12.8 お詫びに私のベッドですんすんしていいよ
「日向さん、後ろ!」
「後ろはいいの! 熊の攻撃に集中して!」
両方を見る余裕はない。いくら日向さんについていくだけ、とはいえさすがに攻撃を直接避けるのは自分で判断して行動するしかない。
熊の左手が斜めにふりおろされるのを見て右に避ける。日向さんのような華麗な動きではないが、どうにか無事だ。
「すぐダッシュ!」
日向さんに目を移すと、もう真後ろに狐の生き残りが来ていた。これはもう撃つしかない。すぐに正確に狐に弾をあててすぐに銃をしまい、熊の股を抜けなければならない。今の俺にできるか。だが、やるしかない。
「池辻くん? 走って!」
狐が日向さんに飛びかかるようにジャンプする。その最高到達点から下がり始めるところを撃つ。あたれ!
「撃っちゃだめ!」
続けて3発撃った銃弾はほぼ狙った位置に飛んでいく。これなら狐は仕留められる。すぐに銃をしまって熊の股下へダッシュをかけよう。
――と、したところで狐が大爆発を起こした。見覚えのある、しんじゃった♡の表記と首がぽんぽん飛ぶお嬢さんのミニアニメーション。
「あれ、死んだ。なんで?」
「トラップの狐撃っちゃったんだよ……余計なことしちゃだめだよって言ったでしょ!」
まじか。撃ちもらしたんじゃなくて、わざと残してたんだ。
「ごめん」
「あとちょっとだったのに」
「あ、でもさ」
「なに」
「だったら距離があるときに、そいつ最初に倒せば群れごと一網打尽じゃない?」
「……う」
「で、そっちから迂回すれば熊も放置できたんじゃない?」
「そうかも。先に言ってよ」
「無理。俺このゲームはじめてだし。分かんない」
「じゃあ言われたとおり余計なことしないでよ」
「でも日向さんのすぐ後ろまで狐きてたんだよ!」
「あそこはタイミングシビアだからいちかばちかなの! しょうがないの!」
俺と日向さんがきーきーしてる横で小月さんがなだめる。
「あー、これこれ。そこの二人」
「ああ、千穂いたんだっけ」
ひどいな、日向さん。
「喧嘩はだめだよ。仲良く遊ぼう」
もうゲームの選択が根本的におかしいんだよな。
「そうだ、千穂がいたんだった……そうか。使えるかも」
「ごめん、俺もつい小月さんのこと忘れてゲームに熱中してた」
「池辻くん!? 私も一緒にやってるのに!?」
ひめっちに会う前に死んじゃったからね。これはしょうがない。
「ねえ池辻くん。私が悪かった。ごめんね」
急にしおらしくなる日向さん。
「お詫びに私のベッドですんすんしていいよ」
「なんで俺、そんな変態扱いされてるの」
しかも脈絡が全くない。
「昨日、千穂のにおい一生懸命嗅いでたんでしょ」
「……なんで知ってんの。か、嗅がないよ」




