12.1 こういう恰好好き?
二人の最寄り、田浪駅で待ち合わせて学校へ。
「池辻くん家すごいね」
「すごいって?」
「なんか家族の距離が近い」
「そうかな」
「うちも人のこと言えないけど。でも池辻くん家ほどじゃないかも」
そんなことはないと思うけど。直接見られちゃった今朝のことは例外として、小月さんのことわざわざ言う気はなかったし。でもまあわざわざ隠す気もなかったけどさ。
「今日の日向さん家ってのは前に作ってもらってたドールハウスの話?」
「できてたら見たいけど、そうじゃなくて。昨日ちょっとまた荒ぶってたんだよね、奈美ちゃん」
あれか。長文がいっぱい来る奴。
「それでまあ今日付き合うってことになっちゃって。池辻くんも一緒にってお願いなんだよ」
「いいよ、もちろん。なにするの?」
日向さんにはお世話になってるし。
……小月さんに変なこと吹き込んでないか様子みたいし。
「ゲームを一緒にやって欲しいんだって」
「そんなこと? どんなゲーム?」
「前に奈美ちゃんとやったんだけどよく分からなかったんだ」
「タイトルは?」
「『おたすけひめっち!』だよ。絵は可愛いよ」
聞いたことないけど、響きから察するにあまり過激なゲームではなさそうだ。ちらっと検索してみると、お子様向けっぽい可愛らしい絵柄のゲーム画面が表示される。
「内容は?」
「分かんない」
「ジャンルは?」
「分かんない。スタートしてすぐ死んで、復活してまたすぐ死んでの繰り返し。横で奈美ちゃんは機嫌悪くなるし。……私はあんまりやりたくない」
小月さんゲーム苦手なのか。
特に『千穂ちゃん』が取り乱すことなく無事に学校に着く。
休み時間に、日向さんが簡単なガイダンスをしてくれた。
参加者は魔物に捕らわれた「ひめっち」を助けだし、スタート地点である「みんなのむら」に連れ帰る。このタイムを参加グループ同士で競うそうだ。
「前に千穂と一緒にやったことはあるんだけどね。全然役に立たないのよ、この子」
「ひどいよ奈美ちゃん」
「絶対に負けるわけにはいかない相手がいるの。ふたりとも、気合い入れてね?」
ゆるそうなゲームとはいえやったことがない人間が役に立つのかどうかは分からないけど、とりあえず頑張ってみよう。
『千穂ちゃん』も落ち着いていたため、日中は特にトラブルもなく放課後小月さんと一緒に日向さん家へ。
出迎えてくれた日向さんは日中ふわふわさせている髪を強めにまとめてポニーテールにしている。普段は見せるために丁度良くまとめているのに、今はなんだか邪魔なものはひっこめとく、みたいな機能重視な雰囲気が漂う。Tシャツに短パンという恰好も身体の動かしやすさを追求しただけなんだろう。ゲームだから別になんだっていいはずだけど、気合いがにじみでている。
俺的により正しく描写するとだな。……髪がぎゅっとして頭部の肌色が増えて、ふにゅうがふにゅーうってなだらかにTシャツを曲げていて、にょびーんとしたあしがにょーん、って短パンから出てる。
何言ってるか分からないか。気にしなくていい。でもきっと分かってくれる人もいる。はず。
一瞬呆けていたら小月さんが怪訝な目で俺を横からみていた。日向さんはふっふーん、みたいな顔をして目を細めている。なんでこう俺がどこを見ていたかとかどう思ったかとかすぐばれるんだろう。
「池辻くん、こういう恰好好き?」
日向さんがからかうように聞いてくる。
「綺麗だって思っただけ」
「だってさ、千穂。だから大丈夫だって言ったでしょ」
なんで小月さん。
「うん。参考にする」
「なにを?」
「前に千穂が似たような恰好だったことがあったんでしょ」
楽しそうに説明を始める日向さんを小月さんが遮る。
「いいから! ほら、ゲームするんでしょ!」
3人で日向さんの部屋に移動して、準備を始める。




