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タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~  作者: 氷見
第一章 始めての入れ替わり
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第六話㋜ 因果応報

サブタイトルを交換しました

「エカルラトゥ様、エカルラトゥ様」


 体が揺すられる、でもまだ寝たばかりだ。気にせずに寝る。

 一時静寂が訪れる、意識が遠のく。


「お嬢様! さすがに眠りすぎるのは体に悪いですよ!」

 

 強引に起こされる、これはきっとナタリーだ。

 自分の体にもどってきたらしい。

 目を擦りながら、薄目でナタリーを見る。

 腰に手を当てて、怒っているようだ。


「なたりー……いまなんり?」


「もう十時ですよ、ここまでは色々とおありですから放って置きましたが、さすがに眠りすぎです」


「そもそもなんれわたひらとおもったろ?」


 どうやらあまり声がちゃんと出ないらしく、少し舌足らずになる。

 なにやら最初の方はエカルラトゥの名前で呼んでいた気がする。


「エカルラトゥ様ならすぐ起きます」


 話を聞く限りじゃエカルラトゥはナタリーの事を気に入っていると思う。

 ナタリーに呼ばれれば飛び起きるだろう。

 というか,私はまだ二時間くらいしか寝てないっぽい。


「わらし、まだにりかんしかねてらい」


「あっ! エカルラトゥ様の体で徹夜しましたね! 徹夜は禁止と約束したじゃないですか」


 ナタリーが凄い剣幕で怒る。約束はしたけど、昨日はエカルラトゥの体だったし、その約束はスカーレットの体がしたから約束は破って無い。


「やぶってないから、もうひょっとねる」


 そのままベッドへと倒れこむ。

 さすがにもうナタリーは何も言わない。


 起きると夕方だった、これは次何時寝ればいいのかわらかなくなるパターンだ。

 今日も徹夜すれば、夜型に移行できるが、徹夜はナタリーが許してくれない。

 学院時代はナタリーがいない隙に、散々徹夜したが、最近は普通の生活をしていた。

 徹夜が久しぶりすぎて、今後どう対応しようか考えてしまう。


 しばらくボーっとしているとナタリーが部屋に入ってくる。


「やっと目覚められましたか」


 顔は笑っているが目が笑っていない。

 ナタリーの背後に負の炎が見える、怖い。


「ごめんなさい」


 素直に謝る。

 ナタリーの顔を盗み見ていると、ナタリーの顔が弛緩して表情がやわらかくなる。


「徹夜は駄目と言ったでしょう? 実際今日何時寝るのですか?」

 

 ナタリーの言う通りだ、徹夜を続けるならいいけど、平時に戻すのが大変だ。


「頑張って、夜ねるわ」


「わかりましたよお嬢様、眠りやすくするために食事なども合わせましょうね」


 わがままな子供を扱うかのように話してくる。

 その扱いに物申したけど、ナタリーとの約束を破って徹夜したのは私だ。

 

「運動するのも良いかもしれませんね」


 ナタリーが付け足してくる。

 それもありかもしれない、運動すると心地よい眠りに誘われるし、闘気の炎の事も調べたい。

 だがそれを調べる前に闘気を使えるように鍛錬をしないといけない、ナタリーに師事すれば少なくない時間で会得できるはずだ。


「そういえば、エカルラトゥは何か言っていた?」


「そうですね、鏡台の事を聞かれました」


「ああ、あの鏡台か、大切そうなものは入って無かったのだけど……」


「その鏡台が母の形見だったらしいです」


「え~そっちか……たしかに鏡台を見ている所は浮かんだのだけど、感情はわからないから……悪い事したけど、あいつも私の〇っぱい触ろうとしてたんでしょ? お相子よね」


「そんな事もありましたね、あまりにもいやらしい手つきだったのでお止めしましたが」


「止めてくれてよかったわよ、さすがに……ねぇ?」


「そうですね、感に従って良かったです」


 ナタリーがにっこり笑う。

 確かにナタリーがいなければ、存分に揉みしだかれただろう。

 裸になって存分に見聞して、挙句の果てには……精神衛生上あまり考えない方がいいみたいだ。


「しかし、あいつ結構むっつりスケベよね、あっちの国じゃ影しょった孤高の狼のように生きてたのに……しかも二つ名も持ってて暴虐の赤とか言われてたわよ」


「暴虐の赤?」

 

 ナタリーは首を傾げて聞き返す。


「闘気の炎あったでしょ? あれ制御出来なかったみたいで敵も味方も炎に当てられて怪我人まき散らしたらしくてね、まあ制御出来るような力と思ってなかったみたいで仲間にも怖がられた結果、暴虐の赤……恥ずかしい」


 自分で言ってても恥ずかしくなるんだけど、アロガンシア王国はそこら辺の羞恥はないのだろうか。


「お嬢様と同じですね」


 クスクスとナタリーが笑う。

 紅蓮の魔女という二つ名が頭に浮かび、さらに恥ずかしくなってくる、心がむずむずする。


「やめて! あいつと一緒にしないでよ恥ずかしい、紅蓮とか暴虐とか……アロガンシア王国は本当変な人多いわよね、二つ名なんて恥ずかしくて声に出せないわよ普通」


「そうですね、モデスティア王国では、二つ名を聞きませんね


「もしかしたら、私に隠れて変な別名付けられてないわよね?」


「付けられていませんが、機嫌を損ねると燃やされると噂されているらしいですよ」


「損ねなきゃいいのだから……事実なら良いわよ」


 概ね間違っていないし、そもそも酷い事を私にするから燃やされる。

 そんな噂が一人歩きして誇張されるのには不満があるが、仕方が無いとも思っている。


「そうむくれないでください」


 ナタリーが笑いながら言う。ばらなら私も笑う。笑いあえるのなら今日は良い日のようだ。

 軽い食事を部屋に用意してもらい、その後軽く運動をする。

 早く闘気が使えるようになりたいが、当然まだまだ先だ。


「そういえば、エカルラトゥ様が謝罪代わりにと、これを」


 ナタリーが紙を差し出してくる。

 内容をさっと読むと、闘気の炎について、わかる事を纏めてくれているようだ。

 感情で変わったりする、悪意に反応する等の情報は良い情報だ。

 今後使えるようになれば、直ぐに制御出来るかわからない。

 ありがたく貰い、暇な時に闘気の炎に関しての本を作り、纏めておこう。

 その結果わかる事もあるだろうし。


 幾日かたった日に、父とテラスでティータイムをしていた。

 外は過ごしやすい気温で、空は青く穏やかな風が吹いている。

 ナタリーも後ろに控えている。


「そうえいば、アロガンシア王国との戦争は一旦は回避されたかもしれないぞ」


「何かあったのですか?」


 持っていたティーカップを置き、理由を父に聞く。


「ああ、アロガンシア王国で戦争に対して、先陣を切って動いていたらしい者が失脚したらしくてね」


「なるほど、それで和解案を承諾しそうなのですね」


「今の所好感触らしい」


「それで先陣を切って動いていた人は誰だったんですか?」


 そう言いながら、ティーカップを持ち直し、喉を潤す。


「ああ、第三王子のトラビスだ」


 優雅に紅茶を飲んでいたが、思わず紅茶を吹き出す。


「お、おいどうしたんだ?」


 父がこちらの行動にびっくりしている。

 ナタリーが布巾を用意して、私が吹きこぼした紅茶を素早く拭く。


「ごめんねナタリー……」


「いえ大丈夫ですよ」


「……続きをどうぞ」


 父に話の続きを促す。


「ま、まあ大丈夫ならいいのだが、どうやらリャヌラの街で動いていたのがトラビスの私兵だったらしくてな、まあ公的にはただの賊になっているのだが」


「ああ、私にフルボッコされたお陰で、コリデ砦を奇襲出来なくなったから責任とらされたわけね」


 まあフルボッコしたのはエカルラトゥなのだが、私の功績になってしまった。

 小憎らしいトラビスの顔を思い出すと、ちょっとイライラする、スコーンでも食べるかとクリームを付け口に入れる。


「そうだな、あと密偵からの情報なんだが、その後軟禁されていたらしいのだが、外壁が崩れて転落したらしくてな……」


 私はスコーンを堪能していたが、思わずむせてせき込む。

 急いで紅茶で流し込む、ナタリーが背中をさすってくれる。


「お、おい、さっきからどうしたんだ?」


「ありがとう、ナタリー」


「大丈夫ですよ」


 なんか既視感があるんだけど、まあいい、父に続きを促す。


「うん、あ~どこまで話したかな?」


「外壁が壊れて、までです」


「そうだったな、まあ死にはいたらなかったのだが、下半身が動かなくなったらしい、神経を損傷したみたいでな、それで王位継承権を放棄させられたらしい」


「そうですか、良い事ですね……あんなやつ」


 最後の呟きは父には聞こえなかったらしく、何も言わなかった。

 若干エカルラトゥの記憶に当てられているのだろう、トラビスに対して罪悪感はまったく無い。

 たとえ私が原因だとしても、半分はエカルラトゥだし気にする事じゃない。


 まあいい感じに纏めると、悪は滅びたわけだ。

 エカルラトゥという男に意識が移った時は、神を呪った気がするが、なんだかんだで私の周りは良い方向に進み始めている。


 エカルラトゥに精神が移る前までは、完全な引きこもりだったが、今では外にでるのもやぶさかではない、と思っている。

 久しぶりに親友のクローディアに会うために王立図書館にでも行こうかな、なんて考えも浮かぶ。

 そんな自分の変化は嫌ではない、むしろ良い事の様に思える、エカルラトゥとジェレミーとの出会いには感謝しなければいけないのだろう。

  そう思いながら私は優雅に紅茶で喉を潤す。



タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~


第六話㋜ 因果応報 終了です

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