第四十二話 僕の身体に起きていること。
これはこの世界へ来たばかりのときの、不思議な現象についての考察。
それはもちろん、僕の身体にある『女性アレルギー』についてのこと。
僕は、『転移術式』によってこの世界へ来たばかりのときの状態と、あの『隷属の魔道具』をつけられていたときの状態では、症状が出ていなかったかもしれない、という仮説を立てることができるのだ。
『状況的に考えるならば、一八くんのあの症状は、魔力が関係しているのかもしれないな』
(はい。魔力が枯渇していたから、あの女性たちに触れられても蕁麻疹が出なかったのかもしれませんね)
『そうなるとだ。オレと吽形の眷属になったあの日から徐々に、一八くんの体内に魔力が増えていった。魔力が人より多くなったことによる、副作用のひとつが症状を引き起こす要因となっているかもしれない。もちろん、オレたちの体質を引き継いだことによるのあるのだろうけどな』
確かに僕は、この世界へ来たときは全裸だった可能性が高い。
そうすると、あの侍女という人たちに着替えさせられたかもしれない。
それなら必ず、手が触れていると思う。
それならきっと、蕁麻疹が出てきて痒さで目を覚ましたかもしれないから。
魔力が枯渇していることによって僕の身体は再生の力が発動しない可能性が高い。
そう考えると、あの男に腕を斬られて、『隷属の魔道具』が外れたことによって魔力が回復していった。
だから僕はある意味、運が良かったのだろう。
それはさておき、もし、『女性アレルギー』の発症となる要因が魔力でなければこう考えられる。
『女性アレルギー』によって発生した蕁麻疹が、再生の力によって治まることはなく拡大してくだろう。
そうなると、あまりの痒みにもっと早く目を覚ましていたはずだ。
だが、状況的にそうでなかったと考えるのが妥当である。
それ故に、魔力の残量も、『女性アレルギー』に関係しているものと考えられるのだろう。
『あぁそうだな。だが単純に、魔力だけがあの症状を引き起こしているのであれば、こちらの世界の男性は皆、一八くんと同じ症状に苦しんでいる、そうではないだろう?』
(確かにそうですね)
『おそらくは、オレと吽形から引き継いだ体質もその要因となっているんだろうな』
(正直よくわかりません。ですが、魔力が切れていたならあの症状も出ないかもしれない。そういうことですよね?)
『あぁ。おそらく、だがな。まぁ、検証してみなければ、わからないんだが』
(確かにそうですね。でも痒いのは嫌です。それに、そのシチュエーションを作るには、協力者となってくれる女性がいないと駄目ですよね?)
『あぁ、そうだろうな。検証作業は簡単ではない。少なくとも、オレたちの種族の男性に、そのような症状が現れたという話を聞いたことはない。それにな、一八くんの中に長い時間お世話になってはいるが、発症したときのメカニズムはわからず仕舞いだった。だから実に、興味深いな』
(あははは)
こうなってしまうと、阿形さんでもわからない現象なのだから、僕が何を考えても追いつかない。
考えるより慣れろ、ということなのだろう。
僕はそう思って、とりあえずは諦めることに決めた。
どちらにしても、阿形さんたちの体質を引き継いだから、これだけ丈夫な身体になった。
その反面、そういうデメリットもあっても仕方がないと思うこともあった。
あの神話に出てくる英雄にだって、弱点があったという話も書かれている。
どんなヒーローにだって、抱えている悩みや弱みがあった。
いいことばかりならば、都合が良すぎるだろう。
僕はふと思った。
すっかり忘れてた。
そういえばあのエレオノーラが『迷宮を挟んで対局の位置に存在する、魔族等の脅威に晒されております。そのため、あなた様のお力に頼る以外ない』
言っていた。
あれはいったい、どういうことだったのだろうか?
僕がもし、あちら側の期待に添うような加護を得ていたとしたら、迷宮の何をどうさせたかったのだろうか?




