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第49話 世界の中心の地・ヘルセイム

 セイたちの前に現れた大精霊は、心地よさそうに目を閉じ、すやすやと寝息を立てていた。


「……やはり寝ておったか」


 セイは額を押さえ、小さくため息をつく。


「どうやって起こそうかのう……」


 悩むセイを横に、リアナが一歩前へ出た。

 さっきまでの緊張が嘘のように、肩の力が抜けている。


「任せて! 私に考えがあるわ」


 そっと手を伸ばし、大精霊の頭を子どもをあやすように撫でる。


「おいおい、その“考え”って……ただよしよししたかっただけじゃあるまいな?」


「ち、違うわよ!」


 リアナが慌てて否定した、その瞬間――


 ふるふると光の粒子が震え、大精霊の身体が小さく伸びをした。

「ふぁ……」と欠伸を漏らし、眠たげな瞼がゆっくりと開く。


「ま、まさか……ほんとに起きた!?」


 リアナが目を丸くし、セイも思わず眉を上げた。


「……んぁ。あれ? ボク、呼ばれたの?」


「なっ……いや、ああ。ちょっと聞きたいことがあってのう」


 セイは咳払いをひとつして、姿勢を正した。


 ぼんやりと瞳を開いた大精霊は、周囲をぐるりと見渡す。


「へぇ、また新しい人がいるね?」


「大精霊様、初めまして。アルト・ネヴァンと申します」


 アルトは椅子から立ち上がり、深々と頭を下げた。


「うん。よろしくね!」


 精霊はふわりと宙を回り、まっすぐリアナを見つめる。


「あっ、よかった。大丈夫だったんだね。それに……ちゃんとカケラの力も宿ってる」


「っ……!」


 リアナの背すじに、小さな電流が走る。

 脳裏に、光の洞窟での出来事が鮮やかによみがえった。


「はい。みんなのおかげで、なんとか……」


 精霊は安心したように目を細め、ぽん、と小さく手を叩く。


「ところで、聞きたいことは――残りひとつのカケラ、で合ってるかな?」


「うむ。それもある」


 セイは低く頷いた。


「“それも”っていうと?」


「カケラを集めて封印をやり直すにしても……そもそも魔王がどこに封じられておるのか、ワシらは知らん。

 大精霊のおぬしなら、知っておるかと思っての」


「そっか。じゃあ順番にね」


 精霊は指を一本、ちょこんと立てる。


「まずひとつめ。残りのカケラなんだけど……正直、分からないんだ。

 この前探ったときは“光”の精霊の気配しか見えなかった。だから“水”は、もっと遠く――ボクの感覚じゃ追えない場所にいるんだと思う」


「ワシらの手の届かぬ遠域か……」


 セイが腕を組み、思案顔になる。


 そこでアルトが口を開いた。


「今までのカケラの所在から推測すると……北方なら《大地の果てノルヴァン高原》、東方なら《霧の大森林シルヴェリオン地方》でしょう。

 いずれにせよ、馬車でひと月以上はかかる距離です」


「ふむ……容易に行ける場所ではなさそうじゃな」


 セイの声は自然と沈む。


 すると宙に浮かぶ大精霊が、ふわりと体勢を変えて口を挟んだ。


「そうだね。“水”は流れを選ぶから、水脈に沿った場所に宿るはずだよ。

 強い流れと、強い祈りが重なる場所……そんなところにカケラはあると思う」


「強い祈り……聖堂か、巡礼地……でしょうか」


 エリシアが小さく息を呑む。


 精霊は小さく首をかしげ、二本目の指をぴんと立てた。


「それからもうひとつ。魔王の居場所なんだけど、これは知ってる。だって――ボクたちが封印したようなものだからね」


「やはり、そうであったか」


 セイが身を乗り出し、室内の空気がすっと張りつめる。


「場所は、世界の中心の地――《ヘルセイム》。そこの魔王の居城に、今も封じられているよ」


「ヘルセイム、とな……?」


 セイが視線をアルトへ送る。


 アルトは短く息を整え、静かに首を振った。


「今現在、そのような地名は地図には残っていません。

 ただ――大陸中央、かつて“世界のへそ”と呼ばれた地域があります。今は『忘れ去られた場所』と総称される、クワルド地方。

 おそらく、そこが《ヘルセイム》に相当するのではないかと」


「なんで“忘れ去られた”なんて呼ばれてるの?」


 ミミが首をかしげる。


 アルトは苦い表情を浮かべた。


「なぜでしょう。私にも分かりません。……大精霊様のお話を聞くまでは、そもそもその地名すら意識に入ってこなかった」


 そう言ってリアナとエリシアへ視線を向ける。

 二人も小さく頷いた。


「はい。私たちもです」


「それはそうだよ!」


 大精霊が、まるで当然のことのように胸を張る。


「だって魔王を封印しているところに、人が間違って入り込んだら困るでしょ? だからね、皆の意識からその地域ごと消しちゃったんだ」


「……けっこうえぐいことをするのう」


 セイが眉をひそめる。


「まあ、みんなを守るためだからね」


 大精霊はにっこり笑った。


「――以上が魔王が封印されている場所のおはなし。とはいえ、まずは残りのカケラを見つけないとね」


 そう言うと、精霊はくたりと肩を落とし、大きなあくびをひとつ。


「……ん。じゃ、ボクはそろそろ戻るね。起きてるの、まだちょっと苦手で」


「うむ。助かった。また必要になったら呼び出させてもらうぞ」


 セイが静かに言うと、精霊は嬉しそうに頷いた。


「うん。いいよ。次は他の精霊と一緒がいいな。久しぶりにみんなに会いたいしさ」


「近いうちに必ず」


 セイの言葉に満足げに頷くと、精霊はふわりと揺れ、やさしく瞬きを繰り返しながら――空気に溶けるように消えていった。


 残された静けさの中、アルトが一同を見回して口を開く。


「この件、ギルドとして全面的に支援します。クワルド方面の古地図、王都の記録庫に残る遺稿、巡礼路の記述……考え得る資料はすべて洗いましょう」


「でもセイ、どうせギルドに都合のいい依頼が来てるんじゃないの?」


 リアナがじと目を向ける。


「大精霊様でも探れない遠方の依頼があれば……それが間違いなさそうだし」


「おいおい、さすがにそこまで都合よくはいかんじゃろう」


 セイは苦笑して肩をすくめる。


 だがアルトは真顔のまま、少しだけ口元を緩めた。


「いえ、セイさんの“勇者パワー”ですね。

 なぜか魔王に関わる案件を引き寄せる力。……カレンに言って、それっぽい依頼がないか確認してもらいましょう」


 そう言ってアルトは席を立ち、受付へ向かっていった。


 残された三人の間に、わずかな沈黙が落ちる。


「でも……なんだか、お話がどんどん大きくなってきたね」


 ミミが小さく不安をにじませる。


「ええ。でも、セイさんが勇者であるなら……いずれ通る道なのですから」


 エリシアが落ち着いた声で言い、ミミの肩にそっと手を添えた。


 するとリアナが、真剣な眼差しをセイに向ける。


「ねえセイ……私たち、あなたについていっていいんだよね?」


「ワシはな、勇者であろうなどとは一切思っておらん。

 おぬしたちと旅をして、笑って、泣いて……魔王をどうにかするなんてのは、そのついでのようなもんじゃ」


 セイは腕を組み、静かに言葉を結ぶ。


「おぬしらが隣におってこその旅じゃ。だからワシは、その旅路を邪魔するものを退ける。

 そのためにはカケラも集めるし、魔王の封印もやり直す。……ただ、それだけのことじゃ」


「なにそれ。答えになってない」


 リアナがむっとしながらも、そっとセイの後ろから腕を回す。


「あー! リアナちゃんだけずるい!」


 ミミも慌てて飛びつき、セイに抱きついた。

 そしてエリシアへ視線を送り、空いているセイの右側をぽんぽんと叩いて合図する。


「……じゃあ、お言葉に甘えて」


 エリシアも照れくさそうに微笑み、小さく「えい」とセイに身を寄せた。


「おいおい……完全に身動きが取れんのじゃが」


 セイが呻いた、その時――


 ガチャリ、と扉の開く音。


「――す、すみませんっ。……おじゃましました!」


 顔を真っ赤にしたカレンが、慌てて扉を閉めた。


「ま、待て待て! 勘違いじゃ! そういうことじゃないんじゃ!」


 セイは三人をなんとか振りほどき、慌ててカレンを追いかけて呼び止める。


 カレンと共に応接室へ戻ると、彼女は改めて口を開いた。


「アルトさんに言われて確認しました。……依頼について、現在張り出されているものに該当するものはありませんでした」


「そうなんだ……」


 リアナが肩を落とす。


「まあ、そう都合よくはいかんじゃろうな」


 セイも小さくため息をついた。


 だがカレンは、ふと思い出したように顔を上げる。


「でも――以前、距離があまりにも遠すぎて閉じていた依頼がひとつだけあります」


「場所は?」


 セイが思わず身を乗り出す。


「大陸の東方、《霧の大森林シルヴェリオン地方》です。……依頼内容は《消えた巡礼者の捜索》になります」


「巡礼者……?」


 リアナが首をかしげた。


 カレンは眉を寄せ、静かに続ける。


「正式には、霧の大森林で行方不明となった巡礼者たちの捜索依頼です」


「ふむ……単なる調査ではなく、なにやら厄介な匂いがする依頼じゃのう」


 セイが低くつぶやく。


「でもさ、調査依頼だって今まで楽だったためしないじゃん」


 ミミが肩をすくめて言った。


「まあ、それもそうじゃな」


 セイは苦笑したが、すぐに真顔へ戻る。


「ただ、今回ばかりは長旅になる。下手をすれば――半年は帰ってこれんかもしれんぞ」


 それでもミミは、迷いなく頷いた。


「うん。前にも言ったけど、どこへでもついていくよ」


「……まったく、仕方ないわね」


 リアナはそっぽを向きながらも、真っ赤な顔で続ける。


「あなたたちだけじゃ心配だから、一緒に行ってあげるわよ」


「皆さんがそうおっしゃるなら――私だけ残るわけにはいきませんね」


 エリシアも静かに微笑み、頷いた。


 その時、扉が開き、アルトが応接室へ戻ってきた。


「お待たせしました」


 落ち着いた声音で一礼し、机に一枚の依頼書を置く。


「では皆さん――こちらの依頼、引き受けていただけますか?」


 セイは仲間たちを見回した。


 ミミは力強く頷き、リアナは照れ隠しのようにそっぽを向きながらも、わずかに笑みを浮かべている。

 エリシアは静かに手を胸に当てていた。


「……ふむ。答えは決まっとるようじゃな」


 セイが口元を緩める。


「もちろんです!」


 ミミが弾んだ声で言った。


「わたしたち、《キラキラ☆おひさま団》に任せてください」


 アルトはその返事に、深く頷く。


「ありがとうございます。きっと厳しい道のりとなるでしょう……ですが、皆さんならばと信じています」



────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】34

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高(セイについていく気持ちに迷いなし)

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:旅人風の白いワンピースを装備。体調ばっちり。新しい旅のはじまりにワクワクしている

 - 補足:考えているのか、考えていないのか――それでも真っ先に「一緒に行く」と言える行動力は相変わらず


 ・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:好き(一言一言に気持ちが揺さぶられてしまう)

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:黒を基調とした剣士風ドレスを装備。アルトの前でも平常心……(少しだけ動悸)

 - 補足:やはり大地の精霊には弱く、デレが止まらない


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高(抱き着いたとき内心ドキドキしてた)

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。体調ばっちり。

 - 補足:長旅になるため、家に残るモフルのことが少し心配。あと、消えた巡礼者に少し不安を抱いている


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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