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霊感体質な僕と束縛気質な彼女  作者: 節トキ
【大学一年生 七月】
35/87

山の幸フルコース、怪異風味(九)


 夕飯は、剛真ごうしんさんが捕まえた魚とレイさんが発見した新種の人面実を煮込んだ、山の幸の特製鍋がメイン。


 魚は普通に水族館で見るような種類ばかりだったんだけど、あの人面実がまたすごくてね……。



「わあ、すっごくカラフル!」

「本当、彩りが美しくて芸術的ね!」

「とっても美味しそう。ボクもう涎が垂れそうだよ!」



 世間では平均以下のヒラメ顔の僕が、絶世の美男子に見える特殊な眼をお持ちの芳埜よしのの皆様が絶賛するということは――――想像通りだ。



 大きな鍋で煮込まれたそれを恐る恐る覗き込んだ僕は、一目見るなり衝撃で気絶しそうになった。



 ブツ切りにされたお魚よりもたくさん投入された人面実は、元は白かったのに茹で上がる頃には様々なカラーに変化していた。


 笑った顔は桃色に、怒った顔は赤色に、泣いた顔は青色に、ションボリ顔は緑色に、黄色やら灰色やら、ラベンダーやらオレンジやら、表情によって様々な色合いが鮮やかに目を射る。



 なのに……美味しいんだよなあ!


 例えるなら、冬瓜の食感に近いかな? でも冬瓜よりも滑らかで繊維っぽさがなくて、ほんのり甘みがある。そこに剛真さん特製の出汁と魚の風味が絶妙に絡んで、何度もお代わりしちゃうくらい病みつきになる味だった。


 この山の食材で飲食店を開いたら、あっという間に人気になりそう。


 あ、でも僕のバイト先のレストランが潰れちゃうかもしれないから、この案は却下だ。



 飯盒の炊きたてご飯に、ハルカは刻んで炒めた山菜と魚の身をほぐしたものを混ぜたおにぎりを作り、残った山菜や魚を僕が焼き、それを芳埜家で一番の料理上手という剛真さんが飽きないよう味付けをアレンジし、レイさんが果実を使ってジュースやシャーベットを作り…………美味しく楽しく、お腹も心も大満足な時間を過ごした。



 食事してる時に、テーブルの下でこっそりハルカと手を繋いでいたことは二人だけの秘密だ。



 しかし、その後のお風呂が地獄絵図で。



「うっきゃあああん! 水濡れリョウくん、尊ーー!! もう百億万回萌え死んだーー! 神が! 結城ゆうき神・リョウゴッド様が降臨なされたぞーーーー!!」



 剛真さんは土下座し倒すし、



「究極の萌えが此処にある。人智を超越した存在の前では、私はあまりに無力。だが私は描く……例えこの両の目が、彼の放つ高貴なる光で潰されようとも!」



 レイさんはとんでもない速度で絵を描くし、



「パパもママもリョウくん見すぎ! 一分だけって言ったでしょ!? リョウくんはあたしのものなんだからね!! 」



 ハルカは浴槽に浸かる僕を隠そうと抱き着いてオパーイ押し当ててくるしで、嬉し……いやいや、阿鼻叫喚だった。



 ちなみにお風呂は、剛真さんが教えてくれたり通り、檜の破片を組み立ててシートを敷いた浴槽に薪で沸かしたお湯を供給するというもの。

 芳埜の皆様の動乱はさておき、大自然の中で露天風呂気分を味わえて、すごく気持ち良かった。



 手持ち花火をして遊んだ後は、すぐに就寝。



 皆に比べると大して動いてはないけれど、初めて尽くしの山経験のおかげで、心も体も快い疲労に満ち満ちていた。




 だが、しかし。




「あの……剛真さん、起きてます?」



 シュラフの中から、僕はそっと隣の剛真さんに声をかけてみた。



「起きてるよー。リョウくん、まだ寝ないの?」


「ええと、テントで寝るなんて初めてだから目が冴えちゃって」



 嘘だ。本当は死ぬほど眠い。


 テントってもっと寝心地悪いのかと思ってたけど、ミルフィーユ状に重ねられたテントマットに程良い硬さに膨らませてくれたエアピロー、そしてふかふかのシュラフのおかげで、自宅のベッドより快適だ。


 また、このシュラフもくせものだったりする。


 シュラフといえば棺桶みたいなのしか知らなくて、さぞ窮屈で寝苦しいんだろうな、と思っていたのに、用意されたのは横幅が広くて封筒のような形をしたタイプ。


 掛布団と敷布団の間に挟まって眠るのと変わらないから、通気性も良いし、本当に気持ち、良く、て……。



 ダメダメダメ! 寝るな、僕!


 ここで先に寝てしまったら、寝顔をじっくりゆっくりまったり堪能されてしまうんだぞ!?


 何としても、剛真さんより先に寝ちゃいけない!!



「そうだ。子守唄、歌ってあげよっか? ボク、子守唄得意なんだ。レイちゃんとハルカちゃんは、三秒で寝落ちちゃうんだよ」


「いえ! 大丈夫です!」



 ひええ、そんな怖い武器まで持ってるのかよぅ……。

 ていうか、何でまだそんなに元気いっぱいなのぉ……?

 お願いだから早く寝てよぅ……。



 懸命に睡魔と闘っていた僕だったけれど、ついに限界が訪れた。



「リョウくん……眠った?」



 夢現の狭間から、剛真さんの声が聞こえる。


 僕はもう答えることもできず、『もういいやぁ〜、見たいなら見るが良いわぁ〜』と投げやりな気持ちで、彼がシュラフから起き上がる気配を感じていた。



 と、そこに。




 テケテケテンテン、テケテンテン。

 ピッピップゥプゥ、ピピピップゥ。




 何とも珍妙な音が耳に飛び込んできて、僕は飛び起きた。



「え……」




 テントの中に、ゴリラが三頭いた。




 一頭は木と木の実でできた『でんでん太鼓』を振り、もう一頭は草で作った笛を器用に吹き、三頭目は細い茎の先端に花や葉を結わえた、シャンデリアみたいな玩具を剛真さんの頭の上でくるくる回転させている。


 あ、あのシャンデリアっぽいの見たことある。赤ちゃんを寝かし付ける時に使う、ベッドメリーとかいうやつだ。



「うにゅ……何? すごく、懐かしいオモチャの音と幻覚が……ダメ、眠たく、なってきちゃっ…………」



 剛真さんはまたたく間に深い眠りに落ちてしまった。




 ゴリラの寝かし付け、大成功!




 恐らく、ハルカが『パパにリョウくんの生寝顔見られちゃう! リョウくんはあたしのものなのに!』とプンスコしていたから、彼女のために生寝顔閲覧回避に来てくれたのだろう。


 三頭のゴリラは、剛真さんがちゃんと寝ているかを確認すると、すぐに去っていった。



 愛するハルカの元に戻ったんだろうけど……あ〜あ、僕もハルカの生寝顔、見てみたいよ。いいなぁ、羨ましいなぁ。


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