表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~  作者: 氷見
第二章 紅蓮の魔女は木魔法が使いたい
12/28

第十一話㋜ 念願の木魔法

 目が覚めると、キャンベル家の客間が見える。

 どうやら自分の体に戻ったらしい。

 体に違和感があるが、どうにか身を起こすとナタリーの声が聞こえる。


「おはようございます、お嬢様」


 いつも通りに挨拶してくれる。

 ベッドから起き上がり、軽く柔軟をしているとナタリーが報告してくる。


「お嬢様は三日間お眠りになっていましたよ」


「マジで? でもまあそうかありえないほど魔力使ったものね……」


「やはりあれはお嬢様の魔法だったのですね」


「見てたの?」


「はい、タイミング良くここらを見渡せる丘にいましたので」


 なるほど、それで魔法が広がるのを見ていたわけか。


「エカルラトゥはどうしてたの?」


 そう聞くとナタリーが物憂げな顔をして答える。


「その少し前にクローディア様に精神の入れ替わりがばれてました……」


「え、ばれたの? なんでまた」


「木魔法を使われたので、それで何か隠していると疑われ、結局話してしまいました」


 まあばれるのは良いのだけど、その後が問題よね。


「それで、クローディアにおもちゃにされなかったの?」


 ナタリーは表情を変えなかったが、少しだけ頬が火照った状態で続きを話す。


「それは念入りにおもちゃにされていました」


 他人事だと凄く面白いのだけど、おもちゃにされたのは私の体だ。

 でも記憶は無いから、まあ犬にでも噛まれたと思ってこの件は忘れよう。


「……まあいいわ、記憶ないから忘れましょ」


「……そうですね」


 意味ありげに返答をするナタリーに軽く疑問を覚えるがまあいいか。

 まずは着替えて何か食べよう、お腹がすいている。


「いまは朝よね?」


「はい、そろそろ朝食のお時間ですが、消化に良い物を用意してもらいましょう」


「そうね、いきなり食べても入らなそうだし」


 私の返答を聞くとナタリーは部屋を出ていく。

 しばらく待っていると、クローディアが部屋に入ってくる。


「あ~目が覚めたんだ、今はスカーレットちゃんなの?」


「そうよ、あいつはもういないわよ」


「そっか~それであの木魔法はスカーレットちゃんがやったの?」


「エカルラトゥの体で私が木魔法使ったわね」


「体が違えば木魔法が使えるのか……でもこんな特殊な例を記載する意味はないね」


「そうしてくれるとありがたいわ」


 キャンベル家の魔導書に変な文が記載されるのは勘弁して欲しい。

 クローディアが腕を組みながら考え込んでいる。


「どうしたの?」


「いやね、あれだけの魔法を使ったスカーレットちゃんが、今の体に戻ったとして、まだ木魔法使えないのか使えるのか疑問が浮かんじゃって……」


「そう言われると、私もどうなるか気になるわね、試してみようかな」


 そう言いながら、練習用に置いていた木の枝を持ち、活性化させてみる。

 出来たなかった時にやっていたように、最大出力の魔力で木の枝へと練りこんでいくと眩い緑の光が部屋を包み込みこむ。

 その光と共に木の枝が活性化すると、凄い勢いで枝がでかくなり、それは部屋の壁を押し壊すほど巨大に成長する。


「ちょーっとストップストップ、スカーレットちゃん止めて!」


 光が眩しかったせいで目を瞑っていたので気づかなかったが、クローディアに言われ魔力を流すのを止めて周囲を見ると、木の枝が成長しすぎて部屋を壊していた。


「……使えるわね」


「使えるわね、じゃなーい! 私の実家に何てことしてくれてるの!」


「まあそこはお互い様じゃない? 私の体をおもちゃにしたんだしお相子よ」


「どう考えてもお相子になってないよこれ……」


 壊れた壁と家具を見ながらクローディアが半泣きになる。

 でも今の私なら治せるんじゃないかと、魔法を使ってみる。

 壁は石だし、家具も木だ、なんとか出来るならエカルラトゥの鏡台も治せるだろう。


 そう思いながら魔法を使うと壁は修復出来たが、木の家具は直らなかった。

 家具を直せる魔法を組み直さないと無理そうだ。


「ごめん家具は無理だった」


「いや、まあ部屋が戻ったから良いよ……相変わらず何でもできるよね」


 クローディアが呆れながらそんな事を言う。

 何でも出来るように勉強しているのだ、そりゃ何でも出来るようになる。

 そうこうしている間に、ナタリーが異変を感じたのか部屋に恐る恐る入ってくる。


「お嬢様……お食事の用意が出来ましたが何かあったのですか?」


「いやただ私が木魔法使えるようになっただけよ」


「え、出来るようになられたのですか?」


「ええ、多分エカルラトゥの体で森を癒したのが起因して出来るようになったみたい、きっと木の精霊のお許しがでたのよ」


「おめでとうございます、よかったですねお嬢様」


「頑張ったかいがあったわ」


 ここまで来て色々勉強しても出来なかった木魔法が使えたのだ。否応なく嬉しい。

 もうここに用は無いわね、さっさと帰って木魔法の本でも纏めたい。


「とりあえずお腹すいたわ、朝食を食べましょう」


「そうだね」


 三人で朝食をぱぱっと取ると足早に客間に戻る。


「お嬢様、あの山火事はどうなったのですか?」


 ナタリーが疑問を投げかけてくる。

 それもそうか、ナタリーからするとただ火事を見ていただけだしね。


「あーあれはねアロガンシア王国のどっかの馬鹿が放火してたっぽいのよ」


 それを聞いたナタリーとクローディアが首を傾げる。


「自国の森焼いて何か意味あるの? もしかして開拓かなにかで森焼いたとか?」


 そう考えるよね、手っ取り早く開拓するなら森を焼くのもありだと思うけど、やっぱり木は資源になるものね今後は止めよう。焼いて開拓なんてやっちゃダメだわ。


「推測なんだけど、あれを私のせいにしようって腹なんじゃないかって」


「「あ~」」


 二人が綺麗にハモりやがった。軽く二人に殺意が沸く。


「ちょっと納得しないでくれる?」


「いやスカーレットちゃんらしいし……自業自得とも言えるし」


「そりゃね、私は色々燃やしてきたけども、わざわざ他国の森は焼かないわよ」


「でもスカーレットちゃんを知ってる人ほど、納得はしそうだよ?」


「……」


 ぐうの音も出ないのが悔しい。

 こんな変な方法で私に汚名を着せるのが成功しそうなのが許せないわ。

 まあ終わった事だし、阻止も出来たし円満解決だ、目的の木魔法も使えるようになったし気にしたら負けだ。


「ふぅ……じゃあもう帰りましょうかナタリー」


「わかりました、準備をいたしますね」

 

 そう言うと手早く荷物を纏める。


「え~もう帰っちゃうの?」


「そうよ、あまりここにいるとアロガンシア王国の駒になりかねないし、さっさと帰るわ」


「あ~それもそうね、じゃあ一緒に帰りましょうか」


 ここにいると何を私のせいにされるか分かったもんじゃない。

 逃げるが勝ちだわ、あとはエカルラトゥとジェレミーとアリアが何とかするでしょ。


 キャンベル家の人達に挨拶をすると、クローディアと共に王都へと帰る。

 なんだかんだで結構滞在してしまった、後でお礼の品でもキャンベル家に送っておこう。






 いつものごとく王都の邸宅で父とティータイムをしていると、アロガンシア王国の事を教えてくれる。


「ちょっと前にだが、アロガンシア王国で内乱騒ぎがあったみたいだ」


「内乱ですか……自国の森を焼いたとかですか?」


 私のせいにされそうになった件だ、いやでも聞きたくなる。


「ああ、その情報も上がって来たのだが、誤報だったみたいでな、結局第二王子が自分の派閥の貴族から兵を集めるだけ集めて、戦闘はしないで解散しただけだった」


「わざわざ集めただけなのですか、それだけでかなりの出費になりそうですね」 


「そうなんだよ、こちらも意味が分からなくてね、謀反を起こそうとして止めた、という結論にしかたどり着かなくてね」


「なんというか、完全にヘタレですね」

 

 始めたんなら最後までやれよとも思うが、やられても困るか。


「まあ分かる範囲での推測だからね、でも第二王子のギデオンは王都に戻り拘束されているのは事実みたいだが」


 くだらない事を考えていたのはギデオンなのだろう。私を嵌めようとして森を焼いた極悪人。

 マジでギデオンだけは私が直々に燃やしに行きたい気分だ。

 しかし木魔法を覚えにいったのが原因で、私が悪人になりそうになり、木魔法を覚えたお陰でそれを回避出来た。

 なにこの運のプラスマイナスゼロな感じ。まあ木魔法使えるようになったのだ、良しとしよう。


「こちらに何か言ってきてはいないのですか?」


「今の所は何も無いが、宗教国家ザインから何やら話が来ているらしくてね」


 ここで宗教が絡んでくるのか、正直あまり関わり合いたくないのだけど、そうもいかないのだろう。

 一呼吸置いて、紅茶を飲み喉を潤す。

 まずは落ち着いてから考えよう。


「ザインはあまり国と関わり合いにならないと思っていましたが、何かあるのですか?」


「ああ、元聖女がアロガンシア王国に嫁いでいるのは有名な話だからな、もしかしたらアロガンシア王国に肩入れしている可能性が少しある」


「少し……ですか?」


「聖女はあくまでも神輿にすぎなくてな、十歳から二十歳までの間だけ聖女として代表を務めるだけなんだ、実際は元老院が取り決めを行っている」


「その聖女が原因でアロガンシア王国に与しているかもしれない、と?」


「考えにくいが可能性の一つとして議題には上がっているね、スカーレットもザイン関係には気を付けてね」


「わかりました」


 それが事実ならまた一悶着ありそうな感じだ。

 私に平和は訪れないのだろうか、もっと静かに生きられないのだろうか。

 どうせまためんどくさい感じになったらエカルラトゥと精神の入れ替えが起こるのだろう。

 精神入れ替わりが起こるのは、いつもそんなタイミングで起きている。

 いい加減にしてほしいが、そうも言ってられないのも事実だ、ほんと悩ましい問題だ。

 取りあえず何か起きるまでは平和に過ごそうと思う。

タイミング良く精神が入れ替わる私~公爵令嬢スカーレット編~


第十一話㋜ 念願の木魔法 終了です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ