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タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~  作者: 氷見
第三章 親善交流ですれ違いの入れ替わり
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第十四話㋜ トラウマ(二日目)

アリアとの会話をマイルドにしました。

風邪をひいてる時に書いてたので、直球すぎました。すみません。

「アリア、腕を絡めるの止めない?」


「えー、せっかくなんです、この時を楽しみましょう」


 王都騎士団への見学に訓練場に向かっている。

 子供の頃に良く通っていたので、まったく新鮮味は無いからつまらない。

 しかもアリアが侍女としてエカルラトゥについてる。

 今後の為を考えると、アリアに精神が入れ替わった事を話さずにいるのは無いと思い、打ち明けたのだが、早まったと今は思っている。

 朝からアリアが付きっきりなのだ、傍から見ると侍女といちゃいちゃしてるようにしか見えない。


 腕を絡めてくる侍女がどこにいるのだと説教したい。

 それにフィルの目が怖い。

 もしかしたらフィルはアリア狙いだったのだろうか。

 でもお見合いはご破算になったみたいだし、さすがにもう一度見合いとはいかないだろう。

 ならばフィル自身の手でアリアを落とすしか手は残って無い。

 そこに颯爽とエカルラトゥが現れると、そりゃそんな目で見たくもなるよね。

 

「はぁ……さすがに侍女と腕を組んで歩くのは無いと思うけど」


「しょうがないですね、では後でお時間下さいね」


「わかったわかった」


 手をひらひらさせながら了承する。きっと魔法関係の話だろうと安請け合いする。

 騎士団への見学が終われば、夜まで自由時間だ。その時にでもすればいい。

 案内役に付いていくと、見た事のある訓練場へと案内される。

 

 騎士同士が軽く模擬戦をしているのが見て取れる。

 ぞろぞろとアロガンシア王国の親善大使達が入って見回す。


「あれは真剣か?」


「はい、帯剣している剣で模擬戦をすれば実戦さながらの訓練が出来ますので」


 答えたのは王都騎士団のエリオット・バイロンだ。

 子供の頃になんどか会ったことがあるのだが、うっすらと覚えているだけだ。

 フィル達が訝しんでいる、自分達の見学があるから、こんな危ない訓練をしているのかと思っているのだろう。

 皆で眺めていると、模擬戦をしていた騎士が、剣で斬られて軽く吹き飛び倒れる。


「嫌な物を見たな……」


 フィルがそう呟く。その言葉を聞いたエリオットが言葉を返す。


「大丈夫ですよ、この訓練場は人や物に対して魔力バリアが張られているので人を殺傷できません」


「は? どういう意味だ?」


 フィルが理解出来なかったのか聞き返す。


「この訓練場は魔力で覆われているのです。覆われている場所では魔力がダメージを肩代わりしているのです」


「たしかに魔力で防御壁を作れるのは知っているが、そんな事が出来るのか……」


「ただ、魔力消費がでかいので、ここではいつも張っている訳ではありません、魔力を供給してくれている魔法士団の方々も疲れますので」


 このエリア魔法は、私の魔法の師匠であり叔父であるカーマイン・スチュアートが作った物だ。

 結構有名だとおもったけど、訓練場と王族がいる場所くらいにしか使用してないから、アロガンシア王国も知らないのかもしれない。

 それにエカルラトゥの記憶を見ると、アロガンシア王国は魔法を無効化させる魔法陣に力を入れていたようで、逆に魔力で覆うというのは意識の外にあったのだろう。さすが肉体派の国。


 でも懐かしいな、この魔法はセーフティセクションと命名されているのだが、カーマインが自慢げに語るので、どれくらい耐えられるかが知りたくなり、無差別に火魔法ぶっ放して壊した事がある。

 あの事件のおかげで父は一か月の自宅謹慎を言い渡されたが、父は領地に帰り母といちゃいちゃできると喜んでいた。

 それで子供が生まれたのだ、しかも双子の妹と弟がだ、結果的にはヴァーミリオン家ではよくやったと褒められた。


「訓練場に設置してあるこの魔法セーフティセクションは、完璧ではありません。あまりにもでかい攻撃を行えば肩代わりする為の魔力が枯渇します」


「どれほどまで耐えられるのでしょうか?」

 

 純粋な質問を、おっとりしたニコルが聞く。怖いものなしだ。

 

「言葉では説明が難しいですね……そうですね貴方がたも知っているスカーレット・ヴァーミリオンが子供の頃に全方位魔法を一回つかっただけで枯渇する程度です……しかしあの時は酷かった……まだ騎士達が模擬戦をしている最中で発動したから……あの火の悪魔とその親玉以外は火傷を負い、人によっては火を怖がるようになる始末……ああ、すみません、記憶がよみがえってしまって……」


 そういえばそんな事になってたね、まあ十年前だしよく覚えてないわ、それに子供のする事だし仕方が無いでしょ。

 それに火を使うとその持続的な火の効果のせいで魔力が減りやすいだけだ。

 ふと後ろを伺うとアリアが若干引いているのか、こちらを見ながら顔を青くしている、何故だろう。

 フィル達もちょっと顔に影が落ちているのは解せない。


「よ、よくわかりませんね……」


 フィルが顔を引きつらせながら答える。

 案内役のエリオットも説明が難しいと思っているのか、私を使った説明は止めた。


「簡単に言いますと、数十回は剣での致命傷は防げます。残りの魔力が少なくなると覆っている魔力が赤くなるので分かるようになっています」


 初めからそう言ってよ。わざわざ私を引き合いにだすなと言いたい。

 もしかしてアロガンシアの貴族怖がらせようとしたけど、記憶が蘇って怖くなったとかじゃないよね。

 それなら少し分かるけど、そんなの分かりたくない。


「模擬戦をしてみたい、とのご要望があれば承りますがどうされますか?」


 そう言われたら受けざるを得ないよね。


「エカルラトゥ、頼む」


 まあそうなるよね、この為にエカルラトゥを連れてきたようなものだろうし。

 でも私だけやるのだろうかと周囲を見るが、なにやら意気消沈して模擬戦どころではないようだ。


「わかりました、では一番強い騎士をお願いします」


 やるなら一番を倒そうと口からぽろっと出てしまったが良いだろう。

 フィルがちょっと心配そうに見てくるが、普段のエカルラトゥでも負けないだろうし、どんとこいだ。


「ではこのエリオット・バイロン、王都騎士団副団長がお相手しましょう」


 生意気な若造の鼻っ面折ってやるぞ的な威圧を感じる。

 フィル達が、副団長が案内をしてくれていた事に驚いている、私もエリオットが副団長なのは知らなかった、最近は来てないしね。

 

 エリオットは模擬戦をしていた騎士達に声をかけて止める。

 全員が端へと移動し、剣を二振り持ったエリオットが中央に向かう。

 この訓練場は闘技場の様になっているので、観客席が一部設置されている。

 そこにはモデスティア王国の貴族達が座ってこちらを伺っている。

 これは瞬殺しちゃ駄目な雰囲気だ、私は空気が読めるから多少は魅せるように動こうと考えながらエリオットの方へと向かう。


「剣技のみでやるか、全てを使ってやるか決めようか」


 エリオットから凄い殺気を感じる。

 当然全てを使ってやった方が楽しそうだし、剣技のみだとちょっと地味になる。

 剣を貰い試し振りをしながら答える。


「では全てを使ってにしましょうか」


「凄い自信だな、アロガンシア王国は剣技に特化していると聞いていたが大丈夫なのか?」


 エリオットが案内役ゆえに、言葉使いを丁寧にしていたのか、先ほどとは違い言葉使いが荒くなる、本気でやるのだろう。


「最近は魔法にも力をいれていますし、魔法など当たらなければ良いだけです」


 エカルラトゥがいつも言っていた言葉を言ってみる。

 私からすれば、魔法が来たら全部吹き飛ばせばいい、だけど。


「そうか、では始めようか」


 剣を構え、エリオットと対峙する。

 副団長なのだし、あまりなめてかかるわけにはいかない。

 最初から闘気を纏うが、他の人とは違い自分の体の周りに炎が纏わりついていく。

 制御しなければ、これだけで終わらせられなくもない闘気の炎、異能と言って良いだろう。

 でもそれだけじゃ技量を試しあうのには不適切だと私でもわかる。


 妙な現象を前にエリオットの眉毛がぴくりと動く、エカルラトゥは恥ずかしい二つ名、暴虐の赤とか言われていたのだ。

 きっと情報も得ているだろうし、警戒もしているのだろう。

 エリオットの体の周りに魔力が纏われていくのを感じる。

 視覚上ではわからないが、魔力の流れが分かる人には感じられる。

 きっと闘気の炎対策なんだろう、いい加減打ち合うかとエリオットに突っ込む。


 こちらが斬りつけても、きっちり反応して綺麗に受け流してくる。

 数度打ち合った感じだと、怖い感じはしない。

 ナタリーとの模擬戦なら一瞬冷や汗が出る瞬間があるのだ、そんな怖さを感じない。

 きっと剣の技量だけならエカルラトゥと同じ程度なのだろう、ならば総合力はこちらが上だ。

 しばらく剣と剣で受け流し会い、時には打ち合う、どちらも決め手に欠けるような戦いになる。


 キリが良いタイミングで後に距離を取る。

 ここからは魔法攻撃ありになるという、合図みたいなものだ。

 この王道パターンは良い……見ている人に期待感を沸かせる。

 ちゃんと空気が読めているのかエリオットが動くのを待つ。

 エリオットが、こちらに近づかずに横に移動しながら剣を振る。

 剣の軌跡から、軌跡通りの風の刃がこちらに向かって飛んでくる。

 フェイントも無しで風の刃を放ってくる、いなしながら最小限で躱すが、エリオットは気にせずに、私を中心に回りながら風の刃で牽制してくる。


 逆回転したりしながら何度か私の周りを回っていたのだが、急にエリオットが消える。

 上だ、と思い見上げると、エリオットが空高くいるのを見つけた瞬間に、周囲から風の刃が襲い掛かってくる。

 魔法を私の周囲に仕掛けて、自分が飛び上がり囮にして、周囲に配置した風の刃で一気に倒すのが作戦だったのだろう。


 こうなっては避けるのは難しい、飛び上がっても風の魔法で押し込める予定だろうし。

 なら仕方が無い、風の刃を全部燃やす。

 自分を中心に炎の魔法をまき散らし風の刃を相殺させる。


「なにぃ!」


 結構な数の風の刃が処理されたことに驚き、エリオットが叫ぶ。

 

「が、まだ終わらん!」


 上空から落下してきたエリオットが風の圧を私に向けて放ちながら剣を構え襲ってくる。

 こちらも力押しで勝ってやろじゃないかと、炎で風を受け止め待ち構える。

 エリオットの剣に剣を合わせて力いっぱい振り切る。


 エリオットの剣が折れ、エリオットの体に剣が当たり、セーフティセクションの効果で肉を斬るまではいかなかったが、力は伝わり上空に吹き飛ばされる。


「ああぁぁぁ!」


 叫びながら上空へと消えていくエリオット。

 さすがに落ちてきたらどうなるのかよくわからないので、受け止めようとか剣を捨てて待っていると、観客席から魔法が放たれる。

 飛んでいくカーマインがビタッと止まり、ゆっくりと落ちてくる。

 エリオットが地面まで降りてくると、観客席から一人の男が降りてくきて、エリオットに回復魔法を使う。


「一瞬で魔力が削られると、赤くなる前に消えるのだから手加減をしてほしいな」


 私の叔父のカーマイン・スチュアートがいた。

 今は魔法士団の団長をしていたはずだが、見学に来たのだろう。

 見に来ているならもう少し早く知りたかったが、後の祭りだ。


「君は少し特殊なんだから、そこらへんを自覚して欲しいな」


 ニヤニヤしながら言う。魔法の師匠とは言え、こいつの昼行灯な態度は苦手と言えば苦手だ。

 実は腹黒いというのもすっきりしない、尊敬はしているが少し距離を置きたいとも思う。


「申し訳ない、こうも簡単に障壁が無くなるとは思いもしませんでしたので」


 嫌味を言っても許されるだろうと、言ってみる。


「まあここは訓練場だからね、これ以上は必要ないんだよ」


 確かにそうかもしれない。取りあえず模擬戦は終わった。

 エリオットに模擬戦のお礼をとおもい近づく。


「ひっ……」


 エリオットが小さく悲鳴を上げる。あっ、懐かしい感じがする。

 そういえば子供の頃にエリオットに近づくとよく同じような反応をしていた事を思い出す。

 会話出来ないエリオットに変わり、カーマインが答えてくれる。


「ああ、ちょっと彼は昔に炎で色々あってね、トラウマが蘇ったみたいだから、ごめんね模擬戦は終わりにしようか」


 そう言われると何も言えないので、軽く会釈をしてフィル達の待つ方へと戻る。


「やっぱお前は規格外だな……」


「さすが二つ名持ち、紅蓮の魔女に負けて無いよ」


 フィルの他にもエカルラトゥを褒め称えてくれる。

 少しだけだが嬉しい気分になっていると、体の横に衝撃が走る。


「さすがです!」


 アリアがタックルしながら抱きついてくる。

 フィル達の目が段々と座ってくるのがわかるが、これはスカーレットだから親密なんだと言いたいが言えない。

 アリア人気過ぎないだろうか、まあ名門貴族の女性騎士とか好物な人は多いのかも、かわいいし。


「ちょっとアリア離れなさい!」


「わかりました、後でですね」


「あとで時間を作るから大人しくしててね」


 小声でアリアに言うと、こくこくと頷き離れてくれた。

 溜息を吐きながら待っていると、エリオットではなく違う騎士がこちらにくる。


「申し訳ありませんが、エリオット副団長は少し席を外しますので、私が案内しますね」


 エリオットは別室に連れていかれ、その後戻ってくることは無かった。

 騎士団の見学が終わり、部屋に戻る。

 ここから夜までは自由時間だ。やっとゆっくりできるとソファーに座る。

 ナタリーがいたら、ここで紅茶が出てくるんだろうなと思っていると、アリアが水を出してくれる。


「ありがとうアリア」


「いえいえ一応侍女ですから」


 アリアも自分の分も用意してソファーに座る。私の隣にだ。


「スカーレット様、お願いがあるのですが……」


「魔力操作を教えるのだったね、でもアリアは結構上手いと思うけど」


 約束だし仕方が無いね、と思いながらアリアの入れてくれた水を飲む。


「いえ、それもなんですが……私と一緒に女性と男性の神秘を確認しませんか?」

 

 飲んでいた水を全部吹き出す。

 せき込みながら、アリアに向き直る。


「な、何言ってるの?」


「私はスカーレット様にザインでお会いして、どうやら好きになったみたいなのです」


「へ、へぇ……」


 会ったっていうか、見たという感じなんだが、しかもスカーレットとして会話したのは森林火事の時のちょっとだけだ。

 まあエカルラトゥだと思っていた時に、普通に会話していたが、それも原因の一つなのかもしれない。


「でもですね、女性同士というのも何か違うなって思うのです」


 私の横でもじもじしながら言うが、怖いんだけど……。

 クローディアとは違う変態さんなのかもしれない。


「そう悩んでいると、ここに解決策があるじゃないですか」


 アリアが私に指をさす。

 なるほど、、好きな人は女性、でも女性とは出来ない、でも男性には興味がある。

 ならば外見が男で中身が好きな女性ならいけると、どんな理論だ。


「私は騎士の身です、折角騎士になったのです、まだ結婚はしたくありません。でも性に対して興味が無いわけではありません。スカーレット様も男の体に興味がありますよね? 女同士ですしちょっとだけ味わってみましょう、もちろん墓まで持っていきますので、一回、一回だけ体験してみましょう!」


 アリアがにじり寄ってくる。

 クローディアとの事を思い出し背筋に悪寒が走る。

 女性同士もどうかと思うし、そもそも男としての快楽なんて体験したくないし、なによりも体験することが怖い。


「私が襲うのです、スカーレット様は数でも数えていたら、気持ちよくなって終わります!」


 そう言い放ちアリアが息を荒げながら、こちらのズボンに手を掛けてくる。


「ちょっと、駄目だって、私はそこに落ちたくないわよ!」


 くそっ、さすが女騎士、無駄に力が強いし身体能力も上げて脱がしにかかっている。

 ここは絶対に負けられない。なんとかアリアを引きはがさないと。


「少しだけですから、ほんとちょっとですから!」


「あ~もう! そういう事はエカルラトゥにしてよね!」


 エカルラトゥの名前を出すと、アリアがピタっと止まる。

 やがてゆっくりとズボンから手を放し、項垂れる。


「エカルラトゥの事も好きなんじゃないの?」


「そう言われると自信が無くなります……どうなんでしょうか」


「そこら辺を考え直して欲しいわね、エカルラトゥは結構むっつりスケベだから押せば行けると思うわよ」


 自分で言ってて酷い言い草だが、あいつなら押せばいけそうだ。

 大人しくなったアリアを見ていると、頭を下げてくる。


「すみません、この瞬間にものにしないとスカーレット様とは二度と会えない気がして、欲望が暴走してしまいました」


 ものにしないとって貴方ね、と言いたいが親友のクローディアも変態だし、若干この手の問題に慣れている自分が憎い。


「私の女友達は変態ばっかだな……」


「どなたか私みたいなのがいるのです?」


 アリアに元気が戻ってくるが、自重したままでいてほしい。


「クローディアって女の子好きがいるね」


「では私も友人にしてください!」


 その友人がクローディアみたいなのだと、ちょっと勘弁って感じだけど。

 まあアリアは嫌いじゃないし、結構腹を割って話せるし……襲われるのは勘弁だけど。


「もうなってるつもりだったけど、違った?」


「いえ! では改めてよろしくお願いします」


 アリアと握手を交わす。もしかして早まったかもしれないが、クローディアが親友の時点で終わっている。

 なんとかアリアに襲われる心配が無くなり、魔力操作の鍛錬方法などをアリアに教えていると舞踏会の時間になる。


 服を着替えてアリアと共に会場へと向かう。

 簡単に王女のアンジェリカが挨拶をして、次に聖女フレイヤが挨拶をする。


 私は一瞬目が点になる、何故かここに聖女フレイヤがいる? でもアロガンシア王国にもいた。

 影武者かと思い観察するが、顔も体形も完全に一致している。違うのはドレスだけだ。

 ここにいるフレイヤのドレスは真っ白だったが、アロガンシア王国にいるフレイヤのドレスは薄い青のラインが入っていた。

 どういう事だろう、またアロガンシア王国の策略なのだろうか……それともザインが何か考えているのだろうか。


 フレイヤの事を考えていると、結構な時間集中していたのかアリアが袖を引っ張ってくる。


「ぼーっとされてどうしたんですか?」


「……ちょっと考え事をね」


 取りあえずこの事は胸に納めて置こう。アリアに伝えたとしてアロガンシア王国の策だとしたら色々とまずい。

 しかし舞踏会が開始して幾分か時間が立っているのに、誰もダンスに誘わないのは失礼かもしれない。

 取りあえずめぼしい令嬢がいないか探すと、遠くでクローディアがこちらを見ている。

 他の令嬢より比較的楽だからクローディアと踊ろうと近づくと、まるで私の周りに壁がある様に人が避けていく。


 あれなんかこの感じ、スカーレットの時に良く味わっていた気がする……と、立ち止まっていると声が掛けられる。


「エカルラトゥ君、今日は自重したほうがいいよ」


 振り向くとカーマインが立っていた。

 声で誰がいるか知ってたけど、振り向かない訳にもいかない。


「君には酷な事なんだけど、私の姪と同じように怖がられているみたいだよ」


「え?」


「君の模擬戦を観戦していた貴族は多い、私の姪のスカーレットの様な戦い方に恐れを抱いてしまったようでね」


 まあ戦っていたのは私であるスカーレットなんで当たっているんだけど……解せない。


「それほどスカーレットは怖がられて……いるのですか?」


 怖がられているのは知っているが、やはり本人にはオブラートに包んでくれる人が多い。

 エカルラトゥで聞いてみるのも悪くないかもしれない、本人では知らない事を教えてくれるかもしれないし。


「そうだね、子供に「悪い子だとスカーレットが燃やしに来るぞ」って言うくらいには恐れられているね」


 マジか……そんな子供のしつけのような話になっているとは……。

 今度クローディアと相談して、私の話を吹き飛ばせる絵本でも作ろう。


「わかりました、今日の所は部屋で大人しくしておきます」


 カーマインがにっこりと笑うと、離れていく。

 まあ仕方が無い、アリアと帰ろうとしていると、また声がかかる。


「エカルラトゥ様、お帰りになるのでしたら、わたくしと一曲踊ってからお帰りになってください」


 そこにいたのは王女アンジェリカだった。


「良いのですか? 私のような者と踊れば悪評が立つかもしれませんよ」


「大丈夫ですわ、ホストがゲストを追い返したとあらば、わたくしたちにも悪評が立ちますわ」


「わかりました、一曲踊っていただけますか?」


「喜んで」


 アンジェリカが笑みを浮かべて返事をしてくれる。

 曲が一巡するまで踊り終わり、会釈をする。


「気を使っていただき、ありがとうございました、怖がられているのは慣れていますので、あまりお気を使わなくても大丈夫ですよ」


「スカーレット様と一緒にいるようでわたくしは楽しかったですわ」


 たしかに踊っている間、針の筵って感じで視線が刺さりまくった。

 アンジェリカがそう言うのだ、きっとエカルラトゥもスカーレットと同じ程度に恐れられたわけだ。

 ちょっとだけ笑みがこぼれる。


「では私はこれで戻ります」


 もう一度軽く会釈をしてアリアと共に自室へと帰る。 

 他人の体だと余計に気を使って疲れる。

 さっさと帰って眠りたいが、アリア対策はしてから寝たほうが無難だろう。

 きっともう襲ってはこないだろうが、絶対は無いのだから。

タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~


第十四話㋜ トラウマ(二日目) 終了です

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