第六十三話 魔法と魔術とスキル その2
魔法についてシファリアさんに尋ねたところ、あっさりとその存在を教えてもらえた。
「そうだったんですね。そうなるとですが、昨日いただいた地図にも描いてあったのですが、この王都の近隣には迷宮もあるじゃないですか?」
「はい。ございますね」
「いずれ浅い層でも構わないので、入ってみたいなと思っています。そのためには僕はあまりにも、ものを知らなすぎると思ったんです」
「あぁ、なるほど。確かに、その通りです。等級はどうであれ、何の予備知識もないままにに迷宮へ入るのはあまりよろしくありませんね」
「はい。迷宮の常識も知りませんし、この高い山の向こう側に何があるのかも知らないんです。そうしたことを教えてもらえたらなと」
「残念ながら私には魔法や、迷宮の専門的な知識はそこまで持ち合わせておりません。なのでそれでしたら、依頼という形になってしまいますが私が良い冒険者さんをご紹介したいのですが、いかがでしょうか? 少し教わればですね、このギルドにある蔵書を読んで独学で学ぶことも可能ですから」
「はい。ぜひお願いしたいです」
シファリアさんは難色を示さず、笑顔を見せてくれる。
「承知しました。現役で迷宮に挑戦されている冒険者さんですし、私の友人でもありますので、安心してご紹介できると思います」
「それは助かります」
「一度の依頼で内容にもよりますが一日二時間くらい。依頼料は銅貨五十枚ほどになりますが、構いませんか?」
「はい、大丈夫です」
『それで情報が手に入るなら、安いかもしれないな』
(そうですよね)
「あ、最後に、ひとつだけ教えてもらえますか?」
「何でしょうか?」
「魔法なのかそれとも能力なのかわかりませんが、こう、色々なものを格納できるのって知っていますか?」
「それは『空間収納』のことでしょう――もしかしてカズヤさん。持っていらっしゃるのですか?」
『なるほどな。オレたちの使う『格納の術』は、こちらでは空間収納と言うんだな』
シファリアさんは少し困った表情をしながら周囲を見回すと、両肩を落とすようにしてひとつため息をついた。
「すみません。受付をどなたか? ちょっとカズヤさん、こっちへ来ていただけますか?」
慌てて手を上げて、受付カウンターを出てくるシファリアさん。何やらやはり、ちょっと心配そうな表情をしている。
僕の手を引いて、前に説明してもらった際に利用した部屋の扉を開ける。扉にかけてある『使用可』の札をひっくり返して、『使用中』の札に付けなおしてドアを閉めた。
「カズヤさん、もしかして『空間収納』をお持ちなんですか?」
『持っていると言っていいぞ。簡単なデモンストレーションもしてやったらいい。格納、と言いながら「格納の術」を使えばいいだろう。もし失敗するようならオレが手伝ってやるから安心するといい』
(はい。わかりました)
僕は鞄から阿形さんの作った財布を取り出して、そこから銅貨を一枚出して手のひらに置いた。
「これをこう。『格納』」
一瞬で目の前から銅貨が消える。
「それでこう、『銅貨』」
すると手のひらに銅貨が出てくる。僕でもなんとかなったようだ。
「そんなに多くはできませんが、ある程度でしたら使えます」
「……久しぶりに『空間収納』を使える人に出会いました。ものすごく希少な能力なんですよ。これって」
「そうなんですか?」
「一部の商人さんが所持していると聞いたこともありますが、迷宮探索では重宝されるどころの話ではありません。腕に自信がないのであれば、絶対に口外してはいけません。いいですね?」
「わかりました。こうみえても僕、腕力ありますし、多少なら体術も使えますから」
「そうだったんですね。大っぴらでなければ、珍しい能力なので驚かれる程度で済むと思います。ですが気をつけてくださいね? 油断はいけませんよ?」
(もし、あの目元に傷を持つ男が現れたとしても、あの腕輪の戒めさえなければ、僕だってただやられていたわけじゃないと思っていまする。それに阿形さんと一緒であれば、負けることはないはずなんです)
『過信はよくないとは思うが、今ならば返り討ちにできるだろうな』
(ありがとうございます。阿形さん)
『慣れもあるんだろうが、一八くんもそれなりに場をくぐり抜けている』
(対人戦闘であれば、経験だけは積んでますからね)




