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タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~  作者: 氷見
第二章 紅蓮の魔女は木魔法が使いたい
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第七話㋜ 木魔法が使えない

 エカルラトゥと精神が入れ替わってから、数か月がたった。

 今ではアロガンシア王国とも和解が成立して平和だ。


 調印式は、第三国である宗教国家ザインで行われた。

 今後アロガンシア王国からモデスティア王国に攻める事は無い、と。

 当然、モデスティア王国からも攻める事は無いと記載されている。

 さすがにザインで締結した内容を破棄して攻めてくることは無いだろう。


 あれからエカルラトゥと精神が入れ替わる事はない。

 いつか実際に会いたいのだが、まだ相手の国に行くことは難しい。

 しかも紅蓮の魔女とか言われている有名人だ……不本意だがもう少し時間が必要だろう。


 あの日から、闘気を使う為の鍛錬をしているが、まだ使えない。

 そう簡単には使えないとは言っていたが、さすがにへこむ。

 しかも腹筋が割れてきたおまけつきだ。


 今はナタリーと徒手空拳での模擬戦をしている。


「さすがお嬢様、これを避けられるようになったのですね」


「何度も食らったおかげよ」


 ガシガシと音を立てて、演武のような動きで舞う。

 今では、すっかり武闘派に寄ってきたが、魔法の開発や修練は辞めていない。


 ある程度気が済むと、椅子に座りナタリーと休憩する。


「もうあれから四か月くらいたったかしら?」


「そうですね、エカルラトゥ様は元気でしょうか」


 ナタリーが何かを思い出しながら答える。


「まあ元気でしょあの筋肉馬鹿」


「お嬢様も仲間入りですね」


「まだむきむきじゃないし、そろそろ筋肉はいらないわ」


 自分の腹を見る、うっすらと腹筋がわれているのが見える。


「そうですね、あまり付けすぎても見た目も悪くなりますし」


「そろそろ闘気が使える様になればいいのだけど……」


「もう少しだと思いますよ」


 ナタリーがにっこりと笑う。

 一緒に鍛錬できてうれしいのかもしれない、私は嬉しいからそう思う。


「そういえば最近エカルラトゥの事考えると、鏡台の事おもいだしちゃうのよね」


「母の形見と言ってましたね」


「そうなのよね、ちょっと罪悪感沸いてきちゃうのよ」


「エカルラトゥ様はもういいと仰ってましたけど」


「そうだとしても、情報を聞いたうえで、鏡台を見ていた顔が鏡に映っててその顔思い出すと、もやもやするのよね。

 あと母親の記憶もちょっと見ちゃったし……」


「でももう処分したかもしれませんよ?」


「あいつ結構女々しいから、口ではもういいって言いながらきっと鏡台を取っておくと思うのよね」


「お嬢様が言うなら、きっと取っているでしょうね」


 ナタリーが薄っすらと笑いながら答える。

 きっとナタリーも同じ評価なのだろう。


「そうなのよ、だから木魔法を習得して、会えた時に直してあげようと思ってね、練習しているのだけど全然なのよ……」


「お嬢様にも使えない魔法があるのですね」


 ナタリーが驚いている。

 まあナタリーの前では何でも使ってるからね、そう思っちゃうよね。


「それで、ここの書庫は古書と炎と風の魔導書に偏ってるから、また久しぶりに王立図書館にいこうと思うの」


「クローディア様とは三か月ぶりに会えますね」


「騒動が終わった後に会いに行ってからご無沙汰だったし、クローディアなら木魔法得意だから何か有用な情報聞けるかもだし」


「わかりました、のちほど準備しておきますね」


「お願いね、私も準備しておくわ」


 話合いは終わると、外に作った広場から屋敷へと入りお風呂へ向かう。

 二人でお風呂に入り、さっぱりすると部屋に戻り持っていくものを選ぶ。


 次の日の昼には王立図書館へと来ていた。

 司書をしているから、あまり話しかけられないかもしれないが、私の書庫よりかは多くの木魔法についての本がある。

 受付に向かうと、司書の一人に見慣れた友人が仕事をしていた。


 ナタリーと近づいていくと、こちらに気付き声をかけてくる。


「スカーレットちゃん久しぶりだね、三か月ぶりくらい?」


「そうね、それくらいだと思うわよ」


 カウンターから出て、こちらに突撃してくる。

 さっと避けようとするが、追尾力が高く掴まってしまう。


「スカーレットちゃんなんでにげるの?」


 そういいながら、私に抱き着きお尻を揉んでくる。

 カウンターにいる他の司書さん達の目線がなにやらギラギラしているが、あまり深くは考えないでおこう。


「こういうことするからよ! ってあいかわらずぽやんぽやんしてるのに身体能力高いわね」


「身体能力というよりも、技術だよ~」


 離れようともがくが全然にげられないし、剥がれない。

 せっかく鍛えたのにクローディアからは逃げられないのか……。


「結構動けるようになってもクローディアにはかなわないのね……」


「技術は一朝一夕では向上しないよ?」


 そう言うとようやく離れていくれる。

 まあ、学生時代はもっとひどかった、大人になったのかもしれないと思うが他の司書さん達を見るとそうでもないのかもしれない。。


「それでわざわざどうしたの? ここよりスカーレットちゃんの書庫のほうが炎関連の本は多いでしょ? 会いに来てくれたのならうれしいけど、三か月前に来てくれたし……」


 ちなみ私からクローディアに会いに来たのは三か月前の更に前は一年前だ。

 だが、クローディアが私の屋敷に来る事はちょくちょくあり、まんべんなく会ってはいた。

 

「ちょっと木魔法を覚えたくてね」


 手を広げておどけながら言う。


「スカーレットちゃんが木魔法なんてめずらしい……燃やしてばかりだから燃料としか見て無いと思ってた」


 失敬な! と一瞬考えたが、まあ概ね間違ってはいない。

 木は燃える為にあるのだろう、薪とかあるし。


「まあ、そんな理由だから、木魔法に関しての本がある場所を教えてほしいわ」


「わかった~、じゃあ案内するね」


 クローディアが、書棚がある部屋へと向かう。

 ナタリーと二人でついてく、王立図書館というだけあってなかなかの広さだが、有名な古書は私が写本したものを寄贈している。

 ある意味私の第二書庫と言って良いだろう。

 そんな不遜な事を考えながらクローディアについていく、ある書棚につくと手を広げて言う。


「ここらへんはみんな木魔法についての本だよ~」


「ありがとう」


 見るだけで数日かかりそうな量があるが、必要なのは悔しいが初級だったり基礎だったりだ。

 ナタリーと二人で、まずは必要になるであろう本をピックアップして本を選別する。

 二人で持てるくらいになると、設置されている机に向かう。

 席を着くと、正面にクローディアが座る。


「仕事はいいの?」


「もうちょっとしたら行くよ、あと今日は私の屋敷に泊るよね?」


 ちょっと考える、ここの本でも駄目ならクローディアに聞きたいしと考え返事をする。


「そうね、お土産もあるから一緒に帰りましょ」


「あ~スカーレットちゃんの所の高級紅茶でしょ? ちょうどきれてたのよね~」


 ヴァーミリオン領で作っている最高級紅茶だ、あまり外に売らずにプレミア感を高めているお土産だ。

 まあ売りに出してないだけで結構な量を作ってるのだが、色々あるので結構掃けていく。


「良かったわ、じゃあ私は集中するから」


「ほい~」


 あとはがむしゃらに本を読み、必要な部分をナタリーに指示して書き写してもらう。

 ある意味、本を纏め直しているともいえる、家に帰ったら一つの本に纏めよう。

 しばらく没頭してたのか、気づくとクローディアはいなくなっていた。

 邪魔しないくらいの分別は出来たのだろう。


 夕方になると、クローディアが迎えに来た。

 家につくと、クローディアの親である、ギルバード・キャンベル伯爵挨拶をしてお土産を渡す。

 喜んでもらえた様だ。まあ宮廷にも卸しているし、主要なお茶会でも使われるかなり有用なお土産だ。


 一緒に食事をして部屋に戻ると、クローディアがお風呂に誘いに来る。


「久しぶりだし一緒に入ろ♪」


 覚悟はしていたが、いざ言われるとかまえてしまう。

 色々と揉まれるから入るのに抵抗があるが、まあ久しぶりなのも確かだしと覚悟をする。

 だからと言ってそのまま終わる私では無い。ナタリーも巻き込んで、目標を増やし揉まれる回数を減らそうと画策する。


「じゃあ、ナタリーも一緒に……ね?」

 

 そう言いながらナタリーにウインクする。

 と、ナタリーがビクッと体を震わせる。


「え……」


 ナタリーの困惑する顔など数年に一度だろう。


「わーい、じゃあいきましょう~」


 逃げるナタリーの手を妙な動きをしながら捕まえると、引きずりながらお風呂へ向かう。

 やっぱりナタリーでも避けられないのか……とどうでも良い事を考えながら、クローディアと引っ張られるナタリーの後ろを項垂れながらついていく。



「はぁ~まんぞくまんぞく」


「「……」」


 私たちは揉まれまくった、それはもう信じられないほどに色々な場所を。

 お風呂に入ったのに全然まったり出来ないわ、逆に疲れるわで散々だった。

 もう木魔法とかどうでもいい、という気持ちしか沸いてこない。


「もう疲れたから寝る……」


「お供します……」


 ナタリーも元気が無い、当然私もだ。


「ええ~もう寝るの? せっかく話せると思ったのに……」


「誰のせいよ!」


 クローディアがしゅんと項垂れる。

 さすがに反省してほしい、限度というものがある。


「じゃあおやすみ、朝にちょっと話しましょ」


 そう言うとクローディア家に来たら通される、いつもの客間に向かい。

 ナタリーと並んでベッドに倒れこむと一瞬で意識が飛ぶ。


 他人の家だが自然と目が覚めると、ナタリーはすでに起きていた。


「おはようございます、お嬢様」


「おはよう」


 二人で身だしなみを整えると、朝食を取りに食堂に向かう。

 勝手知ったる他人の家だ。いつも通りにクローディアと食事をとる。


「今日は、仕事はおやすみするからお話しましょ」


 クローディアが笑顔でそんな事を言う。


「私も聞きたいことがあったのよ、昨日聞こうと思ってたのに……」


 じろりとクローディアを睨む。


「ははは~ごめんごめん」


 絶対反省してないよね、まあいいわいつもの事だし。

 食事を終わると、クローディアの部屋に行き、私が木魔法について聞く。


「そうね~木魔法は普通の魔法と違う所があるから、それが原因なのかもしれないね~」


「どういうこと?」


「木には木の精霊が宿っていて、精霊に干渉して魔法を使う感じ?」


「ん~それは本に良く書いてあるのだけど、対話とか干渉とかがよくわからないのよ」


「魔力を練って木に当てるとなんかぽわんぽわんしてくるから、それをこう魔力でばしばしして?」


「もっとわからなくなってるわよ!」


「わたしも感覚でつかってるから、説明を求められてもわかりません!」


「ええ……」


 そういえばこんな子だったわね、木とか燃料と思ってたし、魔法は誰に教わらずとも使えたから忘れてたわ。

 

「じゃあ後でちょっとやって見るから、助言をお願い」


「ん、わかったよ~」


 部屋に戻り、クローディアに練習している所を見せてなにかわからないかと聞く。


「ん~私もよくわかんなくなってきた、スカーレットちゃんが木の枝を持ってもぽわんぽわんしてないし……なんでだろう?」


「それが聞きたいのだけど‥‥…でもクローディアでもわからないのか……」


 私にはもしかして木魔法使えないのか、と考えているとある事を思い出す。

 キャンベル家にある、木魔法と水魔法の魔導書が代々伝わっている事を……。

 キャンベル家は、木と水魔法が得意な家系で、領にいる配下の貴族のほとんどが木と水の魔法が使える。

 きっと虎の巻みたいな魔導書があるはずだ。


「それなら、クローディアの実家にあるって言ってた、木の魔法の魔導書見せてくれない?」


 紹介して貰えば見せてくれるだろう。私とクローディアの仲だし。

 キャンベル家とは良好な関係を維持している無下には断らないはずだ、断られても何かこう頑張ればきっといける。

 そんな安易な事を考えているとクローディアが何か考えているので、しばらく見つめながら待つ。


「じゃあ私も里帰りするから、一緒に行こ?」


「え?」


 そう来ちゃったか、でも仕事はどうするのだろう。


「司書の仕事はいいの?」


「あれは趣味と実益を兼ね備えた場所だから仕事にしてるだけだし、そこらへんは融通きくよ」


「まあ伯爵令嬢のあなたがやる事でもないものね……」


 趣味と実益って……クローディアってほんと本能で生きてるわよね。

 仕事が問題ないなら反対する理由は何もない。


「わかったわ、いつから行くの?」


「今日!」


 クローディアは飛び上がるように拳を掲げながら答える。

 ナタリーに顔を向けると、頷く。

 私の予定はナタリーが管理してる。私が管理しても良いのだけど、色々と集中したら忘れるし……。


「はぁ……わかったわ早く木魔法使える様になりたいし」


「やったーじゃあ色々準備してくるね」


 クローディアが部屋を出ていく。


「良かったのですかお嬢様」


 さっき良いって目線で言ってたのに、もう一度聞いてくる。

 まあ昨日の件もあるが、だからと言って引き下がっては木魔法が気になり夜も眠れなくなるだろう。


「ここまで来たら使える様になりたいもの」


「わかりました、では私は一度屋敷に戻って連絡と着替えを用意してきます」


「ありがとう、私はここでちょっと木魔法の練習しているわ」


 ナタリーも部屋を出ていく。

 久しぶりに旅ができるのか、とちょっとわくわくしながら木魔法が発動しないかと試行錯誤する。

タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~


第七話㋜ 木魔法が使えない 終了です

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