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マスミの戦い

ハルキはマスミにいくつかアドバイスをした後、周囲にゴブリンがいないか見渡す。ちらりとマスミを見ると、ハルキには見えないが武器を装備する為だろうかメニューを開いているようで空中で指をせわしなく動かしている。


 ハルキはゴブリンがこちらに近づいている事を確認し、マスミに声を掛けようと彼の方を向くとその手には一振りの鈍く光る刀が握られ、近づいてくる嫌な気配に気づいていたのか視線は真っすぐとゴブリンの方を向いていた。

 

 「見守っていてください」

 そういうとマスミは近づいてきていたゴブリンの前に立つ。ひどく緊張しているのが外からでもわかったのでいざとなったら飛び出すためにハルキも思考を戦闘モードへと切り替える。



 「ガガガギュア!」

 ゴブリンは雄叫びを上げながらマスミへと襲い掛かった。マスミはハルキのアドバイス通り初撃を避けてすぐに首元を攻撃しようとしたが、緊張のせいかうまくいかず避ける時に態勢を崩してしまったようで転んで刀を落としてしまった。


 好機だと感じたのかゴブリンはマスミへと追撃を掛けようとする。マスミはまだ立ち上がれておらずゴブリンの攻撃を避けるすべはないと思ったのか目をつぶって襲い掛かる衝撃に耐えようとしていた。


 「喝ッ‼」

 ハルキはマスミが目をつぶってしまったのを見てゴブリンに向けて吼えた。

 ゴブリンは危険を感じたのか襲い掛かるのをやめてハルキとマスミから距離をとった。

 その間にマスミは何とか立ち上がり、落とした拍子に転がってしまっていた刀を拾った。

 「目をつぶるな前を向け! やることは変わらねえぞ! 街に帰って外の事いつまでも下向いているプレイヤー達に報告するんだろしっかりしやがれ!」


 ハルキはマスミに向けて一喝する。初めて感じる自分に向けての殺気にマスミは怯えてしまっているようだったがハルキに一喝されると我に返ったのかゴブリンを見据える。



 「ゴギャ? グギャギャ‼」

 ゴブリンはハルキの咆哮におびえていたが何もしてこないハルキに困惑していた。しかし、マスミが再びゴブリンの前に立つとハルキが攻撃してこないのが分かったのかマスミに襲い掛かった。


 マスミは落ち着いてゴブリンの攻撃を右に避けると刀でゴブリンの脇腹を斬る。それに応じてゴブリンのHPが半分になったことを確認したマスミは追撃を掛けるためにゴブリンを背中から刀で貫いた。その刺突が決定打になりゴブリンは銅のコインを残して黒い靄になり消えていった。



 マスミは息を切らして立ち尽くしてゴブリンがいた場所に立っていたが、少しすると落ちていたコインを拾いハルキのもとへと駆け寄った。


 「さっきはありがとうございます‼」

 マスミはハルキの前に立つとがばりと頭を勢い良く下げてハルキにお礼を言った。

 (首取れちまいそうな勢いだな)

 頭を下げるマスミを見てそんなくだらないことが浮かんだが、いつまでも頭を下げさせたままだとかわいそうだと思い声を掛ける。


 「気にすんな、それより初勝利おめでとう。ナイスプレイだ」

 そう言いながらハルキはビシッと親指を立てる。

 「ありがとうございます!」

 ハルキが褒めると照れたようにマスミは頭を掻く。



 マスミのことを褒めたのは本心からの言葉であった。

もし、マスミが再びゴブリンから目を逸らしたら、ハルキは彼に一度帰る事を提案するつもりだった。しかし、初戦闘で一度くじけそうになりながらも立派に立て直したマスミの事を見て彼の勇気をハルキは感じた。



 メニューを開いて時間を確認するとヒロとの約束の時間まで二時間を切っていた。そろそろ探し始めなければヒロとの約束に間に合わない。いや今から探して間に合うだろうかという一抹の不安がハルキの中で生まれる。


 「っと、そろそろ街に戻んないと約束に間に合わねえな。ついてくるか?」

 「あっ、約束があるって言っていましたね……僕は他のプレイヤーの皆さんに街の外の事伝えないと」


 マスミはハルキとの別れを惜しむように残念そうな顔をした。

 (どうにかマスミと連絡取る方法はねえか)

 ハルキもマスミと別れるのが惜しくなっていたので連絡する方法はないかと思案する。

 『マスミにフレンド申請を行いますか?

 YES NO』


 そうしていると新たにメッセージボードがハルキの前に現れる。

 (また新しい機能か……ん? なんでさっきヒロとの連絡方法を考えている時には出なかったメッセージボードが現れたんだ? 何か条件があるのか?)

 ハルキはなぜメッセージボードが現れたか考えたが約束の時間が差し迫っていたのでとりあえずYESを押す。



 するとマスミから鈴のような音が聞こえた。彼は慌ててメニューを開くと先ほどまで残念そうにしていた顔を笑顔にして興奮気味にハルキに近づいてきた。

 「ハルキさん‼ YES、もちろんYESですよ!」

 「お、おう。サンキュー」


その興奮のしようにハルキは少し引いてしまったが、何とか返事をする。

「これで連絡とれるみたいですね! 街のプレイヤーの皆さんに伝えたら連絡します‼」

メニューを操作しながらマスミは連絡手段が出来たのがうれしいのだろうか笑顔で話す。

 (変な奴と友達になっちまったか?)


 ハルキは考えなしにフレンド申請を送ったことに少し後悔したがすぐに気持ちを入れかえた。

 マスミとの連絡方法が出来たハルキは急いで街に戻ろうとマスミに告げ、街に入ったところでマスミと別れた。







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