第三都市第二十三地区支部署(旧東京都庁)
蓮と櫻は学校の屋上で作戦を考えた。
「櫻、どうするの?」
「決まってるでしょ!突っ走るだけよ!」
櫻はそこまで詳しいとこまでは決めていなかったらしく作戦など考えてもいなかった。
櫻は続ける。
「大丈夫よ!なんとかなるわ。」
その言葉を信じて蓮も強く頷き、学校を出る準備を始めた。
◇5分後
二人は学校の正門に向かって走り出した。
正門の裏には一人連合の人物のような影があったが、そんなのは関係ないように二人は走り去っていった。
「君たち!!待ちなさい!」
後ろから連合の人の声が聞こえた。
蓮はその瞬間後ろを見て、距離を確認した。
蓮が少し安心して息を吐き、前を向き直すと、今度は前に二人の人物が道路の脇にある、電柱の後ろから現れた。
「っっ!!」
蓮と櫻はその場でストップし、前にいる二人を見つめる。後ろにも正門で待ち伏せしていた一人が追いつき、一本道の中、蓮と櫻は挟まれた。
「どうする、櫻。」
小声で蓮は櫻に尋ねる。
「仕方ない……術を使うわ。」
「分かった。後ろの一人は僕がやる。」
「任せたわ。」
蓮は頷き、櫻と背中合わせで攻撃体制を整えた。
「動くな!第三都市第二十三地区の支部署から直々にそこの男を監視しろと命令がきている!大人しく言うことを聞きなさい!」
連合の人物は拘束用ハンドガンを蓮と櫻に向けてきた。
櫻はそれに対して、質問した。
「なんで、監視如きにハンドガンまでを持ってるのよ。」
「それは……」
連合の人物は少し動揺していた。
「いいわよ。勝手に監視しててください。」
「そ、そうか……なら、お前ら、銃をおろせ。」
連合の一人がそう言うと、連合の人物たちは、ハンドガンをしまい始めた。
櫻は連合の人物たちの隙を見逃さなかった。
櫻は片手を地面に着け、もう片方の手を空に向け、目を瞑った。
その瞬間、連合の人物たちの足元は凍ってしまい、下半身が動かなくなってしまった。
「っ!貴様!何をした!」
連合の一人が頭に来たのか、夕焼けの中、怒号が鳴り響く。
櫻は小さくニヤつき、状況を説明する。
「なにって、ただあなたたちの足元を凍らせただけでしょ。」
「ただの高校生がこの硬さの氷を的確に私たちの足元に出現させられるのか……」
連合の一人が、呆然としながら、何故このようになったのか必死に考えていた。
パッときたのか、焦り口調で、櫻に向かって言った。
「お、お前は……あの、吉祥寺家の創造魔術使いのお嬢様なのか!」
それを聞いた、連合の一人が少し額に汗を滲ませながら「そんなはずないだろ」と笑いながら言ったが、それに対して櫻は返答する。
「その通りよ。でもね一つ違うところがあるわ。私はお嬢様じゃないわ!」
櫻は右手を連合の人物たちに向けて何かを行おうとした時、連合の足元の氷が溶け始めた。
「っ!!」
「まずいわね。」
先程まで櫻に対して恐れ顔をしていた連合の人物たちは、身動きが取れるようになり、再びハンドガンを構えた。
「ふっ、貴様の魔術は対したことないんだな。」
櫻は少し動揺していたが、蓮が櫻の肩を叩き、小さな声で、呟いた。
「二人はどうにかできる。だから櫻の前にいるやつの足元をもう一回凍らせてくれ。」
「分かったわ……でもどうやって。」
「大丈夫、作戦はある。だから安心しろ。」
「了解した。」
二人は息の合った動きで行動を開始した。
蓮は前にいた一人の連合の人物をじっと見つめて、隙がないかを確認する。
「お前たちはなんで僕を狙うんだ?」
「そ、それは……」
蓮の質問に動揺したのか、一瞬だけ力が抜けた。
その隙を見逃さなかった。
蓮はその瞬間、連合の人物の方に向けて、駆け出した。
連合の人物は「バカが!」と呟き、引き金を引いた。
「(まずい!!)」
その時だ。
「(あれ、弾が遅く見える……。なんでだ、前の人も遅く見える。)」
蓮は視界は誰よりもゆっくり動いていた。
「(そうだ!今の僕には百識眼があるんだ。だから普通の人の百分の一の速さで見えるんだ。これなら!)」
蓮は自分の顔目掛けて撃たれた弾を簡単に避け、連合の人物の懐に入った。
そして蓮は渾身の拳を相手の顔面目掛けて放った。
「おりゃぁぁぁ!!!」
「グァッ!」
殴られた瞬間に気絶したのか、連合の人物は「ドスッ」と音を立てて背中から倒れた。
「なんとか、倒したな……」
安堵していた蓮だが、いきなり遠くから見られている感覚を感じた。
「(なんだ!)」
しかし何も起きなかった。
「今のは何だったんだ……これが百識眼の代償なのか……。ってか、櫻!大丈夫か!」
慌てて問いかけるように櫻の方を振り向いた。
「大丈夫よ、二人って言われたから三人倒しておいたから。」
「あんた、すげぇな。」
櫻は少し呼吸が荒かったが手についた土を払う余裕があった。
蓮は安心したのか、「ふー」と息を吐いた。
「よかった……ってか、この人達どうする?」
考えてなかった二人は目を点にした。
「そうね、まぁほっといていいでしょ。」
「櫻、それは非人道的では……」
「な、何よ!私いなかったら今あなたどうなってたと思ってるのよ!」
「まぁ確かにな。」
二人はいつも通りに会話をしているが、蓮がここで思い出す。
「てか、早く行かないと!」
「そうな、早く行かないとね、第三都市第二十三地区支部署に。」
「うん……」
◇同日午後8時半
青梅魔術高校前駅から電車をニ本乗り継ぎながら、第三都市第二十三地区支部署の最寄である、新宿駅に着いた。
太陽の光はいつの間にか無くなり、真っ暗な世界の中で輝いているビル群の中を蓮と櫻は歩いていた。
「なぁ櫻、改めて思うけどさ、あんたの魔術すげぇな。だって触った物質を処理して、二十四時間以内ならその物質なんでも応用できるもんなー。」
「なんでもじゃないわ。まず、電気みたいな固形じゃ無いものは私の能力じゃ創造できないわ。」
「へー」と言う顔をしている蓮に続けて自分の弱点を教える。
「あと、触れた固体物質の密度であったり、質量で作れる物は変わってくるのよ。今回使ったのは、朝水筒に入れようとした時に落ちた氷、つまり一般家庭で使われている市販の氷と同じなの。だから、すぐ溶け始めたっていうわけ。」
「なるほど、金属は金属でもアルミとダイヤモンドじゃ作れるものが違うってことか。」
「そうね。」
そのような話をしている内に前に見えてきた。第三都市第二十三地区支部署だ。
「やっぱそうだね。」
「ええ。そうね。」
二人は確信した。
この世界は違う世界だと。
昨日までここに建っていた建物はツインタワーだったが、今ここに建っているのは円柱型の地上三百メートルを超えているものだ。
「(ここに、戻れる方法があるはず。でも……)」
考え込んでいる蓮の姿を見て櫻も考え込む。
「ねぇ、櫻。どうやって入る……」
「き、決まってるじゃないの。正面突破よ。」
「いや、普通に考えて無理でし――」
蓮がそれは無理と止めようとした時にはもう正面の出入り口に入っていた。
「ちょっと櫻!流石にまずいでしょ……」
「し、知らないわよ!そんなこと気にしてたら何もできないわよ!」
櫻は聞く気ゼロで迷わず建物の中に入った。蓮も櫻に続いて中に入った。
その途端、櫻が止まった。
「どうしたの櫻?」
「おかしいわね。人がいないわ。」
「確かに……外にあった駐車場にも車も人影もなかった。」
かなり不思議に思っている蓮だが、気にしていてはならないと思ったのか、迷わずにエレベーターのボタンを押した。
「今はありがたい状況じゃないか。目標はこの世界から出れる方法を知ることだろ。この状況で見つからなかったらいつまでも見つからないよ。」
「確かにそうね。気にしている暇はないわね。」
「ドアが開きます。」と蓮と櫻しかいない一階にエレベーターの声が響く。
「蓮、何階にあるか目星ついてるの?」
「うん。多分最上階だと思う。」
「その根拠は。」
「それが一番かっこいいから。」
「……」
蓮は真面目に答えたが、櫻は何も言えなかった。
「ドアが閉まります。」とエレベーターのドアが閉まり、上がり始める。1分半ほど登ったところで「ドアが開きます。」と、エレベーターが開いた。
「(よし、行くぞ!)」
最上階はエレベーターの目の前に一つの自動ドアがあり、部屋は一つしかない。
「暗証番号か……流石にわからないな。」
「私も全く……」
自動ドアの前で二人とも悩んでいた。
その時、急に自動ドアが開いた。
「え、」と衝撃を受けていた蓮と、ぽかーんと口を開けている櫻。
少し時間が経つと状況を理解して、二人とも部屋の中に入った。
部屋の中は映画館と同じぐらいの大きさのテレビが壁についいて、その前にはパソコンが一つ置かれている机がある。
「(部屋の中には特になし、質素な社長室みたいだな。)」
蓮はそんな事を考えてながらパソコンの方へ歩いていく。
「蓮、パソコンは操作できるわよね?」
「うん。任せて。」
「カチカチ」とキーボードの音が部屋に響く。
操作して10分ほど経った時に蓮がファイルを見つける。
「『スペランツァ連合本部からの計画通達』……なんだこれ。」
蓮はファイルをクリックし、中身を確認した。
その瞬間、蓮は背筋に衝撃が走った。
「なんだよこれ……」
「何が書かれてるのよ。」
蓮は画面に書かれている事を震えている口で読み上げる。
「この世界は、本物ではない……ここは第一異世界である……。ここには現実世界で抹消された個人の性格や魔術を処理するための世界だ……」
「なによそれ……」
この時、僕は知ってしまった。連合の裏、そして、自分にはなんらかの魔術が宿っている事を。
流れで書いてしまいました。




