第50話 ミミの気持ち、リアナの本音
出発を翌日に控えた夜。
リアナの部屋の扉が、こんこんと叩かれた。
「どうぞ」
返事をすると、ひょこっと顔を覗かせたのはミミだった。
「お邪魔しまーす」
「……こんな時間にどうしたんですか?」
「ううん、ちょっと話したくなっちゃって」
いつもの調子で、遠慮なく部屋に入ってくる。
「ねえ、この前の傷って、本当にもう大丈夫?」
「はい。ミミさんのおかげで……あ、もちろんエリシアさんもですけど」
「よかった。……でも、わたし、まだまだだなぁ。魔法でちゃんと治せなかったよ」
「ううん。……よくは覚えてないんですけど、ミミさんの舌、とてもあたたかくて……気持ちよかったです」
「ちょっ……! エッチな言い方しないでよ、リアナちゃん!」
ミミは慌てて両手を振り、頬を真っ赤に染めた。
「ち、違いますから! そんな意味じゃなくて……!」
二人して真っ赤になって慌てる。
しばし見つめ合い――同時に小さく笑ってしまう。
緊張も照れもほどけ、柔らかな空気が部屋に満ちていった。
「ねえ、リアナちゃん。久しぶりにマッサージしてあげよっか?」
「えっ、今ですか?」
「うん。明日から長旅だし、少しでも楽になっておいた方がいいよ」
「……くすぐったりしたりしないでくださいよ?」
「絶対しないよー」
絶対にしそうな顔で応えるミミ。その手は、すでに宙を“もみもみ”していた。
「……その顔、全然信用できませんけど」
「大丈夫だって。ほらほら、うつぶせになって〜」
「うーん……じゃあ、お願いします」
押しに負けて、リアナはベッドに横になる。ミミは背中に跨り、肩や腰をほぐし始めた。
「ん……やっぱりミミさんのマッサージ、とても気持ちいい」
「えへへー。こっそり練習してたんだよ?」
「ふふ、意外ですね」
ミミの指は肩口にそっと置かれ、凝りを探るように小さく円を描いて押しほぐしていく。
肩から背中へ、腰へと順に力を移しながら、強すぎず弱すぎず、呼吸に合わせるように丁寧に。
「ここ、少し固いね。痛くない?」
「ん……大丈夫です。むしろ……すごく楽に……」
最初こそ真面目にほぐしていたミミだったが、次第に力が抜け、指先はほぐすというより撫でるように背を滑りはじめた。
「っ……あ、そこは……」
「痛かった?」
「い、いえ……くすぐったくて……っ」
ミミは悪戯っぽく目を細め、同じ場所をわざと指で突いた。
「きゃっ……や、やめてください!」
「ふふふ、リアナちゃんの弱点発見〜」
「ず、ずるいです! もう……っ」
抗議の声も、どこか笑いが混じってしまう。
そんな身をよじるリアナを見下ろし、ミミは顔を近づけて囁いた。
「……ねえ、もっと気持ちよくしてあげよっか?」
「ちょ、言い方!」
真っ赤になったリアナの抗議に、ミミは「えへへ、肩のことだよ?」と舌を出してごまかす。
再び肩に指を添え、今度はゆっくりと力を込めて丁寧にもみほぐしていく。
こわばった筋肉が少しずつほどけていき、リアナの頬が自然と緩んだ。
そんなタイミングで、ミミがふいに問いかける。
「じゃあさ、リアナちゃんはセイのこと、どう思ってるの?」
「えっ……ど、どうって……」
「最近のリアナちゃん見てたらさ、セイのこと好きなんだろうな〜って思っちゃって」
にやりと笑うミミに、リアナは慌てて身を起こした。
「す、好きって……! そんなことないです。からかわないでください」
「えー? でも分かりやすいんだもん。セイが話しかけると、リアナちゃん絶対ちょっと声のトーン変わってるし」
「そ、そんなこと……!」
否定しかけて、リアナは視線を泳がせてしまう。
「じゃあ、ミミさんはどうなんですか?」
「大好きだよ。だからリアナちゃんに聞いてるんだよ。……私がセイのこと好きでもいいのかなって?」
「ミミさんがセイのこと好きなのは、私がどうこう言うことじゃないですけど……」
リアナはうつむき、頬を赤く染めながら小さく続けた。
「……私も、好きです」
そのか細い声に、ミミはぱっと笑顔を咲かせる。
「じゃあ、ライバルだね!」
「ら、ライバルって……ミミさんと……?」
「えへへ。でもね、実はリアナちゃんだけじゃないんだよ?」
「……え?」
わざと小声で区切りながら、ミミはきょろきょろと辺りを見回す。
「エリシアちゃんも、最近ちょっと怪しいんだよね。セイのこと、絶対意識してるよ」
「なっ……!」
リアナの顔がさらに真っ赤になる。
「ほらほら〜。そういうの気にしてる時点で、やっぱり好きなんじゃん」
「う、うるさいです!」
リアナの抗議もどこか照れ隠しに聞こえて、ミミはくすくす笑う。
「えへへ、こういうお話って楽しいね。ね、リアナちゃん」
「わ、私は別に……!」
「でも顔がニヤけてるよ?」
「に、ニヤけてません!」
必死に否定する声も裏返ってしまい、余計に可愛らしい。
ミミはまた肩を軽く押して、笑顔で促した。
「ほら、まだマッサージの途中なんだから。ちゃんと横になって〜」
リアナは言われるままベッドに身を預け、ミミは腰をゆっくりと揉みほぐしていく。
「……ねえ、セイってさ、ちょっと鈍感だよね」
「たしかに……それはそう思います」
「やっぱり、セイって本当に中身がおじいちゃんなんだね。転生ってやつだっけ?」
「本人がそう言ってますしね……若いのは本当に見た目だけですよね」
頬を赤らめながらも、思わず笑みがこぼれるリアナ。
その横顔を見て、ミミもにっこりと微笑んだ。
「……ありがとう、ミミさん」
「えへへ。明日も一緒だからね。ちゃんと元気でいてもらわないと」
そう言葉を交わして、二人は顔を見合わせ、また小さく笑った。
――そして、夜は静かに更けていった。
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▼ステータス情報
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:好き(リアナには少し遠慮しつつも、セイへの「大好き」を素直に口にする)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:淡い色のぴったりとした薄手のパジャマを装備。体調ばっちり。ただしマッサージで意外と体力を使った
- 補足:ライバル出現も「同じ好きな人のことを話せるから楽しい」という前向きスタンス
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(ミミにセイに対する気持ちをはっきり口にした)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:ゆったりしたキャラクターもののパジャマを装備。ミミのマッサージで身体もほぐれて体調ばっちり
- 補足:セイと話すときは声のトーンが変わっていると言われ、次からどう話せばいいか困惑ぎみ
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