第六十二話 魔法と魔術とスキル。
『おはよう一八くん。おや? どうしたんだい?』
(あ、おはようございます。阿形さん)
迷宮の入り口を見た次の日。
僕は目を覚ました後少しの間、ぼうっと考えごとをしていた。
(僕たち、こっちの世界にきてからおそらくですが、半月くらいは経っているじゃないですか?)
『あぁ、そのようだな』
(千鶴姉さん、吽形さん。母さん、父さん、お婆さま、お爺さま。心配してるだろうな、……って思うと)
あちらの世界で僕は、行方不明になっている。
そのため、家族に心配させてしまっている。
そう思うと、不安で仕方なくなってしまった。
『元気を出せ、と無責任なことは言わない。だが、吽形が一緒ならおそらく、オレたちの身に何が起きているかをとっくに割り出せているだろう』
(それってどういうことですか?)
『オレたちが乗ってきた船のコントロールルームに、「金剛」があっただろう?』
(はい)
『あれを、吽形も使うことができる。もしオレの仮説が正しければ、いずれオレたちが生きていることも判明するだろう。そうなればおそらくは』
阿形さんの仮説というのは、『この異世界は別次元や平行世界などではなく、太陽系ではない外宇宙のどこかである可能性が高い』ということ。
(はい)
『吽形は千鶴くんと相談するはずだ。もし、二人だけの手に負えないと判断したなら、吽形は静枝殿たちに自分の存在を打ち明けることとなるだろう。静枝殿はあの地の実力者だ。一八くんとオレが何年かかって帰ってきたとしても、どうにか誤魔化すことも可能だと思わないか?』
(お婆さまならできそうですね)
『吽形のことだから、一八くんとの繋がりが切れていることに、早々気づいているだろうな』
(はい)
『そのことを話したなら間違いなく、千鶴くんは進んで吽形の眷属になるだろう』
(前もそう言ってましたからね。姉さんならそうしますよ、きっと)
『それにだな。イヴ殿もこちらへ戻ったら、力になってくれると言ってくれたではないか?』
そうだった。僕には阿形さんだけでなく、イヴさんも助けてくれると言ってくれた。
王都にいる沢山の人も助けてくれている。
だから、そうだったんだ。
(……僕は一人じゃなかったんですね)
『あぁそうだ。少なくとも一八くんの傍から、オレは離れるつもりはない。だからオレと一緒に帰る方法だけを模索し、それまで生き残ることだけ考えればいいんだ。そうは思わないかい?』
(はい。そうですね。ありがとうございます。頭がすっきりしました)
『すまなかった。一八くんが不安になる前に、話してあげるべきだったな』
(いえ。もう大丈夫です)
『何か不安なことがあれば、いつでも相談するように。いいかな?』
(はい。わかりました)
朝食を食べたあとに、僕たちは冒険者ギルドへやってきた。
朝一番だとそこまで混んでいないのを知っていたから、これだけ早い時間に来たというわけだ。
案の定、誰も並んでいなかったので、一番前に並ぶことができている。
「おはようございます、カズヤさん。今日も可愛らしいで――あららいけない。うふふふ」
シファリアは口元を押さえて誤魔化そうとしていた。
「……はい?」
「いえいえ、なんでもありませんよ」
「あ、はい。おはようございます。シファリアさん。そういえば、僕、田舎に住んでいたものでこっちに出てきたばかりで、知らないことが多くてですね、色々教えてほしいことがあるんです。これって依頼を出した方がいいんでしょうか?」
「そうですね。どのような件かによりますが、私がわかる範囲であれば、私がお教えしたいと思っていますが、……どのようなことでしょう?」
「あ、はい、例えばですね。あの、木製の杖を持たれている、あの冒険者さんいるじゃないですか?」
「はい、いらっしゃいますね」
「あの冒険者さんはもしかしたら、魔法を使えたりするんでしょうか?」
イヴさんが使っていたのは魔法か魔術かわからないけれど、魔法のほうから聞いてみることにした。
「そうですね。どの系統かはわかりませんが、魔法を使われると思いますよ」
(……あれれ? こんなにあっさりわかっちゃうとは思いませんでした。それでもこれで魔族ではない人間側にも魔法が存在するのは間違いないですね)
『なるほど。イヴ殿が使っていたのも魔法である可能性が高い。これは実に興味深い』
思ったよりもあっさりと、魔法は存在していて、この世界で使われてるのがわかった。




