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第一話 主人公死す…

一人の中堅レベルの漫画家と新しく入ってきたアシスタントの物語。


 コンビニエンスストア。これほど便利な店はない。食い物もジュースも酒もタバコも最低限の日用品も野菜果物そして―――――


「…ゴクリ」


 漫画である。俺が手にしたのはもちろん(・・・・)『週刊少年ダンブ』。国内トップを誇る漫画雑誌であり、俺はその中に掲載されている漫画原作者である。『だぢづDEAD』という題名で興味が湧いて読むのではないかと推測した結果、今では中堅レベルにまで人気になった。絵だって自信がある。なければこんな大衆雑誌に出すわけがない。そう――。俺には漫画しかない。漫画だけが俺を幸せにしてくれるたった一つの二つ目の命なのだ。


ページを(めく)る。今回は下から三番目の位置に俺の漫画はあった。漫画家が自分の漫画をこうしてコンビニ等で見ている数はどれほどいるのだろう。俺は今が初めてだ。漫画家になって十年、『だぢづDEAD』を連載して早一年、国内の童貞の割合が半分を超え政府が日夜人口の減少を抑えようとする中、俺はその半分の童貞として一心不乱に筆を振るっている。

…そんなことはどうでもいい。俺はとにかく居ても立ってもいられずにここに来て、今自分の漫画を読んでいる。昨日徹夜してまで苦悩しながらも、結局この結末にしたのだ。

その結果がこの号に載っている。


(これで読者は納得するだろうか…)


 俺は飽き性だ。そして一年間付き合ってくれたであろう主人公に、俺は飽きてしまった。モヒカンで考えなしの馬鹿野郎で…でも優しいところや悪い奴を許さない心がある【デッドウ】に対し、俺はもう書きたくもない・考えたくもないくらいに飽きていたのだ。不良少年が更生するために悪い奴を倒しまくる漫画(まんが)は、週刊少年ダンブにはまだなかった系統で、それが読者の心に見事ヒットした。だが俺は主人公を描くにつれ、段々と疲弊(ひへい)()(らく)し、そしてついに昨日、主人公の死によってデッドウとの別れを選んだ。もちろん替わりの主人公は主人公のヒロインであり、主人公の遺志を継いで悪を倒す設定にしてある。編集担当の【こうへいさん】も快く俺の決断を評価した。だから問題ないはずだ。この結末に俺は何の後悔もしない…


「…! 何だ…これ……」


 だが俺は忘れていた。今の今までずっと――。確か20ページ書いたはず。そのはずなのに、俺の結末の後に“おわり…?”とついて、次回作を匂わせる終わりにするはず…

 そのはずなのに――


 21ページ目が存在したのだ。そのページで主人公はヒロインのキスで蘇り、来週も元気に更生するぞ! エンドになっていた。絵は確かに俺に似ているが、全然違う。





「ジョーノ・チッカーツヤと申します」


 (さかのぼ)ること昨日の朝五時半。編集担当【(しず)()公平(こうへい)】は仕事場で大きな溜息を付いていた。それもそのはず半年前から漫画家から「主人公に飽きた。殺していい?」と、会う度に言ってくるからだ。そして今その漫画家から渡されたネームを見て、落胆と共に脳内でまだ残された選択肢がないか必死に張り巡らせた。脳みその考える機能を持つ部分に片っ端から探りを入れ、引っ掻き回した。……だが…駄目。結局あの漫画家の飽き性を治すことは出来ないのだろうか。

 そんな公平の左隣で、その奇跡の声は響かれたのだ。


「! ……何ですか。残念ながら今立て込んでいて…」


 公平は溜息を振りまくように奇跡の声に体を向けると、そこに現れた者に思わず言葉を失った。思考も呼吸も忘れ、目の前に(たたず)む人間を見つめたまま固まったのだった。今この仕事場には公平と目の前の人間しかいない。他は皆二度寝中。

そんな中、目の前の人間は口を二度(にたび)(ひら)いた。


飽喜多(あきた)椎音(しいね)さんの編集担当の方でしょうか?」

「…! は、はい!」


 そこにおわすは(きら)めく黒き前髪に、側面からたなびく(すい)(ぎょく)の長髪が主の背中を優しく()でる。フチなし眼鏡の奥に映るは左にマゼンタ、右にシアンの瞳色が公平の体を石化させるかのようである。スーツから露出する肌は(なめ)らかな薄クリーム色、膝下(ひざした)まで伸びたスカートの上から髑髏(どくろ)をモチーフにした『骨子(ほねこ)ちゃん』人形とその仲間たちが飾られている。ジョーノ・チッカーツヤと名乗るその女性はニコリと笑って声音と共にガッツポーズを舞い上がらせた。


「そうですかぁ! …よかった~」

「…へ? 一体何がよかった、と――?」


 胸を撫で下ろして喜ぶジョーノに、公平は狼狽(ろうばい)しながら聞き返す。だがジョーノは安堵(あんど)を体全体で表現しながら、十分喜んだ後に公平に向けて勢いよく90度頭を下げた。


「私を、阿喜多椎音さんのアシスタントに任命を嘆願します!」

「――――――――――は?」


 当然公平は唖然(あぜん)とした。だがジョーノの続けざまの嘆願内容の数々に、公平は思わず「奇跡キター!」と心の中で驚嘆の声を上げたのだった。




第一話 奇跡キター!

多分これ四コマ漫画で描けば?

と言われること多数だと思いますが、やっぱ絵と漫画は違いますね。いざ漫画にしようとすれば、一時間もしないうちに飽きてゲームをするという悪循環。小説ならパソコンで出来るからそっちにいきます。絵もパソコンで書ける? そんな金があるなら遊戯王を買う。

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