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黒猫王子はメイドと踊る  作者: 河津田 眞紀
第6章 祭りのあと
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2.おねだりノックアウト

 



 閉じ込められた、布団の中で。




「……んふ…っ、は……ぁ…っ」



 逃げ場を失った水音と。

 熱を帯びた吐息が篭り。

 耳のあたりに纏わり付いて。


 もっと、もっと、と。急き立てるようで。



 久しぶりに触れたソレは。

 嗚呼、こんなにも柔らかく、艶かしい感触だったっけ。なんて。

 まるで初めてした時のように、あたしの脳をとろとろに溶かした。



 ずっとずっと、欲しかった。

 だから、はしたないくらいに舌を絡ませた。


 けど、あたし以上に。


 クロさんが、貪るように、噛み付くように、深く深くあたしを求めてくる。

 本当に食べられてしまうんじゃないかというくらいに激しく、口内を犯されて。

 何も見えない布団の中は、彼の匂いでいっぱいで。


 このままではクロさんのことしか考えられない、馬鹿な女になってしまいそうで。

 少し、怖くなる。




「………はぁ…っ…」



 くちゅ、という音と共に、クロさんの切なげな吐息が漏れ。



「……久しぶりにしたね…フェレンティーナ」



 一度離れた唇の、その合間で。

 初めて愛称ではない名前を呼ばれて。

 胸の奥が、きゅうっとなる。


 それから彼は、あたしの頬に優しく手を添えると



「君……いつの間に、ちゃんと魔法使えるようになったの?びっくりしたよ」


 内緒話をするように、声を潜めてそう尋ねる。


「治すだけじゃなくて、攻撃としても力を制御できるだなんて……すごいじゃん。練習でもしたの?」

「……ルナさんと一緒に、特訓していたんです。ルナさんを、隊長と会わせたくて…」


 そこまで言いかけて。

 あたしは彼のシャツの胸元を、ぎゅっと握りしめる。


「……うそ。本当は…」


 くらくらする頭で、少しだけ声を震わせて。



「…クロさんに、認めてほしかったから……褒めてほしかったからなんです」



 醜い胸の内を晒す。

 そう。誰かのため、なんて嘘。

 本当は、自分のため。

 アリーシャさんに、張り合うため。


 欲に塗れた、愚かな女だと思われただろうと、覚悟した。

 しかし、彼は、


「……そう。それじゃあ」


 毛布を被ったまま、あたしの上に乗ると。

 額に、ちゅっと唇を押し付けて。




「いっぱいいっぱい、ご褒美あげなくちゃね」




 瞼に、頬に、唇に。

 順番こに、キスを降らせた。

 彼の唇が触れる度に、嬉しくて、切なくて。

 胸が締め付けられるようで、涙まで浮かんでくる。



「…偉いね。いい子。よく頑張ったね」



 甘く甘く、囁きながら。

 自分のものだと印を付けるように、顔中隙間なく口づけをされる。

 それが終わったかと思うと、彼の唇はあたしの首筋、そして鎖骨へと移動し。


「……あ…っ…」


 着ていたドレスの胸元を、ぐいっと下ろされ。

 下着の上から、胸の膨らみに触れられる。



「頑張ったいい子には……もっと気持ちイイこと、してあげようか」



 やわやわとそれを揉む彼の手に、届いてしまうんじゃないかというくらいに高鳴る鼓動。


「でも……上手におねだりできたら、もっと"いい子"なんだけどなぁ…」


 暗くて見えなくても、わかる。

 彼が、意地悪な顔をして笑っていることが。



「………できる?フェレンティーナ」



 そう、言われて。


 ああ、駄目だ。

 あたし、もう馬鹿になっている。

 恥とか、プライドとか、そういうの、もういらない。


 ただただ従順な、クロさんのモノでありたい。



「……ください」


 こくんっ、と喉を鳴らしながら。




「もっと……もっと、きもちいいこと、してください…っ」




 懇願する自分の声が、思ったよりもいやらしくて。

 それにまた、身体がビクビクと震える。


 息遣いから、彼が嬉しそうに笑ったことが伺えるが。



「……よくできました」



 その声は、どこか余裕がなくて。


 両手で、左右の胸を真ん中へ寄せるようにして包まれたかと思うと。

 その谷間に、彼は顔をゆっくりと近付け……


「…………………っ」


 そのまま、むにゅっと顔を押しつけるように倒れこんできて。

 それから……




「……………………」




 それから。


 彼は、動かなかった。




「………クロ、さん…?」



 恐る恐る、声をかける。

 が、反応がない。


 ………まさか。




 がばっ、と布団を捲り、あたしの胸に顔を埋めるクロさんを確認すると。


 その顔から、完全に血の気が引いていた。



「ちょ…クロさん!クロさん?!大丈夫ですか?!」


 起き上がり、彼に呼びかける。

 すると彼はうっすらと目を開け、



「……血が足りないのに…興奮しちゃったから………アッチに血液持ってかれて、頭くらっときちゃった…」



 と、言っていることは最低なのに、薄幸の美少年のような儚げな表情をして(のたま)うので。



「………もう!馬鹿っ!!」


 彼を布団に突き飛ばし、胸元を直しながらベッドを降りてやった。


「回復するまで!絶対安静!!いいですね!!!」

「………はい」


 ピシャリと言うあたしに、おとなしく返事をするクロさん。

 まったく…この人ときたら……!!


 目を吊り上げるあたしを尻目に、クロさんは残念そうにため息をつきつつベッドへ潜り込み、


「はぁ…やっとレンちゃんのおっぱい揉めると思ったのに」

「おっ……!だから、なんで今日、このタイミングなんですか?!今まで全然構ってくれなかったくせに!!」

「………我慢していたからだよ」

「それですよ、わからないのは。一体、なんの我慢なんですか?」

「してた、っていうか、させられてたの」

「…………は?」


 我慢、させられていた?

 あたしと…イチャイチャするのを?


「……誰が、なんのために…?」


 そんな馬鹿なこと……

 と、口を尖らせる彼を問いただそうとした、直後。



 コンコン、と部屋をノックする音がして。



「おーい、入るぞー。って、フェルもいたのか」


 腕に包帯を巻いたルイス隊長が、医務室に入ってきた。

 先ほどまで一緒だったルナさんは、今はいないようだ。


「隊長!怪我は、大丈夫でしたか?」

「ああ。クロに比べりゃかすり傷みたいなモンだ。で?クロはコレ、起きてんの?」

「起きていますが……ちょっと、拗ねています」

「……なんで?」


 隊長が入ってきた途端にゴロンとあちらを向いてしまったクロさんを見ながら、あたしは苦笑いする。


「まぁいいや。クロ、歩けるか?国王がお呼びだぞ。……例の件で」


 例の、件?

 その言葉に反応するかのように。


「…………」


 クロさんは、虫の居所が悪い猫のような、ムスッとした顔をしてこちらを向いた。


「フェル、お前も来い」

「へ?あたしも、ですか?」


 言われて、あたしは自分を指差す。隊長は頷くと、



「ああ。むしろ、お前に関わりのある話だ」



 なんてことを言ってきて。



 ますます頭の中が疑問でいっぱいになりつつも。

 あたしは、隊長とクロさんの後ろをついて、国王陛下の元へと向かった。


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