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第3章首都より来る者

やっとこさ3章です。

遅遅として更新が進みませんが、今後もよろしくお願いします。

12月25日キタラ皇国クラスのグラード空軍基地士官居住区

(今日の哨戒飛行は午後からだったな……)

などと思いながら、戸田は自室で書類の山をやっつけていた。すると、ふと黄色の緊急のスケジュール紙が目に入った。どうやら、配達したものが書類の一番下に紛れ込ませてしまったようだった。

「本日、1500時に重要な訪問者あり、総員管制塔の前に整列し、失礼の無いようにすること。」

戸田は顔をしかめた。彼の哨戒飛行担当時間が、1400〜1600までだったからだ。他の飛行隊に任せようかと思ったが、自分の基地のことで他の基地に負担をかけるのは失礼だと思い、予定通り飛ぶことにした。戸田は自分の代理を務めてもらうために、副隊長の浜田中尉の部屋へと出かけて行った。


同日1330クラスノグラード空軍基地E格納庫前

ライザはピカピカに磨き上げられた乗機を見た。昨日機関砲とミサイルパイロンを自分でチェックし、整備班には昨日からエンジンと電子機器のチェックをやってもらった。

「少尉、出撃準備完了です。」

「ありがとう。」

今、Mig−23Uフリッパーはピカピカに磨かれ、R−3Rアドバンスド・アトール赤外線短距離ミサイルが搭載され、燃料が満タンに入れられていた。と、そこに戸田大尉がやってきた。

「お、よく1日で、これだけ仕上げたもんだ。」

「整備班のおかげですよ。」

戸田大尉はひとしきりフリッパーを眺めると、ライザに向き直った。

「少し早いが、もう出るか?」

「少しでも長く、空を飛んでいたいです。」

「そうか、では今から飛ぶか…。」

と、そこで、戸田は昨日から気になっていたことを尋ねた。

「ところで、お前の連れはどこに行った?昨日から姿を見ていないが…」

「リンファですか?彼女は、私のフランカーが届くまでに、立派なレーダー操作員になるって言って、昨日からフランカー系のレーダー資料を持って本の虫になってます。」

「ほう……、お前と同じで行動が先のタイプだと思っていたが…。」

「彼女は、下準備をしっかりやってから行動するタイプなんです。」

その時、整備班長がフリッパーの最終チェックを終えてやってきた。

「准尉、いつでも飛ばせるぞ。大尉、お偉いさんが来るらしいが、いいのか?飛びにいって?」

「うちの基地の都合で、他の基地に迷惑をかけるわけにもいかんでしょう。」

「そりゃそうだが…」

「それに、俺たちはお偉いさんを守るために飛んでるわけじゃない。祖国を守るために飛んでるんだ。だから、飛ぶのさ。」

「そうか、気ぃつけて行って来いよ」

「おう」

そして、ライザの方を向くと言った。

「出撃する。離陸したら俺についてこい!」

「はい!」

二人は、乗機に向けて駆けて行った。数分後、彼らの機体は空にあった。



同日15:00クラスノグラード空軍基地

その編隊は首都からやってきた。親鳥の周りを雛鳥が飛ぶように、巨大な輸送機の周りを戦闘機が飛んでいた。全ての航空機が白く塗られ、赤、金、黒のラインが入っていた。そして、垂直尾翼にはこの国を統べるレグナロン家の紋章が描かれていた。編隊の中心であるアントノフAn−124ルスラン大型輸送機は180tもの重さが嘘の様に軽く、優雅に着陸した。輸送機が着陸し、タキシングを始めるのを見届けてから護衛のミコヤン・グレビッチMig−29SMTスーパーファルクラムが降りてきた。

輸送機が管制塔の前に駐機するとそこには、基地司令を始めとするほぼ全員が整列して待っていた。各航空隊の1番機がその隊の格納庫前に引き出されていた。輸送機のタラップが降りて、胴体部の扉が開くと、オリーブ色の飛行服を着、軍標準の防水キャンバスで出来たバック2つを持った銀髪の少女が降りてきた。

「ようこそ、おいでくださいました。シルフィ・レグナロン第3皇女殿下。」

ワーグナー准将に挨拶された少女は、静かにうなずくと、列線に並んだ機体と兵員を見、それから質問をした。

「なぜ、あそこの隊だけ1番機ではないんだ?」

「は、第106戦術戦闘機隊ですな。只今の時間は、定時哨戒飛行の時間でして、そのためでございます。」

その時、シルフィの背後で声が上がった。

「我々の到着を無視して飛んでいる奴がいるだと!?皇女殿下に対して失礼であろう、どこのどいつだ!」

近衛飛行連隊のギルバート・ヘス特務少佐だった。が、シルフィはそれを遮った。

「よい」

「はっ、しかし……」

「聞こえなかったのか?私は『よい』と言ったのだ。祖国の為に飛んでいる者をどうして責めることができよう?」

「はっ、わかりました。」

彼女は肩に付いている階級章を指すと言った。

「私、シルフィ・レグナロンは少尉としてこの基地に配属された。以後、私は一介の少尉として行動するのでそのつもりで。私が皇女であることは忘れて、少尉として扱ってくれ。」

そう言うと、直立不動になり、ワーグナー准将に敬礼した。

「シルフィ・レグナロン上級少尉ただいま到着しました。」

ワーグナー准将は素早く事態を把握すると、答礼した。

「着任を歓迎する、所属部隊等は追って通達する。居住区に案内させよう、軍曹!」

「はっ!」

「上級少尉を居住区に案内したまえ。」

「了解しました。少尉こちらへ。」

軍曹は少尉のバックを拾うと居住区へと案内していった。近衛飛行連隊の兵士達はその様子を見送っていたが、二人の姿が視界から消えると、いそいそと自分の機体に乗り込み帰って行った。

一機だけ残された輸送機は、後部ランプを降ろし、積み荷を降ろし始めた。その中にビニールに包まれた航空機らしきものを認めてワーグナー准将は作業員の一人に声をかけた。

「おい、若いの。」

「はっ!何でありましょう?」

「こいつは、なんだ?」

「皇女殿下の御乗機でありますが・・?」

「機種は?」

「自分は戦闘機としか聞いておりませんが・・・」

その時准将の目が、小さなラベルをとらえた。

〈ミコヤン・グレビッチ設計局Mig-1.44プロトタイプF〉

「試作機を引っ張り出してきたか。少しでも死なないようにということだな・・・」

「父上をはじめ、大臣も皆反対していましたし、姉上達が軍に入った時、三女の私には、女性らしくどこかの王子に輿入れして欲しかったのでしょう。」

准将が隣を見ると、荷物を運び終わったシルフィが立っていた。

「第一皇女殿下は、空軍中将だったな。第二王女殿下は・・・はて?」

「海軍のミサイル巡洋艦の艦長を務めております。」

「ほう、艦長か・・・・。君のお姉さん達は凄いな。」

「はい、誇りに思います。」

その時戦闘機の爆音が遠くから聞こえてきた。



「大尉、大型輸送機が1機駐機しています。」

「なに?まだお偉方がいるのか?小言を聞くのはごめんだが・・・・。ライザ准尉、燃料はあとどれくらいか?」

「あと、5,6分飛んでいればいいほうかと・・。」

「しかたがない、降りるしかなさそうだな。」

そう言うと戸田は編隊内通信から基地の周波数へと無線を変えた。

「クリムゾンエッジ哨戒飛行隊、着陸を許可を求む、なお二番機はビンゴ。」

「こちらクラスノグラード管制、クリムゾンエッジ着陸を許可する。B滑走路を使用せよ。」

「了解」

スーパーフランカーとフリッパーが編隊を組んだまま機首をB滑走路へのアプローチラインに乗せた。

「スロットル60パーセント」

「スピードブレーキON」

「フラップダウン、最大」

「ギアダウン」

重力に引かれた機体が、後輪それから前輪とアスファルト路面に接地する。

「スロットルアイドル、ギアブレーキMAX、ドラッグシュート展開」

滑走路から誘導路に入ったところで、二機はドラッグシュートを切り離した。


管制塔前から二機の着陸を見ていたシルフィは言った。

「二番機の降下率は大きすぎた、一番機の方がいい腕だ。」

「一番機は戸田大尉だからな。あの男に勝てる奴はそうそうおるまい。」

「戸田大尉?もしかして戸田純一大尉ですか?」

「そうだが?」

その答えを聞く前にシルフィは格納庫へ向けて走り出していた。


戸田は格納庫前まで来てようやく輸送機に付いているマークに気がついた。

「なってこった。皇族専用機じゃないか。皇族・・・・・・まさかな。」

そう呟きながら格納庫前に機体を止めた。ライザのフリッパーも左隣に止まった。ブレーキをロックし、エンジンを切ると、キャノピーを開ける。すぐにラダーをかけて整備班長が昇ってきて、シートベルトを外すのを手伝ってくれる。

「ご苦労様!大・・・・・」

整備班長の動きが止まり目が大きく見開かれる。

「?」

整備班長の視線の先を辿ると、機体の反対側にラダーをかけてコックピットを覗き込んでいる少女がいた。

「!!?」

戸田が何か言う前に、シルフィが戸田に抱きついた。

「純一お兄様、お久しぶりです!」

「わぁ、シルフィ!離れろ、潰れる、狭い!」

「ごめんなさい、でも純一お兄様に会えてうれしくて。」

「とにかく、ここから降ろしてくれ。」

「はい、お兄様。」

シルフィが降り、ようやくシートベルトのハーネスを外すと、整備班長がかけてくれたラダーから降りた。ラダーの下にはライザがヘルメットを小脇に抱えて待っていた。戸田はとっさに(まずい)と思ったが、その時はすでに遅かった。機体を回り込んできたシルフィがライザに突っかかった。

「あなた、だれ?」

突然の質問に目をパチクリさせながら

「第106戦闘機隊所属、ライザ・ブリュンヒルデ准尉ですが。」

と答えた。シルフィは鼻を鳴らすと言い放った。

「お兄様の部下ならいいけど、個人的に私のお兄様に近寄らないで、いいわね?」

ライザの眉がピクッと動いたが、すぐ無表情になった。

「わかりました、上級少尉殿。」

それを聞いてシルフィはにっこり笑うと、戸田の方に向き直った。

「さぁ、行きましょう。お兄様。」

だが、戸田は首を振った。

「すまんなシルフィ、ちょっとコイツの調子が悪くてな。調整をするから、先に行っていてくれ。」

そう言いながら、戸田はスホーイの機首を叩いた。シルフィは残念そうな顔をした。

「では、のちほどお部屋の方に伺わせていただきますわ。」

そう言い残して、シルフィは兵舎の方へと歩いて行った。

姿が見えなくなってから、ライザが吐き捨てるように言った。

「な〜にが、『近寄らないでね』よ。大尉、あのタカビーな女は誰ですか?」

その質問に戸田は、逆に目を丸くしながら聞いた。

「焼いてくれるのはうれしいが・・・・、彼女を知らないのか?」

ライザは顔を真っ赤にして戸田を睨めつけた。

「『お兄様』と呼ばれるほど親しくありませんから。」

「そう怒るな、彼女の名はシルフィ・レグナロン。この国、つまりキタラ皇国の第3皇女だ。」

「なるほど、先ほどの態度はそれで理解できましたが・・・。しかし、第3皇女に兄と呼ばれる大尉は、ひょっとして皇族様ですか?」

「いや、俺は公爵だ。それで、小さいころから色んなところで顔を合わせる機会があっただけだ。ただの幼馴みってとこだな。」

「貴族だったんですか・・・てっきり平民出身かと・・。」

「まぁ、色々あってな。上流社会は俺には合わなかったんだよ。」

そう言って、戸田は遠くを見るように目を細めた。



ラ「こんにちわ〜ライザです。」


ト「ども戸田です。」


ラ「やっとこさ3章だけど、なんでこんなに遅いわけ?」


ト「何やら、作者は大学のサークルの新入生勧誘の準備で忙しいらしい。」


ラ「あぁ〜リアル世界が充実してる人を、『リア充』って言うんでしょ?」


ト「・・なんか違う気がするが・・・。」


ラ「じゃあ次がいつになるかは・・・?」


ト「1か月以内とか言ってるぞ?」


ラ「ふぅ〜ん。では、皆さん、1か月以内にまた会いましょう!」

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