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黒猫王子はメイドと踊る  作者: 河津田 眞紀
第1章 ロガンス城
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5.純愛プリンセス II

 



 それから。


 あたしたちはソファに並んで座って、ルイス隊長のことを語り合った。


 あたしが死にかけていたところを、助けてくれたこと。

 無鉄砲だけど、とにかく優しくて、敵も味方も関係なく助けようとしていたこと。

 隊のみんなと兄弟みたいに、家族みたいに仲が良かったこと。

 敵から襲撃を受けた時の統率力・戦闘力に、驚かされたこと。

 そして。



「あたしを隊から離脱させる時に、わざと突き放すような演技をしていたんですけど……今思うと不自然すぎて、ほんと笑っちゃうんですよ」

「わかります。あの人、昔から隠し事とかできない性格だから…ふふふ」



 あたしの話を、ルニアーナ姫はキラキラした目で夢中で聞き入って、楽しそうに笑っていた。

 本当に……好きなんだ。隊長のことが。

 そのことが、表情からひしひしと伝わる。


 なんで、会えないんだろう。どうして、禁じられているのだろう。

 こんなに純粋に、あの人のことを想っているのに。


 …………会わせてあげたい。


 そう思ったところで、あたしにそんな力はないんだけれどね。

 なんて、頭の隅っこで考えていると、


「ところで……フェレンティーナさんは」

「?」


 ルニアーナ王女が、少しあらたまった様子でこちらを見てきて。


「その………クロードとは、どのようなお付き合いをされているのですか?」

「…………へっ?」


 あ、あたしの話…?!

 ていうかお姫様、あたしとクロさんの関係もご存知なの?

 あの人は……一体、どこまで話をしているんだ?そもそもお姫様とは、どういう間柄なのか……


「ど、どのような、と言いますと…?」

「ですから、例えば……」


 ごくっ。と喉を鳴らし。

 ルニアーナ姫は、目をぎゅっと瞑ってから、あたしの耳に口を近付けて、



「………てっ、手を繋ぐなどは…もう、されたのですか…?」



 そう、囁くように聞いてきて。


「……………ッ」


 な…な……な……

 なにそのピュアな質問ーーーッ!!


 手を繋ぐどころじゃないよ!もう粘膜で接触しちゃってるよ!ぺろぺろちゅっちゅしちゃっていますごめんなさい!!

 あああ……なんだか自分がものすごく汚い存在に思えてくる。

 この人は、手を繋ぐことすら夢見ているのに。

 あたしときたら、ちょっとイチャイチャできないくらいで機嫌悪くして……


 と、恥ずかしさと自己嫌悪で頭から湯気を出すあたしに、ルニアーナ姫が「だ、大丈夫ですか?!」と声をかけた…

 その時。



「あれ。レンちゃん、こんなところにいたの」



 ノックの返事も待たずにドアを開け、姫君の部屋へ入ってきたのは、


「く、クロさん…」

「あ、クロード!お久しぶりです」


 会議を終えたらしい、その人であった。

 ルニアーナ姫が立ち上がり、嬉しそうに歩み寄る。そんな彼女に、クロさんは手に持っていた紙の束を差し出して、


「はいコレ。ルナの分の新しい資料」

「ルナぁ?!」


 その聞き捨てならない呼び方に、あたしは立ち上がって詰め寄る。


「あなたって人は…いくらなんでも一国のお姫様を呼び捨てにするなんて……!!」

「ああ、いいのですよ」


 うるさそうに耳を押さえるクロさんの横で、ルニアーナ姫が手を振って、


「クロードは、私の魔法の先生なのです。ね?」

「そーそー」


 ま、魔法の先生…?

 確かに手渡している書類は、クロさんが魔法学院の講義のために作成した資料だが……

 首を傾げていると、ルニアーナ姫はそっと、あたしの手を取って、


「フェレンティーナさん、今日はありがとうございました。たくさんお話ができて、本当に楽しかったです。またここへ…遊びに来てくださいますか?」


 なんて、同性のあたしですら惚れてしまいそうな、可愛らしい笑顔で言うものだから。

 あたしもきゅっと、その手を握り返して、


「もちろんです!いつでも呼んでください!!」


 力一杯、頷いた。

 それからルニアーナ姫は、少しはにかみながら、


「フェレンティーナさんも、私のことを『ルナ』って呼んでくださると嬉しいです。私も……『フェルさん』とお呼びしても、よろしいですか?」

「はい!ぜひ!!」


 そう言って、笑い合うと。


「あらあら。フェレンティーナさん、取られちゃいましたね」

「うるさい」


 横でベアトリーチェさんとクロさんがそんなことを言うのを聞いて。

 あたしと彼女…ルナさんは、声を出して笑った。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

第1章はこれにて終了です。次回より第2章 魔法学院編が始まります。

今作の核となる人物が登場しますので、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。


また、下の方にある「勝手にランキング」もポチッとしていただけると大変励みになります。よろしくお願い致します。

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