第四十八話 迷宮とは?
迷宮というキーワードは、ファルブレストでも聞いた。
ただ、迷宮がこの国で何を意味するのかは、話を聞かないとわからないだろう。
『迷宮か。やはりここでも無縁ではなかったんだな』
(そうですね。こちらの国でも、迷宮の向こうに魔族がいるとか。その魔族を恐れているのかなど。色々と興味はありますけど)
『あぁ、だが、何事も順を追うべきだろう。オレと一八くんであれば、通常の武器を使う対人戦闘であるなら、後れをとることはない。だが、迷宮には、人以外の生き物がいないとも限らない』
確かに僕たちは、『殺さず』という手加減をしながら、犯罪者を取り押さえて警察へ引き渡していた。
それを考えると、阿形さんと一緒の今なら、対人戦であれば負けることはないだろう。
ちなみに『殺さず』というのは千鶴姉さんの提案だった。
時代劇大好き阿形さんは『手加減せずとも成敗すればいいのではないか?』と言っていた。
だが、彼の奥さんの吽形さんは『千鶴さんがそう言うのなら、それが時代の流れなのでしょう』と阿形さんを諫めたことがあった。
沖縄はでは、内地のように大型の獣が出てきてそれを取り押さえてたとか、そういう経験はない。
そのため、人以外の何かが出てきたときの対応は未経験ではある。
(はい。そうですね)
『おそらく迷宮に潜るためには、それに応じた等級になっていないと駄目だという条件もありそうだ。オレなら、戦闘すらできない者に、危険な場所へ行かせることはないだろうからな』
(確かにそれはあるかもしれません)
僕と阿形さんとで話をしていると、シファリアさんが戻ってきた。
手には何かを巻いたものを持っている。
「これがですね、王都周辺の地図になります」
シファリアさんは、巻かれたも紙みたいなものを持ってきてくれた。
それを彼女が広げてみると、それはこの周囲の地図だった。
当たり前だが、ファルブレストから持ち帰った地図に、似ているような気がした。
少しだけ違う部分がある部分があるとするならそれは、この大陸の形状だった。
(北側にある山から向こう側が、描かれていませんね)
地図はこのソムルエール王国が中心に描かれてはいる。
だが、山側の途中がから向こうがなにも描かれていなかった。
まるで、この大陸の南半分だけが描かれているかのようにも見える。
『あぁそうだな。おそらくは何か理由があるのだろう』
(ただあれです。ファルブレストの地図と違うから、とは言えませんね)
『確かに。ファルブレストの間者だと思われてしまう恐れもある。それはやめておくに越したことはないだろうな』
(そうしておきます)
そんなやり取りをしていたら、シファリアさんは地図のある場所を指差してくれる。
「ここが王都で、こう街道が走っています。このあたりに迷宮入り口があります。ですが、ここ以外にも小さな迷宮の入り口が、閉じたり開いたりすると報告されています」
『落とし穴やネズミ取りのような罠にも似ているな?』
(ランダムに発生するトラップ。確かにそうですね)
自動的に開け閉めされる出入り口、確かに何かの罠にも似ているだろう。
「それって何故なんですか?」
「はい。迷宮はある決まった場所を除いて、小さなものが開いたり閉じたりした形跡がある、そう、報告されています。例えば、迷宮に出てくる魔物を倒すと、魔石や宝に準ずるものを落とすこともあります。小さな入り口が開いたり閉じたりする現象は、まるで罠のように、それらをエサにして、人間を引き入れているのではないか? と想定されています」
シファリアさんの説明がまるで、饒舌になったときの阿形に匹敵する情報量に思えてしまった。
おそらくは、これくらい簡単に説明できないと、冒険者ギルドの職員としてやっていけないのだろう。
そう言う意味では、シファリアさんは博識な女性なんだと僕は改めて思った。
けれど僕は、阿形さんに匹敵するその勢いに押され気味になってしまう。
「そう、なんですね」




