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異世界の退魔術師  作者: 妄想野郎
終焉の人生と、始まりの世界
2/5

襲われる姫君

▲             


 深い闇の底にある自身の意識が少しずつ浮上してくる。

 何かに陽の光が遮られているのか、僅かな光しか顔を照らさない。

 ゆっくりと瞼を開けて、朝を確かめる。

 気温はやや低く、肌寒いが、それが逆に心地良い。

「朝か……」

 何時ものようにくだらない日常が始まり、学校に通いに行かなければと呑気に腰を上げて、制服が仕舞ってあるクローゼットを目指して部屋の端に手をかける。

 しかし、そんな幻想は無かった。

 ふと、正気を取り戻し辺りを見渡すが、広がっている風景はいかにも日本に残ってはいない筈の大自然で、木の樹齢が軽く100年以上経っているようなものばかりで、果てしなく大自然が視界に続いている。

「(おいおい……)これは一体何のドッキリ番組ですか?」

 誰かにこの状況の答えを是非教えていただきたいと思い、呟いた。

 すると、どこからか、いや心の奥深くから陽気な声で一番聞きたくない事実を突きつけてくる悪魔の声が聞こえてきました。

『これは悪魔のドッキリです! あなたは今、地球とは違う世界に招待されちゃいました』

「…………」

『なので、こちらの世界で生涯の幕を閉じましょう♪』

「…………」

『とりあえず、森を抜けようぜ』

 此方の沈黙に興が冷めたのか口調を戻し、冷静に現状を打破しようと相棒は言った。

 誰かこの夢を覚ましてほしいと心で泣きながら自分の非日常を再確認していた。

 仕方なく、この世界とやらで生きることを決め、森を抜けることになった。一度死を覚悟した彼には異世界という状況においても取り乱すことはせず、当たり前のように受け入れる。

 しかし、方角がわからなければ、近隣の街だってわからない状況なので只管まっすぐ道を突っ切ることにした。

 刹那、近くから悲鳴が聞こえた。

 咄嗟に悪魔は、「テンプレ美少女がいるはずだ!!」と言って悲鳴の聞こえた方へ行ったが、どう考えても、先ほどの悲鳴は人間の者ではなく動物か何かであろうと見越していたので、落ち込んで帰ってくる相棒をどう機嫌よくするか考えていた。

                                    ☆

 適当な道を突っ切った後、無事に街に続く道があったのでそれに沿って特に会話もなく進んだ。

 数十分が過ぎ、もう街の入り口にたどり着いたのだが関所の前に二人ほど全身鎧を着た男の人が見えたのだが、特に構わず街の中へと入ろうとするが全身鎧の二人に止められた。

「おい、お前此処に立ち入るときは入国証明書が必要だ、提示を――」

「え!? そんなものが必要なのですか?」

「そうだ。持ってないのか? 初めてか――」

 全身鎧の男の言葉に無言の肯定で返し、全身鎧の男は此方を見定めるように全身を見てきた。

 全身を見終え、最後に顔を見て、目をじっと見て数秒。

「よし、お前は冒険者でもなさそうだし、危険を及ぼすものじゃなさそうだから通っていいぞ」

「良いんですか? それと、入国証明書ってあるのと無いので何が違うんですか? てっきり無いと入れないかとおもいましたよ」

 ああ、そうだなと少し頭の中にある知識を引っ張り出すように考え、うろ覚えなのか、少し片言で質問を返してくれた。

「そうだな、例えば、街の中で問題を起こした場合の配慮の違いだな。持ってるか持ってないかでかなり対応が違うから、次回からは注意をしたほうが良い。特にこの街の貴族は少々他より危ないからな。それに、ここの門番の俺たちは街に入る者に害が有るか無いかを見極めるのも仕事に含まれているんだ」

 すごく丁寧に説明をしてくれた全身鎧の人に頭を深く下げ礼を言い、中に通されるようにして関所を潜った。

                                   ☆

 街の中は思った通りの中世ヨーロッパの風景が広がっており、退魔術師の彼の気持ちを高ぶらせていながら、心の中で非日常を謳歌する気満々で、此れまでの非日常あっての今なので、心底相棒の悪魔に感謝している退魔術師の彼であった。

 そんな様子を見ていた悪魔は、どうしてそんなに気持ちがコロコロと変わるのか哀れみを含んだ目で見ていた。

当然そんなことを考えている悪魔には気づかず、これから暮らしていくかもしれないこの街を速く見回りたいと思っていた。

「どこに行く?」

 ものすごくワクワクしながら輝いた目で相棒に語りかける声に相棒は反応し、「んなもん、まずは金稼ぐためにギルドだろ」と、当然のように言い放った、

 悪魔の言葉に納得するように首を縦に振り、実行に移す。

 すぐ近くにいた八百屋見たいな店住まいのおばちゃんに声をかけた。

「すいません、この街のギルドの場所ってわかりますか?」

 退魔術師の言葉に話しかけられたおばちゃんは、この世界で見れば、ジャージにジーンズと、特異な彼の服を見てもなんら不思議がらずに答えた。

「あんた、外から来たんかい。そうだね、店の前の道を左に行ったら民食街に入るから手前にある看板を右に曲がると二手に分かれる道があるのさ、そこを右にいくとすぐに大っきな四階建て位の建物があって入り口の前にギルドって立て札があるから多分分かり易いと思うけど、坊やは何か用があるの?」

 説明は簡単で、丁寧に教えてくれたが最後の坊やって呼び方に少し退魔術師の彼は違和感を覚えながらも答えた。

「明日を生きるためです」

 まさに満面の笑みで言った彼の行動におばちゃんは面をくらい、言い返す前に彼は先ほど説明された道を進んでいった。

 しばらく呆然と彼の進んでいった道を見ていたおばちゃんは考えを改めるように言葉を紡いだ。

「明日を生きるためか…………彼には何かありそうね」

 その、不気味な笑みをみた客人は恐怖にそまり跳んでいくようにどこかへ逃げ出したが、それを彼女が知ることはずいぶん後になる。

                                        ☆

 ギルドに無事迷うことなく到着した彼らは意を決して扉を引いた。

 中の様子は思っていた以上に活気を増しており、何人もの鎧をきた男たちがガヤガヤと話し合い、何かが書いてあるであろう紙を取り合いしている。

 ほかにも、少し離れた右の突き当たりのほうにある部屋では、何百人もの人が来ても座れそうなほど椅子やら机が置いてあり、今でもウエイトレスみたいな人が元気に走り回り、注文を受け付けていた。

 その光景を見て、ああ、ここは日本も似たようなもんだなと、あまり感慨深そうでは無い様子だった。

 特に物欲しそうではなく、ギルドのカウンターらしき場所へと歩いた。

 カウンターにいた女性はこちらに気づいた様子でこちらに向き笑顔を振りまいて言った。

「本日はどのようなご用件でしょうか?」

凛とした声に合うような純粋な茶髪で、綺麗な女の人の余り免疫がない退魔術師の彼は多少面を食らうが、すぐに真面目な顔に戻り本来の目的を言った。

「ギルドに登録したいのですが―――」

「そうですか、少々お待ちください」

 その言葉を後に彼女はカウンターの後ろに続いている部屋に入り、手元に用紙持って戻ってきた。

 その紙をカウンターの上に置いて、ペンらしき物を手渡された。

「こちらの用紙にあなた様のお名前と、年齢、出身地、など個人の証明が出来るものを書いてください。それと、入国証明書はお持ちですか?」

「いいえ、この国は初めてで……」

「そうですか、ならこの用紙に必要事項を書き終えたあと、入国証明書発行に1銀貨必要ですが発行しますか?」

 不自然無く会話に出てきた銀貨とやらに覚えの無い退魔術師は内心かなり焦った。

(銀貨ってなんですか!?……相棒!! ポケットに銀貨とやらを一枚創ってくれ!)

 すると、彼の言葉に耳を傾けていた悪魔はポイっと何等苦も無く彼のジーンズのポケットに数枚の銀貨を“創り出した”。

 それに気づいた彼は銀貨を払うことにした。

 渡された紙の記入欄を埋めたが、出身地だけは決められなかったので、まだ未開の地とされている東の大陸はどうかと相棒に促されたので、それを書いた。

 書き終えた様子を見て、カウンターの女性は声をかけてきた。

「記入が終わりましたら此方に」

 記入漏れが無いか確認し紙を渡す。

 さらに渡された彼女が紙を見直し、確認。

「はい、確認いたしました。では後日ここに来ていただければカードをお渡ししますので、その際にギルドいついてご説明させていただきますのでご了承願います」

 女性の話に頷き、ギルドを出る。

 まるで、バイトのときの面接のような感じであまり緊張はしなかったが、貨幣のことはいやはや焦って取り乱しそうになったのをいまさらになって笑う退魔術師であった。

                                   ☆

 ギルドを後にした後、この街の情報を集めるために聞き込みを開始した。

 この街の名は「まだ決まってないw」と言うらしい。 

 治安はそこまでよくは無い。貴族の力が強く、奴隷などの非合法なことをやる連中もいるとのことだ。 かなりの嫌悪感を感じた彼だが、そこは異世界ということで無理やり納得した。

 ある程度の周辺把握は出来たし、面白い情報も入った。

 当然、日本と違って盗賊や憲兵、騎士、などが存在し普通に絶対王政みたいな世界らしい。

 それに特に驚いたのが魔法だ。

 なんだかんだで、退魔術師として魔法に似たようなものは使って入るが、魔法と魔術は違う。

 現代人の高校生にとって魔法は夢の産物なのである。 

 だから、それが使えるとなるとやはり興奮するだろう。

 ぜひ、習得できるなら使いたいと思うもので、どうやってそれを教えてもらうかは追々考えるとして今日は、今晩泊まる宿を探していた。

 その、途中。

 すでに月明かりが夜の街を照らしている中、大通りの外れにフードを被った子に、スキンヘッドのいかにも人相の悪い犯罪者のような男二人組みが言い寄っていた。

 その様子を眺めながて何をしているのかは薄々理解できた。

 何やら、スキンヘッドの二人組みの一人は苛立ちを感じたのか、フードを被った子を壁に押し付けて脅すように拳を壁に打ち付けた。

 フードを被った子は恐怖を感じたのか、体を強張らせて震えていた。

 その様子を見て、退魔術師の彼の良心が行動を起こさせた。

 事を起こしている二人に後ろから声をかけた。

 出来るだけ低く、怒気のこもった声で。

「おい、やめろ」

 声をかけられた二人は突然背後からかけられた声に驚いたが、振り返ってみるとそこには自分たちよりも一回りも年が下回っている子供だったので、すぐに警戒心を解き、先ほどの威圧感のことも忘れへらへらと笑って此方を見る。

「なんだ我鬼、お前も俺たちに金くれんのか?」

「くれるよな? お前だって俺たちにボコされんのやだろ?」

 二人の男の言葉に呆れさえも出てこないほど無関心な状態でつき返した。

「だまれ、お前らみたいな人を脅して金を出し抜こうとするやつは嫌いなんだよ。だから、おとなしく逝っとけ」

 その言葉のすぐ後に、退魔術師の拳は一人の男の腹に食い込んでいた。

 そのまま、腹を殴られた男は糸がプッツンと切れたように地面に倒れた。

 その様子を見たもう一人の男は仲間がやられたので敵意を剥き出しにしてきたが、そんなものは無意味と感じるほど男は裏町の建物に食い込んでいた。

「ふー、大丈夫か?」

 戦闘を終えた退魔術師は、気軽な感じでフードの子に声をかけた。

すると、声をかけられた本人はビクっとなったが、すぐに体制を整えたのか本当に感謝するようにありがとうございました、と言った。

 顔を隠すようにして早々と退魔術師の前から逃げ去った。

「何なんだろうな……」

「さあ、悪魔には人間のことは契約者ぐらいしかわかんねえよ」

 








いや、本当に街の名前決まってません。


だれかいい名前教えてください。

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