第八十一話 無属性の魔法 その1
シファリアさんの友達で、冒険者のサリーナさんから色々と教わったことにより、僕は属性ながら魔法を使えるようになった。
その晩から僕は、冒険者ギルドから借りてきた『基礎魔法大全』を読むようになった。
阿形さんはというと、また作業に没頭するようになった。
基礎魔法大全によると、無属性魔法は支援魔法や補助魔法の一部とも言われている。
魔道具の回路部分は無属性魔法を回路化して、それを組み合わせることによって作られているものもあるらしい。
僕があのとき使った魔法は『捜し物』というもの。
基礎魔法大全には『物をなくしたときに便利』と書いてある。
目の前にある場合、淡く光ってくれる。
もし目の前にない場合は、その方角を教えてくれるとのこと。
効果範囲は思ったよりも広い。
町一つくらいは届くらしい。
探す物を手に持たなくても、大きさ、色、形など詳細に思い描くことが可能であれば、近い物を探すことができるとのこと。
あくまでも詠唱は魔法発動のきっかけであって、不可欠なものではない。
熟練することで基礎的な魔法の場合、詠唱が不要になることもあるそうだ。
「なるほどなるほど。そういえば薬草を探すのにも使えるかもしれないんだっけ? 思ったよりも汎用性が高いんじゃないかな? これってさ」
その日の日暮れまでじっくり、繰り返して魔法を発動させ続けた。
幸い、僕の魔力は少し休めば回復するようだ。
おかげで、何度も魔法を試すことができたというわけだ。
翌日、薬草の採取を始めたとき、一株だけ摘んだあと、左手の上に乗せる。
「えっと、『我が魔力を捧げる。捜し物を指し示せ、捜し物』」
すると、僕が向いている方向の右前に何かがあるようなものを感じ取った。
「これってもしかして、だよ?」
僕はその方向へ歩いて行く。
すると、なんと薬草があったではないか?
僕は手に持った薬草を『格納の術』で取り込んだ。
その後新たにナイフを使って丁寧に薬草を摘んでいく。
こうして魔法で探しては採取を繰り返す。
昼前になるころには、リュック一杯になるほどになってしまっていた。
以前の倍以上効率がいい。
冒険者ギルドへ戻って、買い取りのカウンターでシファリアさんは呆れていた。
「カズヤさん。こんなになるまでため込んでいたのですか?」
「いえ、その、あははは……」
シファリアさんは、僕が無属性魔法を使えることを知らないのだろう。
サリーナさんはおそらく、僕に無属性の素養があったことを彼女に伝えていない。
自分以外の秘密は知ってしまっても他の人には話さない。
きっと秘密にしてくれたのだろう、と僕は思った。
その晩、僕はあることを試してみようと思っていた。
道標亭の部屋に戻って、部屋の鍵を閉める。
『格納の術』の空間からあるものを取り出した。
テーブルと僕の左手に置いてあるものは、僕と因縁のあるもの。
にび色の金属でできた腕輪に透明の石が填められているもの。
それは、『隷属の魔道具』だ。
これのせいで酷い目に遭った。
こちらの世界へ連れて来られた際に、これさえ僕の腕に填められていなければ、暴れて逃げることもできたはず。
それどころか、阿形さんの覚醒ももっと早かったはず。
手のひらにあるものを、あらゆる形も忘れないようにじっくり見る。
目を閉じて、呪文の詠唱を始める。
「『我が魔力を捧げる。捜し物を指し示せ、捜し物』」
すると、正面の方向にあると感じ取れる。
目を開けると、そこには淡く光る魔道具がある。
「よし、次は」
テーブルの魔道具を『格納の術』の空間へ取り込む。
左手に乗せたまま、
「『我が魔力を捧げる。捜し物を指し示せ、捜し物』」
思った通り、魔法はどの方向も指し示さなかった。
「……よかった」
この王都には、この隷属の魔道具がないことがはっきりした。
僕は心の中で少しでも疑ってしまったことを『ごめんなさい』とこのソムルエール王国に謝った。




