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スーパーヒーロー、異世界へ行く ~正義の味方は超能力で無双する~  作者: はらくろ


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第三話 おかしいって





「ありがとうございます。カズヤ・ヤエデラ様。ではカズヤ様と呼ばせていただきます。さて、話を戻させていただきますが、私が召喚術式を使って、カズヤ様をこちらの世界へお呼びした形になるわけです。ここまではおわかりでしょうか?」


(何が起きてるんだろう? こちらの世界? あ、そうだ。阿形さん、阿形さん、……あれ? 聞こえない? 阿形さんってば、どうしちゃったの?)


 僕は、僕の中にいるはずの阿形さんに、何度も呼びかけた。

 だが、何も返事をしてくれない。


「は、はい」


「私どもの国は、現在、迷宮を挟んで対局の位置に存在する、魔族等の脅威に晒されております。そのため、カズヤ様のお力をお借りするため、お呼びさせていただいたという次第でございました」


「はい」


「召喚術式により世界を渡った者には、特別な力を授かる場合がございます」


(そんな――)


「そんな力が僕にもあるのですか?」


 おかしい。躊躇(ためら)うことなく口から出てしまっている。


「えぇ、間違いございません。こちらでお調べしてもよろしいでしょうか?」


「はい。お願いします」


(ここがどこだかわからないんだ。嫌だと言うのは悪手でしかないでしょう? それなら少しでも、大人しく従うふりをしたほうがいいと思う。……ってあれ? なんでそんな考えになるんだろう? 間違いじゃないんだろうけど)


 少なくとも目の前にいるエレオノーラさんは、僕がオクターヴとしてこれまで相対してきた悪人と同じ感じはしない。


(用心に越したことはないけれど、警戒している素振りは見せないほうがいいと思う、からね。あれ? なんでそう思うんだろう?)


「確認の魔道具を」


「はい、姫様」


(確認の魔道具ってなんだろう?)


 髪の長いほうの侍女らしい女性が何かの魔道具らしきものを、両手に持ってやってくる。


 それは週刊誌ほどの大きさで、無骨なタブレット端末の形に似た、一センチくらいの厚みがあるもの。

 素材は金属なのか、それとも石盤なのか?

 冷たい感じの黒い色をしている。


「カズヤ様、この魔道具に右手を置いて『情報の閲覧を許可する』と唱えていただけますか?」


 エレオノーラさんはこの魔道具の使い方を教えてくれた。

 僕は彼女に言われた通り、侍女さんが持ったままの魔道具の表面に右手の手のひらを乗せる。


「えっと、『情報の閲覧を許可する』」


(ちょっと待って、やっぱりおかしいって。何の躊躇もなく許可とか……)


 すると何やら文字のようなものが浮かび上がってきた。


(何? 『言語理解』?)


「ひ、姫様、これをご覧ください。その、加護が……」


 髪の長いほうの侍女さんは驚いたような表情をして、魔道具をエレオノーラさんに見せた。

 するとエレオノーラさんの表情からは、さっきまであったはずの穏やかな優しい感じの笑みが消えていき、冷たい表情しか残っていない。


「――げ、『言語理解』だけですって? まさかまた、勇者様ではなかったのですか?」


 このエレオノーラという女性からは、先ほどまであった笑みが消えていた。

 彼女の口調まで変わってしまっている。


(どういうことだろう? 『勇者ではない』って? え? 加護? 何の加護がなかったから? さっぱりわからないんだけど……)


「姫様、この者はいかようにいたしましょう?」


「私は次の勇者様を迎える準備をせねばなりません。その少年に構っている暇はないのです。……そうですね、再び男爵に買い取らせるのがいいでしょう。少なくとも『魔力が多い』という条件には合致したのでから、魔力庫として利用価値はあるで――いいえ、男に利用価値はありません早々に処分させなさい。前回の失敗のおかげでただでさえ、召喚に時間がかかってしまっているのです。これ以上、お母様をお待たせするわけにはいかないのですから」


 エレオノーラは焦るような口調で侍女に指示を出す。

 僕は、部屋から出て行こうとする彼女を呼び止めようとした。


「ちょっと待って、それってどういうことで――」


「お前は姫様にお声がけをする立場にありません。それ以上は不敬となります」


 エレオノーラに向けて伸ばした僕の右手首にある魔道具を、髪の短いほうの侍女の女性に鞭のようなもので叩いた――その瞬間、手首から全身に広がるように今まで味わったことのない激痛が襲ってきた。


「――ぁがっ! ぃだっ、いだっい」


 それ以上、声が出ない。もがき苦しむ僕に向けて、先ほどの侍女が鞭のようなものを向けて言った。


「その腕輪は、魔力を吸い上げ大人しくさせ、忠実となるように思考を制御し、ときにこうして奴隷に戒めを与える隷属の魔道具。こうなることを予想して、あらかじめ付けさせておいたのです、大人しくするのが利口というもの――」


 全てを聞く前に僕は、全身を走る激痛に負けて意識を手放してしまった。



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