がなぜ目の前にいるのだろうか。
「それは、君を異世界へ転生させるためだよ?」
うわ、こいつ頭の中よんでやがる。あ、こいつって言っちゃったよ。すいませんなんでもするんで許してください。
「はぁ、それくらいじゃ怒らないから大丈夫。というか、転生の方にもっと興味を持って欲しいな」
「すみません、なんか頭が追いついて無くて」
「ハッハッハ、まあそうだよね」
神は笑いながらはそういうと、胸の前で両掌を合わせる。すると、足元に魔法陣が浮かび上がりそこからは上に丸い穴が空いた箱が現れた。
「始まりました!転生抽選ターイム!!!!」
神は右手にマイクを持つと高らかに宣言した。
「て、転生抽選タイム?てかいつの間にマイクを出したんだ…」
「今から、君にはこの箱の中に入っているクジを引いてもらいます。そして、そこに書かれたところに、転生してもらいます!!!」
頭が追いついてないのに、さらに畳み掛けてきやがった。
「あの、いくつか質問があるんですがよろしいでしょうか?」
「いいよ?でも時間がないから3つまでね?」
「え、たった3つですか?」
「そうそう。あんまりこの空間にいすぎると君の魂が壊れちゃうからさ」
「そう言うことはもっと早く言ってくださいよ!!!!」
「まあそう言わずに、ほらほら考えないと時間なくなっちゃうよ?」
無神論者で本当に良かった。こいつに祈る時間は確実に無駄だ。
「頭の中読めることわすれてない?」
神様最高!超絶美人で優しそうで本当に素晴らしい方だ!!
「はあ、調子いいんだから。それで質問は?」
「じゃあ一つ目はなんで俺を転生させるのか選ばれたなぜか。二つ目は俺が死んだ後、現世ではどうなったのか。そして三つ目は転生するとして何かこう、特典とかありますか?」
「まず一つ目の質問についてだけどごめんね、今は答えられないや。こちら側の事情もあってね。君が転生した後言える時が来たらお告げをするから待ってて欲しい。二つ目だけど、君を轢き殺したトラックの運転手は逮捕された。そして君の葬式を終わり家族と親族によって立派なお墓が立てられておしまい。そして3つ目だけど、身分とか才能含めてクジ引き一発勝負さ!ただ、唯一の特典として言語の加護をあげる」
自分のお墓とか聞くと、改めて自分は死んだのだなと感じる。しかも両親は健在。親より先に死ぬなんてかなり親不孝ものだ。ただ結婚していなかったことだけは唯一よかったと思う。
「とりあえず時間も迫っているしクジを引いて頂戴!」
神はそういうと俺の前に箱を差し出した。
この抽選が第二の人生の全てを決めるのだと思うと、
かなり緊張する。しかし、引かなければ始まらない。
俺は穴の中に手を突っ込むと折り畳まれた無数の紙切れの中から一枚取り出した。
「ほいほい貸して頂戴」
神は取り出した紙切れを俺から奪い取ると開いて中を確認し始めた。
「ふむふむ。かなーりいいくじ運を持ってるね!相当あたりの部類だと思うよ!」
「本当ですか?それはよかったです。ちなみになんのーーー「転生開始っ!!!!」」
その瞬間足元に穴が開き、俺は下へと吸い込まれていった。
「まだ話している途中だろぉぉぉがぁぁぁぁ!!」
こうして俺は第二の人生を始めるのだった。
穴が塞がると神はつぶやいた。
「今度こそ、成功してくれるといいな」
そうして姿を消すのだった。
初投稿になります。