5.純愛プリンセス II
それから。
あたしたちはソファに並んで座って、ルイス隊長のことを語り合った。
あたしが死にかけていたところを、助けてくれたこと。
無鉄砲だけど、とにかく優しくて、敵も味方も関係なく助けようとしていたこと。
隊のみんなと兄弟みたいに、家族みたいに仲が良かったこと。
敵から襲撃を受けた時の統率力・戦闘力に、驚かされたこと。
そして。
「あたしを隊から離脱させる時に、わざと突き放すような演技をしていたんですけど……今思うと不自然すぎて、ほんと笑っちゃうんですよ」
「わかります。あの人、昔から隠し事とかできない性格だから…ふふふ」
あたしの話を、ルニアーナ姫はキラキラした目で夢中で聞き入って、楽しそうに笑っていた。
本当に……好きなんだ。隊長のことが。
そのことが、表情からひしひしと伝わる。
なんで、会えないんだろう。どうして、禁じられているのだろう。
こんなに純粋に、あの人のことを想っているのに。
…………会わせてあげたい。
そう思ったところで、あたしにそんな力はないんだけれどね。
なんて、頭の隅っこで考えていると、
「ところで……フェレンティーナさんは」
「?」
ルニアーナ王女が、少しあらたまった様子でこちらを見てきて。
「その………クロードとは、どのようなお付き合いをされているのですか?」
「…………へっ?」
あ、あたしの話…?!
ていうかお姫様、あたしとクロさんの関係もご存知なの?
あの人は……一体、どこまで話をしているんだ?そもそもお姫様とは、どういう間柄なのか……
「ど、どのような、と言いますと…?」
「ですから、例えば……」
ごくっ。と喉を鳴らし。
ルニアーナ姫は、目をぎゅっと瞑ってから、あたしの耳に口を近付けて、
「………てっ、手を繋ぐなどは…もう、されたのですか…?」
そう、囁くように聞いてきて。
「……………ッ」
な…な……な……
なにそのピュアな質問ーーーッ!!
手を繋ぐどころじゃないよ!もう粘膜で接触しちゃってるよ!ぺろぺろちゅっちゅしちゃっていますごめんなさい!!
あああ……なんだか自分がものすごく汚い存在に思えてくる。
この人は、手を繋ぐことすら夢見ているのに。
あたしときたら、ちょっとイチャイチャできないくらいで機嫌悪くして……
と、恥ずかしさと自己嫌悪で頭から湯気を出すあたしに、ルニアーナ姫が「だ、大丈夫ですか?!」と声をかけた…
その時。
「あれ。レンちゃん、こんなところにいたの」
ノックの返事も待たずにドアを開け、姫君の部屋へ入ってきたのは、
「く、クロさん…」
「あ、クロード!お久しぶりです」
会議を終えたらしい、その人であった。
ルニアーナ姫が立ち上がり、嬉しそうに歩み寄る。そんな彼女に、クロさんは手に持っていた紙の束を差し出して、
「はいコレ。ルナの分の新しい資料」
「ルナぁ?!」
その聞き捨てならない呼び方に、あたしは立ち上がって詰め寄る。
「あなたって人は…いくらなんでも一国のお姫様を呼び捨てにするなんて……!!」
「ああ、いいのですよ」
うるさそうに耳を押さえるクロさんの横で、ルニアーナ姫が手を振って、
「クロードは、私の魔法の先生なのです。ね?」
「そーそー」
ま、魔法の先生…?
確かに手渡している書類は、クロさんが魔法学院の講義のために作成した資料だが……
首を傾げていると、ルニアーナ姫はそっと、あたしの手を取って、
「フェレンティーナさん、今日はありがとうございました。たくさんお話ができて、本当に楽しかったです。またここへ…遊びに来てくださいますか?」
なんて、同性のあたしですら惚れてしまいそうな、可愛らしい笑顔で言うものだから。
あたしもきゅっと、その手を握り返して、
「もちろんです!いつでも呼んでください!!」
力一杯、頷いた。
それからルニアーナ姫は、少しはにかみながら、
「フェレンティーナさんも、私のことを『ルナ』って呼んでくださると嬉しいです。私も……『フェルさん』とお呼びしても、よろしいですか?」
「はい!ぜひ!!」
そう言って、笑い合うと。
「あらあら。フェレンティーナさん、取られちゃいましたね」
「うるさい」
横でベアトリーチェさんとクロさんがそんなことを言うのを聞いて。
あたしと彼女…ルナさんは、声を出して笑った。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
第1章はこれにて終了です。次回より第2章 魔法学院編が始まります。
今作の核となる人物が登場しますので、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。
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