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今日から学校と仕事、始まります。①莞

パイにかけたら

作者: 孤独

「いいや、0だよ!!瀬戸!」

「違います!2です!!松代さん!」


ここは今泉ゲーム会社。

クリエイター共が、熱く己の意見をぶつける。

溜まった仕事に手も、頭も集中しながら、口だけで語り合う自論。

余裕と自信、それ故のトークがここにはある。

0か、2か。その議題は……


π(パイ)に0を×(かけて)こそ、”おっぱい”と呼ぶだろうが!!”0π(パイ)”=”おっぱい”、シンプルこそ究極!」

π(パイ)に2を×(かけて)こそ、”おっぱい”と呼びます!おっぱいは2つしかない事実!その至高と噛み合った”2π(パイ)”こそ、”おっぱい”と呼びます!!」


…………そんなトークに激怒する声があるのも当然だ。


「なんの話しをしてんだテメェ等!!くだらねぇ、小学生か!?」

「おう、三矢!お前はどっちだ!?」

「パイが2つあってこそ、おっぱいでしょ!!」

「馬鹿だろ!お前等、馬鹿だろ!!」


こー。……馬鹿と天才は紙一重と言いたい連中の集まりがここ。

松代宗司と瀬戸博は、いつもこんな感じの気分屋にして、変態で、馬鹿なデザイナーである。

管理職かつ常識人な三矢正明は、彼等に振り回されている日常。しかし、今日はグレードアップされることとなる。


「早くやれ」

「やってるだろ」


それに嘘をつけとは言えないのが、三矢の苦しいところ。

現に松代と瀬戸は超高速でペンタブやペイントソフトを操作し、次々に注文されているグラフィックを作り上げている。初めからやれよ。モチベーションに左右されすぎな2人だ。

そんな2人の助っ人にして、三矢にとってはこの場の馬鹿具合を更に荒らす存在がいることを、ある意味恐れていた。今のトークを聞いてないわけがない。


「ふっ、0π(パイ)がおっぱいと呼ぶか。2π(パイ)がおっぱいと呼ぶか。ふふふ、それだけかしら?」

「あんたは少しは女性らしい反応しろ。酉さん」


酉麗子。

このゲーム会社の実質のナンバー1であり、実権を握っている実力者かつお偉い人である。


「酉さんがデザインやってるの、久々に見ました。スピードもありますね」

「瀬戸、酉さんはすげーんだぜ。プログラムも営業も、企画も、なんでもこなすんだぜ」

「三矢くん。あなたには私達クリエイターの気持ちは分からないでしょうね。あなたは確かに仕事してるけど、隣で別の仕事をしてたら、空気が重くなるものよ」

「あんた達の馬鹿トークにツッコむ俺の苦労も知ってくれ。助っ人してぇのか、邪魔してぇのか?」


生真面目な返しの三矢に


「人に喜んでもらうのを提供するのなら、私達も楽しんで作るのが義務じゃなくて?」

「……あんたと口喧嘩じゃ勝ち目ねぇな。ただ、騒ぎすぎるなよ」


酉の当たり前の言葉に何もでない。


「話し戻すけど、”0π(パイ)”か、”2π(パイ)”か。どっちが”おっぱい”と呼ぶかなんて、愚問よ」

「どーいう話の戻し方してんだ!?」

「私はその疑問にこう、答えるわ」


ゴクリ……。

松代と瀬戸は息を呑む。

一体どんなものを×(かける)というのか。いや、ナニをかけられるというのか。

酉さんが言うんだから、すげー気になる。


「何を考えとるんだ、お前等!!」

「俺達の心を読むな、三矢」

「ムラムラしてるのバレるじゃん」


酉の答えは


「”π(パイ)”……それこそが、”おっぱい”よ。”おっぱい”と呼ぶのよ」

「な、なにーー!?あえて何も×(かけ)ない!?一体どうしてですか!?」


当然の疑問。……いや、その回答になんの意味があると、三矢は思うが、松代も瀬戸も真剣である。


π(パイ)は円周率の意味。数字で表せば、3.14が一般的ね」

「そうなのか?」

π(パイ)ってそーいう意味だったの!?」

「お前等は小学生からやり直せ!!パイって記号だけしか覚えてねぇのか!?」


変態はパイしか覚えないものだ。


「そう。3って数字。この3を上から覗いてみると、”おっぱい”に見えるでしょ!ふくよかな曲線に点を付けたし、”おっぱい”ってやったでしょ!!子供の頃!みんなやったでしょ!?」

「確かに僕!それやってます!!3に点をつけて、”おっぱい”って!!π(パイ)という記号だけで、”おっぱい”を表していたのか!!」

「しかも、ご丁寧に”3”、”.”って、並ぶんですから!!3に点を付けろって意味で、もうすでに”おっぱい”なのよ。この記号定数は!」

「酉さん、発言を撤回するなら今の内ですよ」


綺麗な人なんだが、こーいう馬鹿トークになると女らしさ0なのが残念に思う三矢である。

酉の意見に瀬戸は多いに共感するのであるが、松代は少し考えた顔をして、言葉を出した。


「いや、酉さん。確かに3がおっぱいに近いというのは分かるぜ」

「松代さん、その発言もおかしい。3がどーしてそう見える?」

「だけど、俺は3という数字がお尻とも思っている。それを基本として、3の中央の部位に毛を描き、少し削り、○○器って落書きしてた思い出の方が多い」

「僕もそれやったことあるよ、松代さん!3はお尻かもしれないね!」

「いや、酉さんに、……女に何言ってんだ、あんたー!?」


相手が酉じゃなかったら、間違いなく退かれる。

松代、強気のど変態な意見に


「私は3の中央の部位に玉を描いて、○○器ってやった事あるわ」

「あんたもなんつー返ししてんだ!?」

「確かにπ(パイ)は色んな可能性があるわね。今度、みんなの意見を聞いてみましょう」


ホントにこの人、女の自覚あんのか!?



◇       ◇




「あー……疲れた」


仕事は大半片付いたわけだが……。


「ねー、三矢くん」

「なんすか?」

π(パイ)って記号の形って、女性が股を拡げているように見えるのは気のせいかしら?」

「まだ続くんかい!?」


仕事じゃないからって、ここでさらにトークを深め始める。

松代もやってきて、


「いやいや、酉さん。俺はπって記号は、胸の谷間だと思うんだ。だからこそ、パイと呼ばれるんだ」

「あーそれもあるわね。ごめん、私、下半身の事ばかり思ってた。上と思わせて下だと思ってたけど、上と思わせて、上なのね」

「あんた等で解決すんのかよ!?俺に話した意味は!?」


まったく持ってその通り。

まぁ、ツッコミ役がいないとダメなわけだが、


「三矢ー。お前は何派なんだよ?」

「はい?」

「”0π(パイ)”か”π(パイ)”か”2π(パイ)”か。一体どれなんだ?どれが”おっぱい”と読める?」


それを答える必要性はあるのだろうか?

しかし、子供の頃を振り返ったかのようなトークだった。三矢もこっそりとした感じで、答えを出す。


π(パイ) ×(かける) π(パイ)分の1 ×(かける)0.81……で」

「俺に算数を要求するな。その答えは一体なんなんだ?」

「けど、三矢くんも。必死に”おっぱい”になる計算を考えていたのね。なかなかならないから、そーなるのよねー」

「うるさいっすよ!」




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