10.7 女子高生はみんな自分のおっぱいに名前つけてるから
ふ。何を言ってるんだか。興味がないとは言わないが、でかけりゃいいとかいうそのへんの男と一緒にしないで頂きたい。
「見てない」
「見てる」
あれ。
「そうだっけ?」
「うん」
「それはほら、小月さんの胸だからだよ。でかけりゃなんでもいいとか、そういうことじゃないんだ」
「……私今、大きさのことなんて言ってないけど」
なんか流れがおかしい。
「だめ?」
「だめじゃないけどさ。私じゃなくて胸が好きなのかなって」
「なにそれ。だってその胸、小月さんのじゃん」
「そうだけど」
「それに俺、もともと胸小さい子のほうが好きだし」
「え」
「さっきの店員さんぐらいぺたっとしてたほうが好き」
「……そうなんだ」
「日向さんぐらいならまあ。それ以上だとちょっと大きすぎるかな」
「……ふーん」
「とにかく女の子の胸は慎ましい方が好きなんだ。巨乳とか全く興味ない。信じて」
「信じた。じゃあ私死んでくる」
「なんで! 誤解解けたんでしょ!?」
「ごめんね、池辻くんの好みと違って。私の胸さ、池辻くんのお気に入りポイントなのかと勝手に勘違いしてたよ」
「え? お気に入りだけど?」
「はよもげろ、とか思ってただけだったんだね」
「もげるのは痛そうだから却下」
「でも縮んで欲しいんだよね」
「……」
「ほら! 何、今の間!」
「いやまあ。最初は小月さんが好きだから多少は目をつむろうか、ってかんじだったんだけどさ」
「やっぱり。……というかなにげにひどいな、池辻くん。二人ともいい子なのに」
「……二人とも?」
「……今のなし」
「小月さん、もしかして自分のおっぱいに名前つけてる?」
「だって呼ぶとき困るでしょ! ……じゃなくて名前なんてつけてないから!」
「名前教えて」
「ないしょ」
「つけてるんだ」
「……違うからね? 私がおかしいんじゃないの。女子高生はみんな自分のおっぱいに名前つけてるから。嘘だと思ったら他の子に聞いてみたらいいよ」
聞けないよそんなこと。口きいてくれる人いなくなっちゃう。ただでさえ俺、小月さんと日向さんしか女の子と接点ないのに。ああでも、日向さんなら聞けるかも。
「じゃあ日向さんに聞いてみる」
「奈美ちゃんはやめて」
「なんで」
「前に言ったら爆笑された」
大丈夫だ、小月さん。気持ちはよく分かる。俺もさ、自分のに名前付けるの普通だと思ってたんだけどさ。中には付けない人もいるみたいなんだよな。
「話戻そうか」
「なんだっけ」
「小月さんの胸はでかいけど俺は好きだって話」
「いいよもう。これ以上この子達ををいじめるのはやめて」
「今は小月さんのせいで逆に大きい方が好きになったんだって。むしろもっと大きくてもいい」
「……嘘くさい」
「ほんとだよ。布越しに眺めているだけでも小月さんを縮小できる自信がある」
「意味が分からないよ。……でも、取り替えられるものでもないし。池辻くんが気に入ってくれてるんならまあいっか。えへへ」
「今の小月さんのままがいいんだよ」
「ありがと。でもあんまりじろじろ見るのはだめだよ?」
「そんな見てた?」
「うん」
「たまにだよね?」
「うーん。ちょくちょくかな? ……あ」
「あれ、また見てた?」
「池辻くんは見てないかな」
「今度から気をつけるって」
「そうじゃなくて。入り口」
小月さんが指す先、試着室の出入り口のドア。
さきほどの、美人なうえに胸が慎ましい店員さんが顔をそむけて立っていた。




