10.8 事案っぽい扱い
「お客様。というかそこの変態」
相変わらず俺には冷たい店員さん。あさっての方向を向いたままお怒りだ。
「俺のことですか?」
「他に誰がいると」
「なんでしょう」
「なんでしょうじゃない、しまって!」
「何を?」
「……。 ち、ちん……い、言わなくても分かるでしょっ」
小月さん見ちゃったのか。そうなるとごまかしようがない。日向さんに続いて小月さんのことがばれてしまったか。
「驚くのは分かります。でもしょうがないんですよ。こうなるとしばらくはどうしようもなくって」
「いや、しまえばよくない?」
「それだと苦しいじゃないですか」
日向さんのおかげで多少小月さんの環境は改善したが、やはり外と同じようにはいかない。
「苦しい? ほとんど見てないけど、そこまで大層なものじゃなくない? とにかく出しちゃだめでしょ」
「新鮮な空気が必要なんです」
「息するわけじゃないでしょ。え? するの?」
「もちろんしますよ。しなかったら死んじゃいます」
「ごめん、それは知らなかった」
小月さんは息をする。なんでこんな当たり前のことを説明してるんだろう。いまいち状況が伝わってない気がする。お人形遊びでもしてると思われてるんだろうか。
お姉さんを見ると、顔を赤くして相変わらずそっぽを向いたままだ。
「えと、ひょっとして今の状況が伝わってなかったりしませんか」
「こういう性癖の人がいるって聞いたことはある」
「性癖? とにかくこっち来てよく見て下さい」
話が進まない。小月さんを手で軽く支えて立ち上がり、店員さんに近づく。
「……!」
「ほら、可愛いでしょ。これ、作り物とかじゃないんですよ。よく見て下さい」
「そ、そりゃ本物だろうけど! 絶対見ない!」
全然こっちみてくれない。
「見るのが嫌なら触ってみて下さい」
「ひぃっ!」
その場でへたりこんでしまう店員さん。
ミニサイズの女子高生を見るのは初めてなのかもしれないけど、さすがにこういう反応は小月さんが傷つくからやめて欲しい。
まあでも高さが丁度よくなったので、お姉さんの前に小月さんを近づける。ひょっとしたら目が悪くてよく見えなかっただけかもしれない。でもこれだけ近ければきっと大丈夫。
「池辻くん池辻くん」
「なに?」
「多分お姉さん、私だって気付いてないんじゃないかな」
お姉さんは顔を手で覆ってしまってぷるぷるしている。
「ああ。『千穂ちゃん』だと思ってるのか」
「……ま、また急に名前」
まずいな。事案っぽい扱いになっちゃってるのか、俺。女の子に『千穂ちゃん』を見せて喜んじゃう、みたいな。
「じゃあなおさら誤解を解かないと。俺から言ってもだめかも。小月さんお願い」
「はーい。えーと」




