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霊感体質な僕と束縛気質な彼女  作者: 節トキ
【大学一年生 四月】
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歩きスマホにご用心(三)


 僕と同時に、生首女までもがヒッ、と声にならない声を漏らす。


 コ、コラ、毛布の中に隠れるんじゃない!

 ずるいぞ! 元はといえば、お前のせいじゃないか!



 ゆらぁりと近付いてくるハルカの恐ろしさといったら、まさに恐怖の権化。恐怖の宝石箱。恐怖の詰め合わせバリューセット。



 彼女に比べれば、頭部取り外し可能、毛髪自在可動の女幽霊など可愛いものだ。



 僕は死に物狂いで首を横に振り、噛み合わない歯を叱咤して半泣きで訴えた。



「だだだ誰も何も、し、知らない人です! かかか、勝手に入ってきたんです! おおお起きたら、ここっ、こ、こんなことに……!!」



 するとハルカはおもむろに、僕に乗っかっていた女の両足首部分をガシリと掴んだ。



「てんめえぇぇぇ……あたしの可愛いリョウくんに、夜這いかけやがったのかぁぁぁ……? 人様のものに手出しするたぁ根性腐ってやがんなぁ、オイィィィ……。自分の方が、リョウくんに相応しいとでも思ってんのかぁぁぁ……? なら望み通り、その勝負、受けて立ってやんよぉぉぉ…………塵芥分子レベルにまで粉砕して、全世界全宇宙からてめえの存在、きれいさっぱり抹消してくれるわぁぁぁあああ!!」



 クレッシェンドで吠え様、彼女は女の足を力任せにベッドから引きずり倒した。



 あ、下半身だけだったのか。そりゃスカートより上が見えないはずだ。


 頭や髪は自由自在に動けるみたいだし、上半身は個別で活動してるのかな?

 手も分割して使えるんだとしたら、とても便利だなあ。




 などと呑気なことを考え、現実逃避して事なきを得ようとしたけれど……無理だった。




「オラオラオラオラァァァ! クソがクソがクソがクソが! 死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇ!!」




 口汚い怒声を主旋律に、ウホウホウホッホと湧き上がるゴリラ達の歓声がハーモニーを奏でる。


 そこにリズムを刻むのが、ビタァン! ビタァン! という聞いてるだけで痛々しい打撃音。


 ハルカが掴んだ両足を上下に振って、女の下半身を床に叩き付けているのだ。



 姿形こそ人だけれど、暴虐の魔獣と化したハルカはもう、僕の目には凶悪凶暴なキング・オブ・デビルにしか見えなかった。


 いや、ゴリッゴリのラリッラリなレジェンド・オブ・メスゴリラだ。



 もう死んでるから……なんて突っ込めませんよ! 怖すぎて!!



 蒼白して事態を見守っていた僕の側で、もそり、と毛布が動いた。


 あ、こっちに首がいたんだった。状況が凄惨すぎて、忘れてたよ。


 毛布から恐る恐る顔を出した生首は、ハルカの注意が足に向いている隙に逃げ出そうとした。


 だが、そう都合良くいくわけがない。


 逃亡の気配を察知した一頭のゴリラが、素早くハルカに耳打ちする。ギッ、とハルカの鋭い視線が、窓に向かって浮遊しかけていた生首を捉えた。



「うるぁぁ! 逃がすか、クソアマあ!!」



 そう叫ぶや、ハルカは握り締めた両足を思い切り振り上げた。



 ジャイアントスイング……じゃない、下半身バットのフルスイングが、女の生首にジャストミーート!!


 芳埜よしのハルカ選手、やりました!! 特大ホームランでーーーーす!!!!



 哀れ、生首は壁を突き抜けて吹っ飛んでいった。

 と同時に、バット代わりに振り抜かれた下半身も消える。



 ゴリラ達が、ウォォォウと喝采の雄叫びを上げた。


 そして、ハルカに向かって一斉に何かを投げる。おひねりでも花でもない、糞だ。ゴリウンチだ。


 これは、ゴリラにとっての求愛行動なんだそうな。


 しかしゴリウンチはハルカに当たらず、まるで見えない壁に阻まれるかのように弾かれ、キラキラと輝いて蒸発していく。


 絢爛な光に包まれたハルカの姿は、神々しいまでに美しくて――――ゴリウンチのゴリウンチによるゴリウンチプロデュース・エフェクトであることも忘れて、僕は見惚れてしまった。



 くるりとハルカがこちらを振り向く。



 次は僕の番か!? と身構えたけれど、彼女の表情にはもう憤怒も憎悪も殺意も狂気もなかった。




「……もう! ちょっと目を離すと、すぐ女が寄ってくるんだから! あたしに気を付けろなんて言う前に、リョウくんこそ気を付けなきゃダメじゃない! リョウくんは可愛くて格好良くて可愛くて可愛いんだから、もっと危機感持って。……あ〜ん! パジャマバージョンのリョウくん、超可愛い〜! これじゃ襲われても仕方ないよ〜! 可愛すぎる〜! でもでも、パジャマキュートなリョウくんも、あたしだけのものなんだからねっ!!」




 膨れっ面からの頭ナデナデが、天使の笑顔からの抱擁に変わった瞬間――――僕は思い出したかのように失神した。



 彼女の背後からこちらを覗き込む、無数のゴリラ親衛隊達の生温かい眼差しに見守られながら。


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