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井上達也 短編集1(始まってもいない作品集)

6畳半の白い密室部屋

作者: 井上達也

 目を覚ますと、私は部屋の真ん中で椅子にもたれかかっていた。

「ここは……どこだろうか……」

 私は、部屋を見回してみた。広さは、あまり広くない。たぶん6畳半くらいの部屋だ。壁はコンクリート打ちっぱなしでドアが一つ。ただしドアノブらしきものはなく窓も一つもない。天井は白い。私が座っている椅子の目の前には、白いテーブルが置いてあった。ここは、本当にどこだろう。どこかの精神病棟にでも迷いこんでしまったのだろうか。服装も真っ白で、手術前の患者なのような格好で裸足だった

「痛い……」

 頭が痛かった。鈍器でのようなもので殴られたような痛さではなく、風邪を引いてしまったときのような頭の痛さだ。たぶん、大量に睡眠薬のようなものを飲まされたのかもしれない。ただ、動けないほどの痛みではなかった。


 私は、とにかくこの部屋から脱出しようと考えた。しかし、脱出しようにもどうすればいいのか検討が着かなかった。唯一外とつながっていると思われるドアもドアノブはない。私は、ドアを調べるため椅子から腰を上げた。ペタペタと地面と足が付いたり離れたりする音が部屋に響いた。

「んーやっぱり、ドアノブは無しか……」

 私は、ドアを調べたがやはりドアノブはなかった。押してみたりしたがビクともしなかった。本当にこれはドアなのだろうかと思うくらい反応がなかった。しかたなく、私は元のテーブルと椅子のある場所に戻ることにした。

 戻ろうと振り返った瞬間、私はある異変に気づいた。

「コーヒーが……」

 なぜか、さっきまでテーブルの上には無かったコーヒーが湯気を立てながら置いてあった。もちろん、コーヒーマグは白かった。ただ、白さが際立つこの部屋においてコーヒカップの中身の黒色は際立っていた。ブラックコーヒーであると思われる。私は、色味というものがこんなにも安心できるものなんだその時初めて気がついた。

 飲もうかと思い、マグの取っ手を握ったが飲むのをやめた。もし、このコーヒーに毒でも入っていたら怖いからだ。こんな時でも、どうやら私はまだ死にたくないらしい。自分の命がこれほど大事に思える瞬間はもう今後出会えないと思った。いや、出会いたくはないものだが。


 不可解な部屋で目が覚めてからどれくらいの時間がたったのだろうか。なにせ、この部屋には時計がない。時間感覚も部屋が白いためかよくわからない。時間が猛烈に恋しくなった。一日が24時間と誰が決めたんだと思ったこともあったが、今となってはその制約すら恋しい。制限があるということがこれほど自由を際立たせるものなのかと思った。

 私は、ドアノブを調べて以降いろいろな場所をくまなく調べた。壁、テーブル、座っていた椅子、床、コーヒーマグ……。ありとあらゆるところに触れてみた。その間も部屋中にはペタペタと音は響いた。

 

 私は、少々疲れたためテーブルに突っ伏して寝る体制に入った。床に寝れば良かったのだが、床は冷たく固いためどうにも眠れそうになかったため断念した。

 しばらくして、私に睡魔が来て目が閉じた。どうせなら、起きたらいつも通りの世界になっていれば良いのにと思った。こんなものは夢なんだ。私は思った。だってそうだろう。いつの間にかこんなわけのわからない部屋に閉じ込められ、脱出するすべすらない。食べ物も無い。あるのは既に冷えきったコーヒマグに入ったコーヒーのみ。私は、どうしていいかいよいよわからなくなってきた。


「ん……んんぅ」

 私は目を覚ました。一つ伸びをして体の固まった筋肉をほぐした。

 目を覚ますと、私の期待とは裏腹にやはり「あの白い部屋」のテーブルの前であった。しかし、また目を覚ます前とは異なる点があった。

 一台の大きな液晶テレビがテーブルの目の前の壁にかけられていた。私は、あまりテレビの大きさの単位について詳しくはないが、たぶん家電量販店で置いてあるなかでも大きい部類にはいるサイズであった。

 液晶テレビからは一切の音は流れてはいなかった。ただ映像は流れていた。パンダやキリン、サイ、イヌ、ネコ……。彼が登場する映像ではあったがすべて交尾の最中の映像だった。私は、最初は気になって見ていたのだが、途中で吐き気がしてきたため見るのをやめることにした。

「随分と趣味の悪い映像だ……」


 私は、のどが乾いていた。この部屋で目を覚ましてから何も食べたり飲んだりしていないのだ。空腹は我慢できたとしても乾きは我慢できなかった。のどが……のどが乾いた……。水が飲みたい。水が飲みたい。水が飲みたい。

 頭の中が、水のことでいっぱいになった。すると、私はあることに気がついた。そうだ。目の前にコーヒマグがあり、中にはコーヒーが入っている。コーヒーは毒でも入っているかもしれないと思って避けていたあのコーヒーだ。

「毒が……」

 一瞬、毒のことを気にしたが、私は勢いよくコーヒマグに入っている液体を飲み干した。

「ごほっ、ごほっ……!!」

 私は、勢いよく飲んだせいむせてしまった。毒が入っている気配はなかったが、まだわからない。もしかしたら遅効性のある毒なのかもしれないからだ。しかし、ひとつ気になることがあった。コーヒーマグの中に入っている黒い液体は、てっきりコーヒマグに入っているからブラックコーヒーかと思っていたが、単なる炭酸の抜けたコーラだった。あまり美味しくなかったのは言うまでもあるまい。


 白い何も無い部屋。動物の交尾がエンドレスに流れるテレビ。白いテーブルと椅子。その後は何度見てもなんの変化はなかった。本当にこの部屋はいったいなんなだろう……。

 私は、椅子から腰を上げ部屋をひたすら歩き回った。

 ペタペタと歩き、壁をペタペタ触る。次は反対側の壁に向かってペタペタと歩き、壁をペタペタと触る。次は、右、その反対、左、その反対、ペタペタ、ペタペタ、ペタペタ、ぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺたぺた……たッ!!!

「……う、う、ううおぉぉぉぉぉっぉおおおおおおおおあわわわ!!」

 

私は、今まで出したことの無い声を腹の底からだした。人間というより動物の奇声のようだった。それから、わたしはしばらく叫び続けた。のどがつぶれたような感覚を感じ、声出すのをやめた。そして私は、そばにあった椅子を持ってテーブルに向かって叩き付けた。テーブルは、あまり頑丈ではなかったらしくまっ二つに割れたが、同時に椅子も脚と本体がバラバラになってしまった。

 まだまだ、私の気の狂いは収まることはなかった。バラバラになった椅子の脚の一つをを地面に何度も何度も叩き付けた。気がつくと椅子の脚はまっすぐの状態からくの字に曲がっていた。私は、それでもやめず叩き続け、いよいよその脚は折れてしまった。私は、その折れた椅子の脚を見た。何が折れたか正直わからなかった。これは、なんだろうと思った。

 あたりを見回すと、やはり液晶テレビには動物の交尾が永久再生されていた。その光景が無性に腹が立ったため、私はその持っていた折れた椅子の破片を壁にかかった液晶テレビに向かって勢いよく投げた。

 椅子の脚の残骸は、液晶テレビに向かって放物線を描いて飛んでいった。バリン、という音とともに液晶にヒビが入り、そのヒビからテレビの画面に暗闇が広がっていき、最終的にはテレビにはなにも映し出されなくなった。


「はぁ……はぁ……」

 私は息を切らして、白い部屋の真ん中に立っていた。今までこの部屋にあったテーブルや椅子、液晶テレビは私の手によって破壊され、無惨な姿だけ残った。壊してから気づいたが、妙な寂しさを感じた。このような孤独な環境下では、テーブルみたいな無機質なものでも心の拠り所であったということらしい。興奮状態の自分を少し反省した。

 また、私は一人になってしまった。仕方なく、また部屋をペタペタと徘徊した。

 壊れた液晶テレビの画面の前に来た。さっきまで、見たくもない動物の交尾をさんざん流し続けていたが今はうんともすんともいいそうにない。私は、ため息を漏らしたが、その瞬間テレビの日ヒビの入った部分から紙のようなものがあることに気がついた。

「なんだろうか……」

 私は、テレビの液晶のガラス部分を外し、中身を取り出した。すると、なにやら封筒のようなものが見つかった。私は、その封筒をおそるおそる開けてみた。すると、一枚の便せんが現れ、便せんには黒いペンで文字が書かれていた。

「第一関門突破だ。おめでとう」


 何を言っているのだ。第一関門?なんのことだろうか。私にはさっぱり理解ができなかった。

 これは、誰かが仕組んだゲームということか。それと、第一関門ということは、これから第二、第三と関門が存在するということなのか。


 すると、さっきまでビクともしなかったドアノブのないドアが、ぎぎと思い音を立てながらゆっくり開いた。私は、開くドアを見つめていた。私は、思わず叫んでしまった。

「いったい、いったい……なんなんだこれは!誰か居るなら返事をしてください!そして、私を出してください!」

 叫んだが、のどがつぶれていたためあまり大きな音にはならなかった。

 私は、しばらくその場に立ち尽くしていたが、ドアの先に行くことを決心し、私はドアの向こうへと歩いていった。




「人間って面白いな」

「面白ね。飽きないよ」

「交尾の映像でも流していたから、てっきり発情するかと思ったのに」

「音がなかったからね。映像だけじゃだめってことさ」

「そうなのかな。まぁ発狂した時は、心から笑ったからいいけど。滑稽だったね」


「さて。もうコイツは良いや。次の部屋で処分しよう。用済みだ」

「了解」

「で、次の被験体は?」

「次のは……」


 今日も、研究所にて人工知能の研究は続いていくのであった……。

 

このお話はフィクションです。

モチーフとしてはSAW1のような密室系をイメージしました。またしても、能力不足を痛感しました。落ちもひどし。

次、頑張ります。


あと、実は主人公は性別というものは特定せずに作りました。私っていう一人称は便利ですね。

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