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×××××シリーズ

お姉さんと友達くん

作者: 浜木綿

親愛なる私の友人。

ちょっとだけ幼い少年が好きな私の友人へ、この話を捧げる。


ちょっと外国の本みたいに

 00


 少年しょた世界しょたこんを救う。



 01



 カチカチと時計の秒針が五月蝿く鳴る。

 少女がちらちらと時計を見ながら、少年に話しかける。


「ね……ねぇ、弟」

「ん? どうしたの姉ちゃん」

「い、いやぁ……今日は×××××くん来るのかなぁって」


 少女の声はどことなく気恥ずかしそうな雰囲気がにじむ。

 弟と呼ばれた12歳ほどの少年は、姉の言葉に首をかしげながら答える。


「あぁ、もう少しで来るかな……でもなんで姉ちゃんがそんな――」

「わああぁぁっ! なんでもない! なんとなくだからぁ!」


 少女は赤い顔で手をバタバタと振って誤魔化す。


「? 姉ちゃんなんか変だぞ?」

「なんでもないってば……」


 少女は一息呼吸して気持ちを落ち着ける。


「それにしても偉いよね、しっかり夏休みの宿題やって」

「姉ちゃんと一緒にすんなよ。夏休みの宿題なんてさっさとやった方が後が楽だろ」

「うぅ……耳が痛いです……」


 まぁ姉ちゃんが良い反面教師だったからな、と弟が笑う。


「あいつも結構サボりたがりだから、一緒にやった方がサボらないし楽しいだろ?」

「言ってることは理解してるんだよぅ」


 はぁ、と溜め息をついた時にピンポーンとインターフォンがなった。

 少女はびくんと勢いよく背筋を伸ばす。

 弟はぱたぱたと玄関まで駆けて行った。


「あわわ……来ちゃった、来ちゃったよ……」


 慌てて髪型やスカートの裾を整える少女。

 立ち上がってリビングをうろうろとする。


「……何やってんの姉ちゃん」

「ふぁう!?」


 弟が一人の少年を連れて、リビングに入ってきた。

 連れられてきた少年がにこやかに挨拶をする。


「こんにちは、お姉さん」

「こ、こんにちはっ、×××××くんっ!」


 若干と赤くなった顔の少女。


「なんでそんなに緊張してんだってば、姉ちゃん」

「き、緊張なんてしてにゃいよ!」

「噛んでんじゃねぇか」

「あはは、あいかわらず面白いお姉さんだね」

「うぅ……」


 赤くなった少女は俯いてソファへと沈みこむ。


「あ、お姉さんこれ。お土産です」


 少年は持っていたまるまるとしたスイカを少女に渡す。


「わ! おっきいね! どうしたのこんなの」

「おばあちゃんが田舎からいっぱい送ってきて。どうぞ食べてください」

「あ、ありがとっ! 冷やさなきゃっ」


 少女は冷蔵庫へと走っていく。

 その姿を見ながら少年と弟が笑いながら話す。


「お姉さんホント面白いね。なんかなんにでもいっしょうけんめいっていうか」

「高校生なんだからいいかげんおちついてほしいけどな」

「良いじゃん、毎日楽しそう」

「うるさいだけだって」


 少年たちはテーブルに勉強道具を並べていく。


「今日はどうする?」

「ちゃっちゃと算数終わらせちゃおうぜ」

「そうだね」


 そこに、少女がコップを持ってやってきた。


「×××××くん、麦茶どうぞ」

「ん、ありがとございます」

「俺のはどうしたのさ、俺のは。×××××ばっかかよ」

「あ、あるよ、ちゃんと!」

「そんなお姉さんからかっちゃだめだよ」

「小学生に遊ばれる高校生ってどーなのよ」

「う、うるさいなぁ……ばーかばーか弟のばーか」

「反応が子供だってんの」

「ほらほら、いつまでも遊んでないで宿題やるよ?」


 少年に言われ、弟は溜め息をついた後宿題に向かう。

 少女は、少し離れたところに腰をおろす。

 二人は集中して、宿題を進める。カリカリと鉛筆が滑る音が部屋に響く。

 少女は時折少年を見つめては、不自然に顔を逸らす。


「…………」


 手持無沙汰に髪をいじったりする少女。

 二人の集中の邪魔をしない様にしているが、妙にそわそわしている。


「姉ちゃん、こそこそうるさい」

「なっ!?」


 弟に怒られてしゅんと肩を落とす少女。

 少年はそれを見て、くすくすと笑っている。


「あーもー、姉ちゃんのせいで集中切れた」

「ご、ごめんね」

「ちょうどいいや、ここわかんねーから教えて」


 面倒臭そうに弟が算数ドリルを少女に見せる。

 少女も、何で私が、とぶつぶつ言いながらも差し出されたドリルを覗き込む。


「えっと……」

「まさか解けないなんてことは……?」

「あ、当り前でしょ! 流石にそれは私を馬鹿にし過ぎだよ!」

「はいはい」

「もう、これはね――」


 少女はつらつらと解法を書きこむ。


「あー、なるほど、わかった」

「ふふん、私馬鹿じゃないでしょ!」

「そこでいばったら色々だいなしだろが」

「むっ!?」


 怒って口をとがらせる少女を見て、少年が笑う。


「あはははっ」

「な、何で笑うかなぁ×××××くん」

「ううん、ごめんなさい。僕も分からないところがあるから教えてくれますか?」

「! うん! いいよ、どこかなどこかな!」


 満面の笑みで、少女は答える。

 少年の横に陣取って、少年の質問に答えていく。

 そんな少女を見て、少年はまた笑う。


「なぁ……姉ちゃんってさ」


 姉の過剰なほどのはしゃぎ様に、弟が呟く。


「もしかして、×××××のこと」

「ふんっ」


 弟のみぞおちに、少女の拳が深く突き刺さった。


「ごふぁっ!?」

「な、な、何を言おうとしてるかなっ! わ、私が、そんな、可愛らしいおとこのこのことが好きだなんて、事実無根なことを言おうとしちゃったりしてるのかな!」

「……な、こと……これっ、ぽっちも……言ってねぇ」


 弟はお腹を押さえて床に崩れ伏している。

 少年がそれを見て大笑いしている。


 そんな騒動を続けながら、彼らの宿題は進んでいった。



 02



「んー! お姉さんのおかげでさっさと終わったぁ」

「こいつたいして役に立ってないぞ?」

「ひ、ひどいなぁ! ×××××くんみたいに素直に感謝してよ!」

「うるせー」

「五月蝿いとはなんだー!」

「あははははっ!」


 つるつるとそうめんをすすりながら、三人は話している。


「宿題手伝ってもらったし、お昼も食べさせてもらって、ありがとうございます」

「そんな、お礼なんていいよ! スイカももらったしね」

「姉ちゃんでれでれ」

「してませんー。まったく、弟も×××××くんくらい素直なら可愛いのに」

「姉ちゃんにかわいがられたくない」


 わいわいと喋りながらお昼が終わる。


「ごちそうさま」

「美味しかったねー」


 そこでふと気がついたように、弟が少女に声をかける。


「そいえば、この後プール行くけど姉ちゃんも来る?」

「へ? プール?」

「そうだね! お姉さんも一緒に行こうよ!」

「う、え……」

「どうせ暇だろ?」

「いや、そうなんだけど……その、おなかまわりとかが……ごにょごにょだったり……」

「姉ちゃんなんて、んな気にしねえよ、誰も」

「はう」


 落ち込んだ顔でお腹をさする少女に、少年が申し訳なさそうにいう。


「だめ、ですか? 僕はお姉さんと一緒に遊びたいです……」


「行きます。ぜひ、行きます」


 悲しそうな顔をする少年しょたに少女はあっさりと陥落する。


「……姉ちゃんやっぱり――――っ、何も言わないから、その手を下げてくれっ!」

「そーお?」


 少女は振り上げた手を下ろす。


「それじゃさっそく行きましょ! お姉さん早く早くっ」

「あぁ、待ってまだ私用意しなきゃ」


 少女は、まだ細くて小さい少年の手に掴まれて、にへにへと頬を緩めている。

 名残惜しそうに少年の手を放させると、少女は急いで水着を用意しに行く。


「それじゃー出発しよー」

「おー!」


 三人は自転車に乗って近くのプールまで走っていく。


「あっちぃなぁ……」

「ね、お姉さん。後でアイス食べよ?」

「そうだね、アイス食べたくなるね」


 じりじりと暑い日差しの中、チョコ味のチューブアイスを半分に分けて、思いっきり吸い込む。勢いよすぎて頭がきぃんと痛むけれど、冷たさが口いっぱいに広がって何とも爽快だ。

 そんな感覚を、少女は思い出す。


「あー食べたい」

「目的はプールだからな」

「わかってるよぅ」


 自転車をしばらく、10分ほど漕いで、沢山の人でにぎわっている市民プールへと辿り着いた三人。

 自転車を止めるなり走り出して、受付を急いで済ませて更衣室へと飛び込む。

 少年達二人は早々と着替え終わって、プールサイドで準備運動している。


「姉ちゃんおっそいなぁ」

「女の人は時間がかかるんだよ。このくらい待てないと将来モテないよ?」

「なっ、お前だって似たようなもんだろ!」

「いっしょにしないでよー」

「てめぇ、まてこら!」


 しばらく経って、追いかけっこをしている彼らのもとに少女が来る。

 少女はセパレート式の水着に身を包み、少しだけ恥ずかしそうにしている。


「お、おまたせー……っ」

「おー、遅いぞ姉ちゃん」

「わ、わわっ……」


 少年が顔を赤くして、少女から目をそむける。


「姉ちゃんなんだよそれ、いつも上下くっついた奴だろ?」

「い、いーじゃんか! 今日くらいおしゃれしたって!」

「…………」

「ん? ×××××くんどうしたの?」

「い、いや……」


 少女が少年の顔を覗き込むと、少年の顔がさらに赤くなる。

 その反応に、弟は悪い事を思いついたように笑う。


「はっはーん……お前もしかして」

「……なにさ」

「姉ちゃん見てエロい事考えてるな?」

「へっ!? わ、私!?」

「そ、そんなことないよ! お姉さんの……その」


 図星を刺されたように少年は慌てて反論しようとするが、もごもごとするばかりで大したことがいえていない。


「んだよ、んだよ……このおっぱい星人め!」

「おぱっ!? ち、違うってばっ! 別にそんなことはっ!」

「……私、えっち? ×××××くんが……見て……?」

「あーあー! 違うんですお姉さん、僕はただお姉さんが綺麗だなって!」

「ごまかすなよー」


 真っ赤な顔で今度は少年が弟のことを追いかけている。

 少女は少年の「綺麗」という言葉に照れて、ぼうっと呆けている。


「そ、そういう君はどうなんだよ!」

「俺? 別に姉ちゃんの裸なんて見慣れてるし、こんな残念なのじゃ別に」

「み、見慣れっ!?」

「残念っ!?」


 少年と少女は、それぞれ弟の言葉に恥ずかしがったり落ち込んだりしている。


「ほら、そんなことよりさっさと入ろうぜ。時間もったいねぇ」

「ぬぬぬ……はぁ、仕方ないなぁ」

「残念……ざんねんかぁ……」

「姉ちゃんいつまで落ち込んでんだよ」

「お、お姉さん行こ? とにかく遊ぼうよ」


 まだ若干照れている少年に手をひっぱられて少女もプールへと入る。


「うひっ、つめたっ」

「あー、気持ちいいですね、お姉さん」

「ほんとだねー、気持ちいい」


 軽く身体を水にならすと、弟が泳ぎだす。

 にやりと笑ってから潜水して、少女の足を持って水の中に引きずりこむ。


「がぼっ!?」

「ぷは! スキありー」

「けほけほっ……ひ、ひどい! いきなりはひどいよー」


 わいわいと追いかけっこが始まり、そのまま鬼ごっこになっていった。


「タッチ! 鬼×××××ね!」

「よーし、じゃあお姉さん捕まえよう!」

「わっ、逃げろー!」


 少女はバタ足で逃げていくが少年の方が若干速く、追いつきそうになっている。


「不味い! 捕まる!」

「あと少しっ、お姉さん待てっ」


 少女が思い切って方向転換して逃げようとするが、少年に追いつかれてしまった。


「とりゃーっ!」


 が、少年は勢い余って少女に飛びついてしまう。


「きゃっ!」

「んっ!」


 思い切りぶつかって、まるで抱きあっているようになってしまった少女と少年。


「…………っ! ご、ごめんなさいっ」

「い、い、いいよっ!? だ、大丈夫だからっ!」


 両者共に、慌てて離れる。

 少年が、ひたすらに柔らかかった、柔らかかったとぶつぶつ呟き、少女も細いとか小さいとか呟き続けている。

 そんな様子を見ていた弟が、つまらなそうに言う。


「なぁ、捕まったんならさっさと次やろうぜ」

「そ、そうだねっ! 次やろうか!」

「や、やろうやろう! 鬼は私ねっ」


 二人は先ほどのことを無かったことにするように大声を上げた。

 そのまま三人は、へとへとになるまで遊び続けた。



 03



 夏の長い日も既に暮れ、一番星が光る時間帯になっている。

 遠くの木々の中でひぐらしがカナカナとどこか悲しげに鳴いている。


「あー、疲れたー」

「んー私も、久々にくたくたー」


 家に着いた三人は、しゃくしゃくとスイカを食べながら庭で涼んでいる。


「スイカ美味しい! ありがとね、×××××くん」

「ううん、よろこんでくれたならうれしいです」


 日が落ちた後の心地の良い風が、日焼けで火照る身体を冷やしてゆく。


「焼けちゃったねー、弟なんて、ほら真っ黒ね」

「日焼け止め塗らないからだよ」

「姉ちゃんじゃないんだから、んなもん塗るわけないだろ」

「あははっ」


 話しているうちに段々と辺りが暗くなってゆく。


「おーそろそろ良い時間だな」

「そうだね、始めよっか」


 そう言って少女は花火セットを取り出す。

 水を張ったバケツにチャッカマンも用意して準備は万端。


「よーし、点火!」

「かちっとな!」


 弟の間抜けな掛け声とともに、三人の持つ花火に火がつく。


「わぁぁっ!」

「綺麗だねっ!」


 ぶわぁっと先端から色とりどりの火花が舞い散る。

 白や緑、赤、黄色と言った極彩色が闇夜に良く映える。


「とりゃー、花火大回転!」

「うわ、ちょ、こら危ないでしょうが弟!」

「やめてよまったく!」


 少女と少年が悲鳴を上げるが、それはどことなく楽しそうだった。

 ススキ花火やネズミ花火、ヘビ花火などの沢山の種類の花火で楽しんだ。

 最後に三人で、線香花火に火を付けて静かに楽しむ。


「×××××、どっちが長くできるか競争」

「うわずるいよ! 僕の方が先に点火したのに!」

「なっ! バカゆらすなって! 落ちる、落ちちゃう!」

「もー、二人とも静かにやろうよー」


 あまり静かに楽しめなかったが、慌ただしい雰囲気に少女は楽しげに笑った。

 ちなみに、勝負に勝ったのは少年だった。


「あー、楽しかった」

「うん、楽しかった」

「私も楽しかったー」


 三人で庭に座り込んで空を眺める。

 紫色の夜空には、明るく大三角形が瞬いていた。


「お姉さん……」


 少年が空を見上げたまま、静かに言う。


「ん? なぁに?」

「今日は遊んでくれてありがとうございました」

「えー、そんな畏まらなくていいのに。私も良かったんだから」


 少年はにへへと笑うと、恥ずかしそうに言う。


「綺麗なお姉さんと遊べて、すっごくうれしかったです」

「ふぇっ!」


 真っ赤になって固まる少女を見て、少年は悪戯が成功したように笑う。


「もー、私をそんなにからかわないでよー」

「でも、うそじゃないんだよ?」

「まったくもー」


 悔しがる少女は、しばらく考えて。


「×××××くんこっち向いて」

「なんですか?」

「ちゅー」


 振り向いた瞬間に、少女は少年の額にキスをした。


「な、な、なあななぁ!?」

「へっへー、仕返し成功ー」


 茹で上がって俯く少年。

 キスをした少女の方も、大分照れている。


「いちゃいちゃしてんなよー」


 蚊帳の外だった弟が、いじけたように文句を言う。

 その様子に少年と少女はクスクス笑いあう。


 きらりと流れ星が一筋流れて。

 小さく願い事をした少女は、少年と目を合わせて、言う。



「また遊ぼうね」




おそまつさまでした。


そして時期が真逆ですね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] さわやかな夏の情景が目に浮かびました。 [気になる点] 自分は少年《しょた》の方から攻める展開のほうが好みだったので… …すいません、忘れてください。
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