12.6 こっちがいじめられてる側
日向さんが俺と小月さんに指示する。
「まず千穂。ひめっち役やって」
「助けられる側?」
「そう。私が助けに行くまで待ってて」
「うん。奈美ちゃんが着いたらどうするの」
「じーっとしてればいいよ」
「それで?」
「それだけ」
「それならできそう!」
じーっとしているだけって。NPCのままと同じじゃないかな。
「日向さん、それなんか意味あるの」
「ひめっちにプレイヤーが割り当てられていると、救出モーションが50%短縮されるの」
「すごいの?」
「微妙。0.2秒ぐらい縮まっておしまい」
「だめじゃん」
「でもね、プレイヤー数にカウントされないんだよ。ひめっち役の人はNPCと同じ」
「?」
「私たちは3人チームだけど、千穂が外れるからマッチングは2人チーム扱いになるの」
相手が3人より2人のほうが勝ちやすいってことか。そりゃそうだな。
「分かったよ、奈美ちゃん! がんばるね」
小月さんは張り切ってるけど、これ事実上の戦力外通告じゃないかな……。
「池辻くんなんか文句ある?」
俺の微妙な表情に不満そうな日向さん。
「ないよ。でも役に立たないのは俺も同じだけど。どうすればいい?」
「索敵しながら私の後ろくっついてきて。ただついてくるだけ」
「索敵ってどうするの」
「右十字の左ボタン。押しっぱなしで私についてきて」
「分かった。とりあえずやってみる」
再度ロビー画面でマッチング開始。
対戦相手が決まっていく中で日向さんが小さく「あ」と声を出す。
「来たわね」
今加わった「にししょうしまりすだん」というチーム名を見て日向さんがつぶやく。
「ここには絶対勝ちたいの」
「にししょうしまりすだん?」
「そう」
ポップな吹き出しで「こんにちは、よろしくおねがいします」と挨拶している。
「私はね、このゲームで勝てていない相手はいなかったの。千穂が足ひっぱった時でも2人相手になんとかしてたんだ。そのなかで唯一、一勝もできなかったのがこいつらよ」
日向さんの目がちょっと怖い。
「前は千穂といっしょの時。でも今日は負けない」
ロビーの画面ではにししょうしまりすだんが吹き出しを重ねている。「いちじかんいます。さいごとちゅうでいなくなったらごめんなさい」だそうな。
「日向さん、随分幼いかんじに見えるけど」
「小学生よ」
「……なんで知ってるの」
「あたりをつけて、SNSで確定」
「……いじめちゃだめだよ」
「なにもしていないって。相手の情報は少しでも手に入れておかないとってだけ」
高校生がむきになって小学生に勝とうとか絵的にちょっとどうなんだろう。
「むしろこっちがいじめられてる側なんだから。集中してね」
ロビーが閉じてゲームスタート。




