11.3 そのうち玄関から
「なんで朝からここにいるのか、とかは?」
「それは確かに気になるのよね。いくら付き合いたてだからって高校生が朝から部屋で一緒なのは健全じゃないなぁ。まあでもそういう時期もあるでしょ」
「玄関からおはよう、って入ったわけじゃないんだよ。不思議じゃないの?」
「そりゃ朝からいかがわしいことするのに堂々とは入ってこないでしょ」
「なにもしてない! 現国の宿題やってただけ」
「……あんたねぇ。もう少しまともな言い訳はないの」
「本当だって」
「じゃあそれでいい。一応確認だけど、避妊は必ずして。あと、色ぼけして成績落としたりしたら許さないからね。千穂ちゃんもよ? いい?」
母の勢いに押されてこくこくとうなづく小月さん。
「ひ、避妊って!」
「ゴムつけてね、ってこと」
「つけないよ!」
「はぁ?」
「そんなことしたら小月さん窒息しちゃうじゃん」
「彼女にかぶせてどうするの。自分に使うのよ。頭大丈夫? 詳しくは分からないけど、彼女もずっと小さいままってわけじゃないんでしょ。それともなに? 使い方まで説明しないといけないの? さすがに引くんだけど」
なんでこんな話を母親としなければいけないんだ。小月さんは緊張と混乱で固まったままだ。漫画だったら口をvの時にして硬直したまま冷や汗を流している。
「持ってなかったら、お父さんの書斎のほら、焦げ茶のちっちゃい棚があるでしょ。あれの一番上に入ってる」
……普段誰が使ってるの。いらない。親のそんな情報いらない。
「じゃあもう行くから。あなたたちも学校遅れないようにね。あ、そうだ」
言い残して立ち去りかけたところで小月さんに話しかける母。
「千穂ちゃん、ID教えてもらえる?」
「はい。もちろん」
「よく分からないこともいっぱいあるけど、栄太にこんなに素敵な彼女ができたって思ったら他はどうでもよくなっちゃった。これからよろしくね、千穂ちゃん」
「こちらこそ」
交換が終わると、母はすぐに家を出た。
「はあ。緊張したよ。私、変じゃなかったかな」
「変じゃないよ。いつもどおり可愛かった」
「ありがと。でも油断したなー。せめてきちんと座ってればよかった。なんで私寝っ転がって……ああ、もうっ!」
「大丈夫だよ。全然気にしてなかったし」
むしろ他に気にするところがいっぱいあると思う。うちの母おかしい。
「そのうち玄関からご挨拶に来るね」
それは1/1の小月さんとおうちデートということでいいんだよな。
「楽しみだ」
「うん。そろそろ戻る時間?」
「いつも通りなら」
「ん。あと、今日放課後暇かな。二人で奈美ちゃんとこ行きたいんだけど」
「いいよ」
なにか用事があるの、と聞こうとしたところで小月さんが戻った。
いまさらだけど、うちの母がおかしかったのは俺に彼女が出来て少し浮かれてたんだろうか。このへんの心理はよく分からない。逆の反応される場合もありそうな気がするけど。
小月さんを見て気に入ったのかな。そうだな。それが一番しっくりくる。
もしくは本当に俺のことをロリコンだと誤解していたのか。仮にそうであったとしても、俺が人の道にもとる行動を取ることはないから信じてほしい。
仮にだぞ?




