第四十九話 地図の違いについて。
勢いに乗った、シファリアさんの説明はまだまだ続きそうだ。
「はい。外から迷宮に入って、迷宮の中で死んだ生き物は、骨も残さず迷宮に食べられてしまうらしいと報告があります。もしかしたら、迷宮はそうして食事をして成長しているのではないか? だからこそ、迷宮そのものが、巨大な魔物なのではないか? そう言われているんですね」
「……それは怖いですね」
『あの巨大な山に巨大な化け物が生息している可能性か。それは興味深いな……』
確かに、食虫植物のように匂いと形で誘って、獲物を食べる。
それが迷宮かもしれないと言われている。だとすればかなり怖いと思う。
「その、迷宮に入るためには、ある程度の等級にならないと駄目なんでしょうか?」
「えぇそうですね。迷宮に入るためには、四等級からと制限させてもらっています。自分の身を最低限守れるくらいの腕前がないと、許可を出せないんです」
なるほど。
等級制限があるということは、阿形さんが言った通りだった。
あと一等級上げないと、迷宮に入る許可をもらえない。
その前に五等級で狩猟があるということは、自分の身を守る経験を積ませる目的もあるのだろう。
「えぇ。この迷宮は、複数の核を持っていて、複雑に入り組みながら日々、成長していると言われています。それだけ危険だということなんです。そして、あの悪名高いファルブレストにも迷宮の入り口があると聞きます」
「やはり、そうなんですね」
「はい。以前ですが、迷宮は中であちら側と繋がっていたらしいのです。現在はどうなっているかはわかりません。そのため、我々を襲ってくるのは魔物だけではないかもしれないのです」
「そうなんですね。それは怖いかもしれません」
「はい。迷宮は、それだけ危険な場所なんです。だから慌てて入らないよう、気をつけてくださいね?」
「わかりました。詳しい話をありがとうございます。ところでなんですが」
「はい。私がわかることであればなんでもお答えしますよ」
「ありがとうございます。この地図、山の上側と大陸の端から先がないのは何故ですか?」
シファリアさんは考え込むこともなく答えてくれた。
「実はですね、二つほど理由があります。一つ目はですね、この山は、人が歩いて登ることは不可能なほどの標高となっています」
「なるほどです」
「東側はファルブレストがあるので詳しい調査ができません。ですが西は調査が終わっています」
「はい」
「そこで判明したもう一つの理由がですね、この先」
シファリアさんが指差したところは、この大陸の西端。
「ここから先が断崖絶壁になっていて、人が進むことが不可能な状態になっているのです」
「断崖絶壁っていうとですね。このあたりは、どれくらいの高さなんです?」
僕は、そこから先へは進めないと言っていた上の部分を指差してみた。
「そうですね。足を滑らせたら、命はないほどだと聞いています。その上、その先を登ろうにも魔獣の出現が多くて危険だということもあって、調査に出るには予算がかかりすぎるとのことです。ここから北には、人の住む国がないことから、調査は進んでいません」
シファリアさんが言うには、この大陸で北側にある巨大な山脈よりも南にしか、人の住む国は存在しないとのこと。
『なるほどな。そういう理由があったわけだ。ということはだ』
(何ですか?)
『この国もそうだが、この大陸に住む人たちには、飛行の手段がないのではないかと思うんだ』
(あ、そうかもしれませんね)
『まぁ、あまり細かく聞くのも、おかしいと思われるかもしれない。ここあたりにしておくのが無難だろうな。十分な情報も手に入れることができたと思うぞ』
(はい。そうですね。それならあとは)
「はい、ありがとうございます。あ、それとですね、ファルブレストの噂なんですが」
「はい。どんなものですか?」




