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第6章一時帰省

久々に更新となります。

学生時代の乱文の文章を組み立てなおしながら書いております。

ワーグナー准将は自分の執務室から滑走路を眺めていた。

クラスノグラード空軍基地には2本の滑走路があり3000メートル級滑走路のA滑走路、並行して走る2000メートル級滑走路で構成されていた。

昨日基地へとやってきたアドルリアの反政府組織「アッラーの栄光」の2機のミグMig-23は搭乗員こそ無事だが、着陸に失敗し大破していた。

無理もない、初めての機体で、燃料切れ寸前、おまけに長距離飛行の疲労が溜まった状況で、夕暮れの基地に機体を降ろしたことがおかしいのだ。まさに奇跡。

「神は存在するのか?いや信じるという強い力が任務遂行を可能にしたのかな?」

ブツブツと呟きながら考えを巡らせていたが、ノックの音が現実へと引き戻した。

「戸田大尉、入ります。」

「入れ。」

キタラ皇国軍最年少の大尉が入ってくる。幼いころから彼を知っている准将はついつい孫のように接してしまう。

「休暇を取りなさい。」

「は?」

唐突な命令に若い大尉は首をかしげる。

「失礼ですが、戦争が始まったばかりなのに休暇をとれとは?」

「昨日の亡命機の話は聞いているだろう?」

戸田は先ほど食堂でライザに聞いた話を思い出した。

「機体は大破しましたが、パイロットは無事だったと」

「そのとおり、結果滑走路を修理せねばならなくなった。」

そう、大破した2機は航空基地の生命線たる滑走路を傷つけてしまっていた。

着陸時に脚を折ってしまった機体は滑走路のアスファルトを削り、破片をまき散らしながら転がっていった。

助け出されたシマード、サーラの両名は軍のヘリで直ぐに首都の病院に運ばれており命に別状はない。

「戦争はこれから拡大する。間違いなく。次休暇はいつ取れるかわからないのだよ。休みなさい。」

「・・・了解しました。」

敬礼を返すと、戸田は基地指令官室を後にした。


クラスノグラード基地搭乗員待機所

唐突な休暇に搭乗員は沸き立っていた。

「何?休暇!」

「ちょうど年末だしな、年末年始休みなんて何年ぶりだろ?」

「久々の里帰りかぁ、母ちゃんどんな顔するかなぁ・・・」

そんな喧騒から離れてライザとリンファは窓の外を眺めていた。

彼女たちには帰る家がないのだから、休暇をどう過ごすかを考えていた。

丁度司令官室を辞してきた戸田が彼女たちに声をかけた。

「2人ともうちに来ないか?」

「え・・・でも・・・」

丁度集まってきたクリムゾンエッジ隊の面々が声をかける。

「大丈夫、大丈夫。大尉のところなら何人か増えたって問題ありませんよ。」

「そうそう。」

そう言って笑う。

ライザとリンファは顔を見合わせたが、頷き合うと言った。

「じゃあ、お言葉に甘えて・・」

「じゃあ、俺も行こう!」

三番機パイロットの八木少尉が言った。

「俺も!」

「俺も行きますよ!」

結局クリムゾンエッジ隊全員が戸田大尉の実家に泊まることになった。

「お前らな・・・」

「抜け駆けはさせませんぜ大尉!」

「お前らなぁ・・・」

戸田があきれた顔をすると、隊員が笑った。

つられてライザとリンファも笑った。

キタラにきて初めての笑いだった。


12月30日クラスノグラード基地

ライザは私物を入れたボストンバックを肩から掛けてリンファの車いすを押していた。

封鎖された滑走路を横目に見ながら駐機場を横切っていく。

「滑走路が使用不能なのにG格納庫前集合なんて・・・、それに基地の端じゃない。何をするつもりなのかしら?」

「私が知るわけないでしょ?」


G格納庫前

クリムゾンエッジ隊員が帰省に向けて思い思いの格好で集まっていた。

戸田が二人の姿を見て声をかける。

「おう、二人とも来たか。」

「大尉こんなところに集まって何をするんですか?列車か車で帰るんじゃないんですか?」

「あぁ、飛行機だよ。俺たちの私物の飛行機、こいつさ。」

そう言って戸田が合図すると隊員が格納庫の扉を開いた。

数人で押して人力で左右に開いていく、格納庫もだいぶ作りが古い。

開いた扉の中には二次大戦時の古色蒼然たる機体が並んでいた。

「へ~え・・・」

「この国の貴族は大抵自分用の機体を持っているよ。俺たちも親衛隊に嫌気がさして飛び出してきた大尉についてきたからね。一応俺らも貴族ってわけ。」

と横から八木少尉が説明した。

整備員に手伝ってもらって各々の機体を引っ張り出す。

キタラ皇国は第二次大戦中は中立国ではあったが、兵器を枢軸国側から購入していたため、必然的にそちら側の機体ばかりであった。

内訳は


戸田大尉 フォッケウルフTa152H-1

浜田中尉 中島飛行機四式戦疾風改廃棄タービン装備機

八木少尉 メッサーシュミットBf110G-4

如月少尉 三菱四式重爆飛竜2型


もちろん現在のクリムゾンエッジ隊は戸田大尉達親衛隊離脱組だけではなく一般庶民隊員もいるため彼らは如月少尉の四式重爆に乗り込むことになった。

「あの、私たちは何に乗れば?」

「四式重爆に乗ってくれ、リンファ少尉は無線席、ブリュンヒルデ少尉は尾部銃座を頼む。」

「銃座?武装してるんですか?」

ライザが訊ねながら機体を見ると、尾部の20ミリ連装機関砲にベルトリンクを装着しているところだった。

「この国にもゲリラが出るんだよ。」

「そうなんですか。」

「ところで滑走路がダメなのにどこから離陸するんですか?」

「裏の野原だよ、大戦中の野戦飛行場みたいなもんだよ。」

2人は他の者と同じように爆弾倉に私物のバックを放り込むと重爆に乗り込んだ。

整備員がエンジン始動用のエナーシャハンドルを持って各機体に駆け寄った。

「エナーシャ回せ!」

2人一組でハンドルを回し、始動に向けて甲高い音が周囲に鳴り響く。

「コンタクト!」

よく整備されたエンジンは一発でかかり、各機は格納庫裏手の草原に移動した。

そしてエンジンを全開にすると1機また1機と離陸していった。


キタラ皇国グルマルト高地

川で釣りをのんびりとしている釣り人がいた。

目深に被った麦わら帽子をふと音がする方向を向いた。

おもむろにクーラーボックスを開けると中から魚ではなく無線機を取り出した。

「貴族がお帰りだ、レシプロ爆撃機1機、双発レシプロ戦闘機1機だ。カモだ、やれ。」

「了解」


クリムゾンエッジ隊

「?」

戸田は誰かに見られている気がしてコックピットから周囲を見回した。

高度は5000メートル、左斜め後ろの僚機の位置に浜田中尉の四式戦。

雲はまぁまぁ多く、下方3000メートルを同じように編隊を組んで飛ぶ四式重爆とBF110が雲に見え隠れしていた。

特に目立つものはなく、異変はないように思えた。

「大尉どうしました?」

周囲を気にしている戸田に浜田中尉から無線が入った。

「何かが気になるんだ・・」

その時下方を飛行していた2機が編隊を崩した。同時に無線が入る。

「後方敵機!」

四式重爆とBf110の後方へ火線が伸びる。防御銃座が発砲を開始したのだ。

「浜田行くぞ!」

戸田は機体を軽くバンクさせると急降下に入る。浜田中尉の四式戦も遅れず付いてくる。

降下しながら敵機を識別する。

アルゼンチン製のIA58プカラが2機、ゲリラ制圧用のCOIN機がゲリラによって運用されている。

「とんだブラックジョークだなこれは。」

戸田はBf110を狙っているプカラへ一気に距離を詰め、操縦桿の機銃スイッチを押し込んだ。

プロペラエンジン軸に装備された30ミリモーターカノンと主翼付け根両側に装備された20ミリ機関砲が火を噴き、プカラの主翼を叩き折った。

「1機撃墜!」

「しまった!」

同時に無線に入った浜田中尉の声に振り返ると、四式戦は重爆を狙っているプカラを追い越してしまい、上昇に入っていくところだった。

「あのバカ!」

戸田がそちらに向かおうとすると、今助けた八木少尉のBf110がスルスルとプカラの後方についた。

30ミリ機関砲2門、20ミリ機関砲2門の強力な火線がプカラのコックピットをズタズタにした。

Bf110と戻ってきた四式戦と編隊を組んだ戸田のTa152は周囲を確認するために上昇に移った。

「終わりか?」

「何言ってるの戻って!」

重爆のリンファから無線が入る。

「なんだと?」

よく見ると隠れていたのか1機の機体が四式重爆の背後に張り付こうとしていた。

「OV-1モホーク!?クソ!」

慌てて戻ろうとするが、もう敵機は射撃位置につこうとしている。

「間に合わない!」

その時、森の中から火の塊が飛び出すとモホークに命中し機体をバラバラにした。

「今のは?」

「なんだ?何が起こった?」

その時無線に新しい声が入った。

「よお貴族さん無事か?」

「誰だ?どこにいる?」

「おたくらから見て、3時方向下方だ。」

言われた方向をよく見ると何かが回転しているのが見えた。

それはメインローターまでしっかり迷彩を施したミルMi-28ハヴォックだった。

どうやらモホークへ向けて対戦車ミサイルを叩きこんだらしい。

「助かった恩にきる。俺は・・・」

「いや、気にせんでくれこっちも仕事だ。」

「わかった。感謝する。」

そして両者は別れた。


自宅勤務のため時間が取れたので、改正しながら投稿しております。

またよろしくお願いいたします。

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