表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/28

第二十四話㋜ 逃げるが勝ち

「ほう、自分の身がばれているのにこちらに来るその胆力、さすがだな」


「貴方は胆力とは無縁そうに見えるわね……」


 護衛の後ろに立っているヴァロアに皮肉を言う。

 



 何故こんな状況になっているかと言うと、国境会館に入ると、統括のティムと使用人達しかいなかった。

 話を聞くと、ヴァロア達は国境会館から撤退したらしい。

 

 何故国境会館から撤退したのかと思いながら、アロガンシア側に向かうと、簡易砦が作られ魔法陣などで防衛準備が既に整えられているのを見つけた。


 その簡易砦に近づくと、フェリクスの顔をしたヴァロアが扉から出てきて、先述した状況になった。

 当然ヴァロアの周りは護衛騎士が守りを固めている、トリスタンが仕切っているみたいだ。


 ヴァロア達と睨み合いになったので、アリアと会話する。


「入れてくれなさそうだけど、アリアはどうするの?」


「私はいつもスカーレット様の味方です」


 笑顔でそんな事を言う。


「国を捨てるの?」


「覚悟はできていますし、両親は了承済みです」


 マジか……アリアは本当に私の予想の斜め上を行く。

 会話しているのを見ていたヴァロアが話しかけてくる。

 

「近衛騎士アリア! 貴女は戻ってくるのは問題無いが……まさか戻ってこないつもりか? 国を捨てるのか?」


 アリアの顔色が一切変わらないのを見たヴァロアが、段々と焦っていくのがわかる。

 きっと理解出来ないからだろう。


「私は、私がやりたいように生きます」


 ヴァロアも周りにいるトリスタン達も、アリアの言葉に驚愕している。

 これでアリアは本当に逆賊になってしまった。

 私が命令した訳では無いが、私はアリアに対して裏切らせた責任があると思う。


「ふぅ……アリアの事は置いておこう。どうせ貴女がこちらに来れば一緒についてくる。どうだね? スカーレットが私のものになれば、全てを無かった事にしようじゃないか」


「エカルラトゥもおとがめなしって事?」


「そうだな、私に逆らった事に対してお仕置きはするが、そのまま近衛騎士として召し抱えてやろう」


 ヴァロアが寛大な事を言っているように聞こえるが、それはエカルラトゥにとって幸せなのだろうか。

 何か違う気がする。

 トリスタンは私達の会話が少し変なのに気づいて、困惑しているのが見て取れる。


「あ~なんか幸せそうに聞こえないからいいや」


 私の言葉を聞いたヴァロアは少し笑いながら言う。


「では力ずくでお前を手に入れようじゃないか……トリスタン!」


「はっ!」


 護衛騎士達が戦闘態勢に移行する。 

 さすがに軍相手に戦うのはきついし、アロガンシア軍は防衛向きだが、そもそも戦う為に来たわけではない。


「アリア! 逃げるわよ!」


「ええ~、逃げるんですか? やっちゃうのかと思ってましたけど……」


「ごめんね、覚悟させといて……」


「大丈夫です~」


 アロガンシア軍がいる簡易砦から、走りながらアリアに謝る。

 後ろを見ると、大分離れた場所にこちらを追いかけてくるトリスタン達が見える。

 思った以上に離れているということは……。

 

「はははっ、意表を突かれて追うの遅れてるし」


「私もてっきり全部燃やすと思ってましたし、仕方が無いですよ」

 

「取りあえず国境会館に行きましょ、あそこにいればエカルラトゥもナタリーも、それにヴァーミリオン家とも連絡取れるだろうし」


「わかりました」


 土魔法で壁を色んな場所に作りながら、国境会館へとたどり着く。

 トリスタン達は諦めたのか、どこにもいない。


 屋敷の中に入ると、いまだに統括のティムと侍女達が右往左往していた。


「エカルラトゥ様、いったい今どうなっているのですか?」


 私の存在に気付いた侍女のマリーが聞いてくる。


「ん~、端的に言うと、戦争が始まる一歩手前?」


「……」


 私の言葉を聞いていた近くの者が、膝から崩れ落ちるのが見える。

 マリーは絶句していた。


「だから早くアロガンシアに戻らないと巻き込まれるよ」


「エカルラトゥ様はどうなさるのですか?」


「取りあえずは此処に留まるかな」


「私も留まりますよ」


 アリアが口を挟んでくる。

 マリーがしばし考えてから口を開く。


「では……私も留まります」


「いや、下手をしたら国に帰れなくなるよ?」


「大丈夫です、私が帰れなくても悲しむものはいません。それにエカルラトゥ様は何か考えがあって留まるのですよね?」


「まあそうだね……」


「お手伝いさせてください!」


「……居たいというなら止めはしないけど、手伝える事は今の所無いかな。まずはあの統括を正気にさせて、アロガンシアに戻る人を送って貰わないと」


 ニクス教徒なのか、膝をついて祈りを捧げているティムを呼ぶが反応が無い。

 仕方が無いかと、悪意あるものを燃やす火でティムを燃やす。


「燃えてるのにまだ祈ってる……」


 アリアが燃えているティムを見ながら呟く。


「まあ私に悪意なければあまり熱くないから……」


 それでも完璧じゃない炎だ、髪とか服が多少燃えるのだが、全然気にしないで祈り続けている。

 仕方が無いと思い、エカルラトゥの体でティムを往復びんたをする。


「痛い……エカルラトゥ様、何故こんな無体な事を……」


 涙目になりながら私に往復びんたした理由を尋ねてくる。


「呼んでも全然返事しないから、強行手段として頬を叩いただけ」


「そうですか……それで私にどんな用事が……」


「アロガンシアが進軍してくると思うけど、どうするの? 軍と合流するのか、それともここから逃げるのか、逃げるなら屋敷にいる使用人達も連れて行って欲しいのだけど……」


 ティムもしばらく考え込む。

 やがて結論がでたのか、口を開く。


「モデスティア王国は軍を準備していないでしょうし、この屋敷を攻撃される事は無いでしょうから、取りあえず留まろうと思います」


「それもそうね……でもアロガンシア軍を見た感じじゃ、さらに兵を招集している感じだったから、もしかしたらモデスティア王国も……」


「その予想当たっております」


 急に予想の付かない場所から声が聞こえるのでびっくりしながら目を向けると、父の従者のキースがいた。

 よく敵国の屋敷に無断で入ったな、という疑問はあるが、それだけ急ぎの用があるはず。


「まさかキースが来るなんて、何かあったの?」


「はい……もともと王家はアロガンシア王国を信じていませんでしたから、何かある可能性を配慮して全軍ではありませんが、国境砦にオリバー王子が兵を引いて駐留しておりました。その矢先にこの出来事……直ぐにこの平原の端に陣取り、兵を招集しております」


「あの臆病王子が率先して兵を引いてくるなんて……」


「それは、スカーレット様を怖がっているだけで、臆病なわけではありません」


「そう……」


 オリバーは私を見ると逃げるから、どうしても臆病という評価が抜けきれない。


「で、では本当にここで軍がぶつかると言う事ですか?」


 ティムがまたおろおろしながら聞いてくる。


「そうなるみたいね……」


 両国の国境砦からど真ん中にあるのが、この国境会館だ。

 ある意味ここを奪った国が、この戦いを優位に勧められそうだ。 

 ならばここを奪うか、それとも壊して無かった事にするか……。


「……スカーレット様、が合同会館でお待ちしているかと……」


 キースが変な葛藤しながら言う。

 気持ちは少し分かる。


「わかった。アリアはどうする?」


「もちろんついて行きます」

 

「我々はどうしたら……」


「そこは逃げるなり残るなり判断は任せる」


 放心するティムを残して合同会館へ行くと、悲壮な顔をしたエカルラトゥとナタリーとカーマインが待っていた。

 近づいていくと、エカルラトゥが土下座をしてくる。


「ちょっ! 私の体で何してんのよ!」


「せずにいられないんだ! すまない……」


 エカルラトゥの剛腕でスカーレットの体を抱き起こす。

 この体だと、自分の体が軽く感じる、なんてどうでも良い事を考えてしまった。


「なんでこんな事に?」


 エカルラトゥはポンコツになっているので、ナタリーに聞く。


「オリバー殿下は、事件の概要を話す前にスカーレット様とエカルラトゥ様の精神が入れ替わっていた話をアンジェリカ様から既に聞いていたようで、スカーレット様をアロガンシア王国の間者と認定されました」


「……概ね間違っていないけど、アロガンシア王国に組してたわけじゃなく、エカルラトゥと穏健派に組してたのは確かね」


 私の返事を聞いたエカルラトゥが俯いていた顔を上げ、こちらを見つめてくる。


「もし汚名を返上したいのであれば、先陣を切って戦えと……」


 弱弱しい感じでエカルラトゥが私の声で言う。


「それも親善交流時にリオン達に、私が啖呵きった言葉だから、別に何とも思わないわね」


 私の言葉を聞き、その時の絵が頭に浮かんだのか、エカルラトゥが変な顔になっていく。


「え? 怒っていないのか? 俺が原因で戦争が始まりかけていて、しかもスカーレットが先陣を切らないと国に戻れないんだぞ?」


「一度覚悟していた事だし、驚きはしたけど怒りはしないかな」


「だから言ったじゃないですか……そんなに悲観しないでくださいと……」


 ナタリーが溜息を吐きながら俺に言ってくる。


「いや、だって……こんな事……俺を慰めようとしているだけかと……」


 カーマインが普段ニヤニヤしているはずなのに、今回は我慢しているのか唇が震えているだけだ。

 ここは茶化さないのか……判断基準が良く分からない。


「それでこれからどうするんだい?」


「モデスティアの国境会館は人が残っているの?」


「魔法士団が防備を固めているよ。当然国より私に仕えている者だけでだがね。あとは侍女や料理人や使用人も残っている。あそこはセーフティセクションがあるから下手に逃げ回るよりかは安全だからね」


「それなら良いわね……キース、父様も兵を率いてきているのよね?」


「はい、遺憾ながらスカーレット様の件で前線に布陣させられる事になっています」


「なら好都合ね……私が戦う所を見る為に、国境会館の横に布陣しなさい、と伝えて……父さまでも、オリバー殿下どちらでもいいわよ」


「よろしいのですか?」


「ええ、派手に戦ってやるわ」


 キースが私の目を見つめてくる。

 その後満足したのか、ナタリーに向き直る。


「ナタリー、スカーレット様の事を頼んだぞ」


「はい、お父様」


 そう言うと、キースは部屋から出ていく。

 エカルラトゥがキースとナタリーを交互に見ている。どうやら驚いたようだ。

 キースを見送るとエカルラトゥが神妙な顔で尋ねてくる。


「アロガンシアの軍と戦うのか?」


「少し違うわね……明日になったら教えてあげるから取りあえず、お互いの国境会館に帰りましょうか。モデスティア王国軍は今夜攻めてこないだろうけど、アロガンシア王国軍は兵の招集が終わり次第攻めてくると思うのよね。

だから明日になるまで動かない様に、ちょっと色々と仕掛けをしたいから」


「……わかった」


 エカルラトゥの顔はいまだに暗い。


「あまり深く考えないでよね、私の体なんだからちゃんと食事もするのよ?」


「お嬢様、私が責任をもって食べさせます」


「ありがとう、ナタリー」


「そんな子供扱いしないでくれよ……」


 気落ちしながら答えるエカルラトゥを見ながら思い出す。


「そうだ、首飾りにスタールビー取り付けているから、二個貰うわね」


 エカルラトゥが首から下げている装飾を指差して言う。

 首飾りは三つのスタールビーを取り付けてある。何かあった場合に備えた結果だ。

 エカルラトゥが二個取り外して、こちらに渡してくれる。 

 これで準備ができると、アリアに向き直る。


「アリアは仕掛けをみたいでしょ?」


「はい!」


「じゃあ行くわ、また明日ね」


 エカルラトゥは茫然としながら手を振り返してくれる。

 ナタリーとカーマインはニコニコしながら見送ってくれた。


 国境会館からアロガンシア王国側の平原へとくると、逃げる時に作った土壁がいたるところに設置されているのが見える。


「逃げながらこんなに設置できるものなのですね……」


 アリアが土壁を見ながら呟く。


「土壁も慣れれば簡単、私は良く父と一緒に開拓、開墾や治水まで手伝っていたからね。魔法は結局慣れで発動速度を上げられるから」

 

 それ以外に外に出る事といえば、書店に行く事だけだったけど……。


「はえ~では慣らすために常日頃から魔法使いまくった方が良いわけですね」


「そうだけど、でも常人はあまり出来ないでしょ? 高威力の魔法をぶっ放すなんて事」


「ですね……周りから恐れられるのは確かです……」


 アリアと会話しながら、魔力で魔法陣を地面に書いていく。


「その魔法陣は見た事ありませんが、作ったのです?」


「これ、すっごい面白いのよ? 見てて」


 魔力で作った魔法陣が淡く光り、見えなくなるので、そこにちょっとでかい石を拾い投げ込む。

 パンッ! という破裂音を響かせ石が空高く吹き飛んでいく。


「地雷魔法陣よ。触媒が埋めてないから死ぬほどの爆発力は無いけど、数メートルなら人を浮かせるぐらいの衝撃はあるのよ」


 説明していると、私の体だときついけど、エカルラトゥの体なら無傷で耐えられるかもしれない、と考えてしまう。

 アリアを見ると、爆発していない地雷魔法陣を見つけて観察している。


 おもむろに地雷魔法陣を設置した場所に向かいわざと踏んでみる。

 パンッ! と、もう一度破裂音が響き、アリアがこちらを振り向き、空中に滞空している時に目が合う、若干呆れている顔をしている。


「わっ! さすがエカルラトゥの体なんともないわね」


 綺麗に着地して、足を見てみるが何ともない。

 闘気を纏っていたから当然といえば当然だが、弱い人なら怪我ぐらいはするかもしれない。

 

「スカーレット様、さすがにそれは……」


「気になったから仕方が無いでしょ」


 アリアが溜息を吐いている。解せない。


「私もお手伝いしますから、ささっと終わらせましょう」


「もう覚えたの?」


「はい、と言いたいところですが、横にある魔法陣を見ながらなら描けますから、いずれ覚えるかな~と」


「結構複雑のはずだから、さすがアリアだわ」


「いえ~」


 アリアが照れているが、さすがカーマインが弟子にしたいというだけはあると思う。

 もしアリアがモデスティア王国に生まれていたら、きっといい魔法使いになったはずだ。


 日が暮れた頃に魔法陣設置をやめて国境会館へと戻る。

 アロガンシア軍は全然攻めてこないが、偵察がちょこちょこきていたので、死なない程度に燃やして撃退しといた。


 国境会館に入ると、ジェレミーとティムが話し合っている。

 

「よっ!」


「なんでここにジェレミーが……もしかして周り込んでモデスティア側から攻めてきたの?」


 ヴァロアは慎重派だと思う、じゃないと国境会館から撤退した理由が分からない最初からここに居座って籠城するか、モデスティアの国境会館を攻めるかしていたはず。


「いや、脱走してきちまった。ぶっちゃけ隠れ穏健派が今回の事で騒いでて、離反騒ぎも小規模だが起きているから、まだ攻めてこないと思うぞ」


「良くそんな軽々しく言えるわね……」


 半ば呆れながら口からそんな事が出てしまう。


「いやさ、降格処分受けた時点で、俺は跡取りとしては不適格の烙印押されちまったからな、すでに弟を跡継ぎに考えているだろうし、やりたいようにやるさ」


 色んな物事から解放されたような顔だけど……。


「だとしてもねぇ?」


 アリアに顔を向けて同意を求めるように言う。


「いえ、良い判断です。どうせトリスタンから前線送りを言い渡されたんですよね?」


「そう! そんな事命令されても困るよな?」


 アリアとジェレミーが通じ合ったのか、頷き合い、腕を当て合っている。

 近衛騎士内の挨拶なのかよくわからない。

 

「エカルラトゥ様……結局モデスティア王国は攻めてこないのですよね?」


 ティムが恐る恐る話に入ってくるが、ジェレミーの事もチラチラ見ている、脱走した事はティムに言っていなかったのかもしれない。


「そうね、明日の朝に、国境会館の近くに駐留するとは思うけど、攻撃は控えさせているから大丈夫。むしろアロガンシア軍がここに攻め入る気がするけど……」


「何故!?」


 ティムが愕然としながら聞いてくるので、もういいかと思い答えてあげる。


「それは私が、スカーレット・ヴァーミリオンだからよ」

 

 やはり秘密を公言するのは解放感がある。


「スカーレット様、教えてよろしかったのですか?」


 ティムが私とアリアを交互に見ながら驚愕の顔をしている。

 直ぐには信じられないだろうが、気にせず会話しているアリアを見て信じたかもしれない。


「問題無し、どうせばらされるだろうし……言っとくけど、もう国境会館から逃げられないわよ? アロガンシア方面は私の魔法陣が設置してあるから……」


「ティムさん、大丈夫ですよ。スカーレット様は敵対しない限り、怖い事は何にもないですから」


「そうそう、ティムさんも穏健派だろ? ならここに居た方がいいんじゃないか? それにこの国境会館にいる使用人達も穏健派や反フェリクス派だろ? どうせ潰す気でここに送り込んだ可能性は高いとおもうしな」


「そんな……折角両国の親交を取り持つ事が出来ると思っていたのに……」


 ティムは床にへたり込む、近くで聞いていたマリーも驚いていたが、直ぐにティムの所に来て介抱しようとしている。

 窓の外を見ると、空には月と星しか光るものが無い。


「そろそろご飯にしましょう。マリー、食事の用意はしているよね?」


「はい、食堂に……ですが簡単な物しか……」


「むしろそれで良いわ。あまり肩ひじ張った食事は好みじゃないから」


 アリアとジェレミーと共に食事をすると、バルコニーがある部屋へと向かう。

 外はすでに暗い、奇襲されるのが一番堪えるので、空に向かってスタールビーを投げ上げる。


 やがて魔力をスタールビーに集約して、疑似太陽を作る。


「はえ~あれがジェレミー様が言っていた疑似太陽ですか……」


「また見る事になるとは、しかしほんとに太陽みたいだな……」


「極論でいえば、ただの照明魔法よ。そもそも魔法は魔力の供給量で威力が変わるのだから、名前を付けるのも何か違う気がするのよね」


「え~どうしてですか? アロガンシア王国だと、名前を付けてイメージすると魔法が使いやすくなると言われてますけど……」


「それはそうなんだけど、例えばファイヤーボールと名付けたとして、私が本気で使ったとしたらボールなんてでかさ超えるし」


「ちょっと見てみたい……」


「じゃあ明日見せてあげるわ」


 三人で話ながら外を見ると、国境会館周辺が昼の様に明るくなっている。

 これで隠れて奇襲なんて出来ないはず、まあ見張りは立てないから、ただのはったりなんだけど……。


「スカーレット、これって見張り立てないのか?」


 外を見ながらジェレミーが尋ねてくる。


「ん~簡易ビジャランテセクションでもこのスタールビーで作ろうと思っているけど……」


 もう一つのスタールビーを取り出す。


「はえ~そんなことまで出来るんですか」


「勿体ないだろ、俺が夜に見張っとくわ。使用人達も不安になってるかもしれないから、そのケアも一緒にしておくよ」


「……じゃあお願いするわ」


「おう、その代わり昼に寝るからな、そこんとこよろしくたのむ」


「わかったわ」

 

 ジェレミーが部屋から出ていく。

 きっとティムの所だろう。


「じゃあ私達は部屋に帰って寝ましょうか」


「え? お風呂は?」


「……まさか一緒に入りたいの?」


「あ~はい……まあ」


 アリアが赤くなりながら返事をする、カーマインはどうしたと問いただしたいが、まあいい。

 どうせ最後かもしれないし、実際は女同士だし、それもいいかもしれない。


 アリアと共同風呂に一緒に入り、エカルラトゥの体を見ながら色々と話してから自室に戻った。


 夜眠っていると、遠くで爆発音が聞こえる。きっと地雷魔法陣を踏んだ音だ、とほくそ笑みながらまた眠りに落ちる。

タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~


第二十四話㋜ 逃げるが勝ち 終了です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ