第七十五話 魔法などの知識について その2
「人の中にある魔力の根源は、おへその下あたりから湧いてくると言われています。そこにあるだろう魔力をゆっくりと、胸、肩へ流れていくようにイメージするんです」
あれ? こっちの世界でもイメージって言葉を使うんだ?
「はい」
「そのまま肘へ、手首へ、指先へ魔力を移動させます。魔力を指先から少しずつ、絞り出すようにイメージします。最後にですね、魔法発動は慣れるまで、短い詠唱を唱えるんです。『我が魔力を捧げる。故に火よ灯れ』、と」
サリーナさんは魔法の詠唱を唱える。
すると彼女の指先に、一センチあるかないかの小さな火が灯った。
「おぉおおおお、凄いです」
思わず僕は手を叩いてしまった。
「ありがとうございます。私は四大元素の魔法は得意ではありません。ですが、この程度であればですね、基礎さえ知っていたなら発動が可能です」
(四大元素って確か、漫画で読んだことがあるけど。地、水、風、火だっけ?)
「はいっ」
「魔法はですね、人々の生活にも溶け込んでいる能力とも言えます。とはいえ、魔力があっても素養がないと発動させることはできません。その代わりに、魔法陣学と魔道具が発展したんです」
「魔道具というと、この時計もそうなんですね?」
僕は、ポケットに入れてある懐中時計を取り出して見せる。
「はい。その時計も中に魔法陣が刻まれていて、基本は魔法で動いているんです」
「確か、冒険者ギルドの身分証も魔道具だと聞きました。なるほど、だから生活に溶け込んでいる、ということなんですね?」
「はい、その通りです」
(そうだ、聞いてみないとだよね)
「ところで、魔法の素養は、どうやって調べたらいいものなんですか?」
「はい。聞かれるだろうと思って、用意してきました」
サリーナさんは、鞄から何かを取り出した。
それは様々な色をした数珠のようなものと、直径二センチくらいある、水晶球のようなもの。
「カズヤさん、両手の手のひらを前に出してもらえますか?」
「はい。こう、ですか?」
僕はサリーナさんの前に、手のひらを差し出した。
すると僕の手のひらの上に水晶球のようなものを乗せてくれたんだ。
「まずはこれを軽く握ってください」
「はいっ」
もしかしたら、僕にも魔法の素養があるんじゃない?
普通の人よりも魔力が多いらしいからね。
すると、水晶球は光を帯びていた。
結構明るく光ってるみたいだ。
「なるほど。カズヤさんは、私と同じか、それ以上の魔力を体内に有しているみたいですね」
「そ、そうなんですね」
「はい。では次に、これを軽く握ってください」
次は水晶球の代わりに、数珠のようなものを乗せてくれた。
これは、もしかしたら、もしかするかも?
「……あら?」
「ど、どうかしましたか?」
よくみると、何か透明な数珠みたいなものだけ光っている。
「良かったです。カズヤさんには無属性の素養があるみたいですね」
「無属性、ですか?」
「はい。例えばそうですね。『空間収納』なども無属性魔法の一種だと言われています」
そういえば、あまり言わない方がいいってシファリアさんが言ってたけれど。
でも、お友達だって言ってたから、大丈夫かな?
「え? これって魔法だったんですか?」
僕は手のひらの上に銅貨を出して見せた。
「あらあら」
するとサリーナさんは、唖然としていた。
「はい、その、僕も『空間収納』を持っていまして……」
「もしかしたら、他にも特殊な魔法のようなものをお持ちではありませんか?」
「はい、じつはその――」
「それ以上は結構です。秘密はあまり口にするものではありませんよ」
ぴしゃりと手のひらで僕を制するサリーナさん。
「は、はい。わかりました」
「なるほど、それでなんですね」
「……と、いいますと?」
「カズヤさんは私と同等以上の魔力をお持ちでした。その上、無属性に反応があってですね、四大属性に反応がないのは不思議に思ったのです。なるほど、他に魔法ではない能力をお持ちであれば、納得というものなのです」
うんうん、という感じにサリーナさんは納得している。
「ところでですね、無属性魔法というのは、どんなのがあるんですか?」
「はい。例えばそうですね」
サリーナさんはテーブルの上にある分厚いハードカバーの本を開く。
「この書物は『基礎魔法大全』といいまして、……あ、これがいいと思います」
くるりと九十度本を回転させて、僕にも見えるようにしてくれた。
そこには『捜し物』という魔法が載っている。




