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スーパーヒーロー、異世界へ行く ~正義の味方は超能力で無双する~  作者: はらくろ


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第二話 召喚?





(――ん?)


 僕は重たい目蓋をゆっくりと開けた。

 一番最初に目に入ったのは、薄いベージュの色をした天井だった。

 明かりがつけられていないのか、薄暗く感じた。


 これまで見たことがない天井。

 木目とも、コンクリートとも違う質感のもの。

 おそらく、石造りだと思うのだが、高さがあって今一よくわからない。

 でもなんか、どうでもよく思えてくる。


 どこかの病院だろうか?

 それともどこかの施設か?

 僕の記憶にある場所に、こんな色の天井はなかったはずだ。


 僕は目元を右手の甲で拭った。

 すると手首に見覚えのない腕輪のようなものが填められている。

 何かの金属で出来ているのだろうか?

 にび色で見た目は重量感はあるが、実際はそこまで重さは感じない。


 腕輪は一センチ弱ほどの厚みがあって、幅は三、四センチはあるだろうか。

 男性用の時計より少し太い感じがする。

 腕輪には、直径二センチ以上ありそうな、かなり大きくて真っ赤な宝石みたいなものが埋め込まれている。

 ルビーのような赤じゃなく、もっとどす黒い例えるなら血液のような赤だった。


 僕はネックレスやブレスレットの類いをしたことがない。

 もちろん、そういう趣味もない。

 僕は右利きだから、時計をつけるなら左手。

 だから右腕にこれがあるのが、どうしても違和感でしかない。

 でもやはり、どうでもよく思えてくる。


 身体を起こそうとしたけれど、全身がだるくて力が入らない。

 なんとかして起き上がろうと何度も試していた。

 けれど、その度になぜか


『別にそんなに無理しなくてもいいんじゃない?』


 とどうでもよく、思えてしまう。


 そうこうしているうちに、近くでドアが開くような音が聞こえた。


「――目を覚まされたのですね」


「……え?」


 声のするほうを見ると、そこにはメイドさんの着ていそうなメイド服に似た服装を身につけた女性がドアを開けて先に入って来ていたようだ。

 その女性に続いて後ろから、もう一人入ってくる。

 それは女性で、最初のメイド服に似たもととは違う感じ。

 白を基調とした立派な服装をした金髪の女性。

 その後ろには、最初の女性と同じ服装をしたお人が入ってきた。

 僕に声をかけてくれたのはきっと、二番目に入って来た女性なのだろうと思った。


 最後に入って来たメイド服を着た女性は、僕の背中を支えて身体を起こすのを手伝ってくれた。

 身体を起こしきると、クッションみたいなものを置いてくれる。

 これなら今の僕でも身体を起こしていられるだろう。


 でもなんだろう?

 何か忘れているような、気がしてならない。


 背中を支えてくれた女性は、金髪の女性の後ろへ回った。

 すると、三人ともその場に片膝をついて、胸に両手を交差させて添えると、僕にお辞儀をするようにして目を閉じたんだ。


「この度は、私たちの召喚に応じていただき、ありがとうございます」


 この女性の言う『召喚に応じた』とは、どういうことだろう?

 僕には、そんな覚えがまったくなかったからだ。


「私はこのファルブレスト王国第一王女、エレオノーラ・ウィズ・ファルブレストと申します。勇者様」


「え? 勇者様、ですか?」


 一瞬驚いたけれど、すぐに落ち着いてしまった感じがする。


(ふぁ、ファルブレスト王国って、そんな国あった?)


 僕はそれなりに勉強が出来ると思っている。

 けれど聞いたことがない国の名前だった。

 そうなるとここは、地球ではないということだろうか?

 だとしたらまるで以前、姉さんが貸してくれた漫画やラノベのシチュエーションに似ている。


(あれ? ちょっと待って、そんな悠長なこと考えてる場合じゃないでしょ? 異世界召喚とか、もしかして僕、死んじゃったんじゃない? いやいや、夢でしょ? でも夢にしてはリアルすぎない?)


 僕は左手の親指の腹に、中指の爪をたててちょっと強めに押し込んでみた。

 すると思った通り痛みが感じられる。

 夢で痛みを感じることはないはずだから、これは現実なのだと改めて認識した。


(間違いなくこれは現実なんだよ。でも、僕の前にいるこの、エレオノーラさん、だったっけ? 彼女はほら、日本語を話してるように思える。僕の耳にも、そう聞こえるから)


「はい。そうでございます。先だってご帰還されました勇者様に代わって、聖剣の担い手になっていただきたいのです。そのために必要な条件のひとつである『魔力の多さ』を元に、私が『召喚術式』を使ってあなた様見つけ出し、こちらへお呼びした次第にございます」


(どういうこと? 勇者様が帰った? 聖剣の担い手? え? 僕、魔力が多いの? 召喚術式? 情報量が多すぎてちょっと何が何やらわけわかんないってば……)


「私どもの国は、現在、迷宮を挟んで対局の位置に存在する、魔族等の脅威に晒されております。そのため、あなた様のお力に頼る以外ないのでございます」


 目を軽く閉じ、少し伏せるように俯いていたエレオノーラは、僕をじっと見つめてくる。


 金髪に近い、薄手の髪の色に似合わないほど、黒目がちなエレオノーラの瞳。それは優しげでいながら、吸い込まれそうで目を離せない、訴えかけてくるような力強い何かを持っている。彼女の瞳を見た瞬間、なぜだかわからないが、『この人に協力しなければいけない』という気持ちになってくる。


「は、はい」


 僕が返事をすると、エレオノーラは笑みを見せてくれる。これでよかったのだろう。僕はそう思ってしまったのだった。


「……ところで、私はあなた様をどう、お呼びすればよろしいでしょうか?」


「あ、はい。すみません。八重寺(やえでら)一八(かずや)、八重寺が家名で、一八が名前です」


(あれ? なんで僕、こんなに素直に話しちゃうんだろう? 苗字まで言っちゃうとか、まずくない?)



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