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序 見えない夢
声が聞こえた。
「……を……言って……。……ねぇ、聞こえているでしょう?」
知らない女の声だ。姿は見えず、声だけが聞こえている。
「……え……を……」
こちらは男だ。これも知らない声だ。
真っ暗なわけでもなく、真っ白な靄がかかっているわけでもない。けれど、女と男の姿は見えない。俺自身はどこにいるのだろう。自分の手の感覚などもなかった。
「…………。……×××」
男が何かを言った。
一体誰の声だろう。そう考えていると体を揺さぶられた。
「……さん。……こう……、起きて……」
これはよく聞く声だな。
「起きて下さい! 晃一さん! 遅刻しますよ!」
遅刻……?
寝ぼけていた頭が活動を始め、
「んあああああ!」
俺は飛び起きた。