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第48話 ミミの小さな記憶

 昼下がりのルキア村ギルド。

 差し込む陽光が石畳に白く揺れ、木の扉が勢いよく開かれた。


「おかえりなさいませっ、《キラキラ☆おひさま団》のみなさま!」


 受付にいたカレンがぱっと立ち上がる。

 太陽のようなその笑顔は、それだけで冒険者の疲れを吹き飛ばした。


「しっかり討伐してきたぞ! 《ダスクハウンド》……いやはや、なかなか手強かったわい」


 セイが胸を張り、どんと声を上げる。


「Cランクとは思えないくらいだったよね。とくに、あのおっきいヤツ」

「はい。今までのCランク依頼とは比べものになんなかったです」


 ミミが頷き、リアナも真剣な表情で言い添えた。


「でも……ご無事で、本当によかったです」


 カレンは安堵の笑みを浮かべ、セイから証拠の牙を受け取る。

 掌に乗せた瞬間、その異様な大きさに思わず目を見開いた。


「あっ、それボス・ダス――」


 言いかけたミミの口を、セイが慌てて塞ぐ。


「余計なことは口にするでない」


「……んむーっ!」


 不満げに頬を膨らませるミミに、カレンは一瞬だけ首を傾げたが、すぐに笑顔へ戻った。


「確認完了です。今回も依頼達成、ありがとうございました!」


 改めて丁寧に頭を下げるカレン。その声はギルドの広間に心地よく響き渡る。


「あ、そうだ」


 思い出したようにカレンが顔を上げた。


「ギルドマスターが、ぜひお会いしてお話したいことがあるそうなんです。明日、改めて来ていただけますか?」


「ギルドマスター……アルトか。うむ、よかろう。朝飯を済ませてから立ち寄るとしよう」


「ありがとうございます! では、明日お待ちしておりますね」


 カレンは胸を撫で下ろし、笑顔で深々と頭を下げた。


 報酬を受け取った一行は、そのままギルドを後にする。

 傾きはじめた午後の陽射しに包まれながら村道を抜け、やがて我が家へ戻ると、それぞれが旅の疲れを癒す時間に身を委ねた。


 ◇


 ――夕方。

 セイは自室で椅子に腰かけ、一冊の本をめくっていた。


 コンコン、と控えめなノックの音が響く。


「……セイ?」


 そっと顔をのぞかせたのはミミだった。

 少し緊張した面持ちで、両手を胸の前でぎゅっと組んでいる。


「どうした、ミミ」


「えへへ、何してるのかなーって」


「まあ、立ち話もなんじゃし……入れ」


「うん!」


 ミミはぱっと笑顔を見せて部屋に入り、ベッドの端にちょこんと腰を下ろす。

 そしてぽんぽん、と隣を叩き、上目づかいににこっと笑った。


「ほら、となり空いてるよ?」


 セイは苦笑し、椅子に腰かけたまま小さく肩をすくめる。


「まったく……仕方ないのう」


 そうぼやきながら立ち上がり、結局はミミの隣に腰を下ろした。

 ミミは満足そうに身体を寄せてくる。


「ねえ、セイ。今日のわたしの魔法、どうだった?」


「エリシアの言う通り、しっかり成長しとったな。あの結界は見事じゃった。あれがなければ、リアナは危なかったかもしれん」


「ほんと? やったぁ……! 少しは上達したってことだよね」


「うむ。やはり教え方がええと違うんじゃろ。ワシには真似できんわい」


 セイが肩を落とすと、ミミはくすっと笑い、そっと手を伸ばしてセイの頭を撫でた。


「そんなことないよ。セイに教えてもらわなかったら、魔法だって使えてなかったかもなんだから」


「……なんじゃ、それを言いに来てくれたのか?」


「うん。……あと、セイに褒めてもらいたくて」


 はにかむように笑うミミ。その目は、嬉しさを隠しきれていない。


「まったく、ワシはミミの褒める係じゃないんじゃがな」


 セイはわざとらしくため息をつく。


「えーっ、じゃあもう褒めてくれないの?」


「ふむ……どうするかのう」


「……じゃあね、もっと頑張るからいっぱい褒めて!」


 ミミは期待を込めて、ぐっと顔を近づける。


「うむ、それなら約束しよう。ただし、無理はするでないぞ」


 セイが肩をすくめると、ミミは嬉しそうに小さく跳ねた。


「うん! それなら次は回復魔法を見せてあげるね。エリシアちゃんには負けないんだから!」


「ふふ、楽しみにしとるぞ」


 セイが口元を緩めると、ミミは得意げに胸を張った。


「そういえば、ミミよ」


「なあに?」


「おぬしと出会ってもうだいぶ経つが……まだ記憶は戻らんのか?」


「うん。でもね、ちょっとだけ思い出したことがあるんだ」


「なんじゃと……少し戻ったのか?」


「ほんの断片だけど……」


 ミミは胸に手を当て、小さく息を整える。


「わたしね。前はお城が見えるお家に住んでたんだ。そこはあったかくて、安心できて……ずっと笑ってた記憶。でも、その後が真っ暗で、どうしても思い出せないの」


 揺れる瞳には、不安と希望が入り混じっていた。


 セイはしばらく黙り込んだが、やがて穏やかに口を開く。


「王都アストリオ……ではないのか?」


「うん。王都とはちがってた」


「そうか……まあ、焦ることはない。お城のある場所なんぞ限られておる。これからの旅で、おぬしの記憶を取り戻せばええ」


 その言葉に、ミミはほっと笑みをこぼした。


「……うん。そだね」


 ◇ ◇ ◇


 翌朝。

 カレンに言われた通り、ギルドマスターに会うため、セイたちは再びギルドを訪れていた。


「おはようございます。では、応接室でお待ちください」


 受付に立つカレンが丁寧に頭を下げ、一行をギルド奥の応接室へ案内する。


 分厚い扉が閉じられると、外の喧騒が嘘のように途絶えた。


「相変わらず……ギルドの中とは思えんほど静かな部屋じゃのう」


 セイが周囲を見渡しながら呟く。


 室内は装飾をほとんど排した落ち着いた空間だった。

 磨かれた木目の机と椅子、そして壁に掛けられた簡素な紋章だけが目に入る。

 質素なはずなのに、不思議と緊張感が漂っていた。


「ねえ、リアナちゃん。今日もやっぱりカチコチだね」


 隣でミミが小声で囁く。


「は、はい。アルトさんに会えると思うと、どうしても緊張してしまって……」


 リアナは両手を膝の上に置いたまま、背筋をぴんと伸ばしていた。


「憧れの人だもんね!」


 ミミの無邪気な言葉に、リアナの頬がさらに赤くなる。


「そんなに身構えると、話の前に疲れてしまうぞ」


 セイが苦笑混じりに言った。


 ほどなくして、扉が軽くノックされる。


「失礼します――お久しぶりですね。セイさん、ミミさん、そしてリアナさん」


 名を呼ばれた瞬間、リアナの胸がどきりと跳ねた。


「お、おひさしぶりです……アルトさん」


 思わず立ち上がるリアナ。

 差し出した手は小刻みに震えていたが、その顔には抑えきれない喜びが浮かんでいた。


「そして……あなたがエリシアさんですね。はじめまして。ここでギルドマスターを務めています、アルト・ネヴァンです」


「はい。はじめまして」


 エリシアは柔らかな微笑みとともに頭を下げた。


 その横で、ミミがこっそり耳打ちする。


「エリシアちゃん、こう見えてアルトさん、前は王国騎士団長だったらしいよ」


「まあ……素敵」


 驚きに目を丸くしたエリシアは、すぐにふわりと笑みを浮かべた。


 アルトは少し照れくさそうに肩をすくめると、姿勢を正して言葉を続ける。


「本日は、わざわざご足労いただきありがとうございます」


「して、何用じゃ?」


 セイがまっすぐな視線を向ける。


「以前お願いした『西方の山岳地帯に位置する洞窟の調査』の件です」


 一行も自然と背筋を伸ばした。


「先日、セイさんから引き継いだ調査部隊の報告がまとまりまして……結論から申し上げますと、セイさんたちが発見された剣型の遺跡。あれは賢者のカケラである可能性が非常に高いのです」


「うむ……」


 セイは静かに息を吐き、腕を組む。


「ただ、前回の本型のカケラの時もそうでしたが、今回も守護していたはずの“大精霊”の痕跡が見当たりませんでした」


「やはりそうか……」


 セイの低い声に、アルトが眉をひそめる。


「やはり、といいますと?」


「アルトよ。その遺跡について……ギルドにはまだ伝えておらんことがあるんじゃ」


 セイは声を落とし、静かに続けた。


「実はな。大地の精霊と光の精霊、どちらにもワシらは会っておる」


「……そのお話、詳しくお聞かせいただけますか」


 室内の空気がわずかに張り詰める。

 セイは一呼吸おき、口を開いた。


「理由は分からん。じゃが、その大精霊たちは、本型の遺物からはミミへ、剣型の遺物からはリアナへ……宿り先を変えたのじゃ」


「それでは、今は賢者のカケラは守られていないと?」


「いや。大精霊が言うには、賢者のカケラは“チカラ”であって“モノ”ではない。今は宿り先としているミミ、そしてリアナが賢者のカケラになっておる、ということらしい」


「……なるほど。確かに言われてみれば、お二人から精霊の気配を感じます」


 セイは少しうつむき、静かに言った。


「これまで黙っておってすまなかった」


 アルトは首を横に振り、落ち着いた声で応じる。


「いいえ。報告として不備があったわけではありません。それに、ギルドにさえ明かせば皆さんの命が危険にさらされかねない情報です。……今こうして教えてくださっただけでも十分ですよ」


「理解してもらえて助かる。感謝するぞ」


 セイが深く頷く。


「しかし、大精霊が宿り先を変える……やはり魔王復活が近いのかもしれませんね」


「ああ……そう考えて間違いなかろう」


 セイは眉を寄せ、低く呟いた。


「となれば、一刻も早く残りのカケラを集め、封印をやり直さねばなりません」


「じゃが、残りひとつの賢者のカケラがどこにあるのか……そもそも魔王がどこに封じられておるのか。まだ分からんことだらけじゃ」


 アルトが思案げに言う。


「ですが、大精霊様がそこにいらっしゃるなら……直接お聞きすることはできないのでしょうか?」


「はっ……なるほど。その手があったか」


 セイはぽんと手を打ち、苦笑した。


「じゃが、大精霊は普段は眠っておると言っておった。こんな朝っぱらから素直に目を覚ましてくれるかどうか……」


 セイはゆっくり立ち上がった。


「ミミよ、こっちに来てくれ」


「うん!」


 ミミが小走りに駆け寄る。


 セイは彼女の前に立つと、片手をそっとかざした。


「――スキル《精霊感応》」


 次の瞬間、ミミの身体から淡い光がにじみ出す。

 それはふわりと宙へ舞い上がり、頭上に集まっていった。


 やがて光はひとつにまとまり、人の姿を形作る。


 ミミをそのまま小さく写し取ったような、愛らしい精霊の姿だった。


 ――だが、その精霊は目を閉じ、すやすやと眠っている。


「……か、可愛すぎる……」


 リアナは思わず声を漏らし、慌てて両手で口を押さえた。


「これが……大精霊様、なのですか?」


 アルトが目を丸くし、息を呑むように呟く。


「うむ。ミミに宿る大地の精霊じゃ」



────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】34

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高(セイに褒められたくて必死に頑張ることを決意)

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:旅人風の白いワンピースを装備。セイに褒められてやる気満々。体調もばっちり

 - 補足:思い出した記憶の断片「お城が見える家で過ごした日々」を獲得


 ・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:好き(アルトは憧れ)

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:黒を基調とした剣士風ドレスを装備。アルトとの再会で、心臓が跳ねっぱなし

 - 補足:小さなミミの姿をした大地の精霊にはデレまくり


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。「最後のカケラ」のことが気がかり。体調は万全

 - 補足:帰宅時にモフルが少し姿を見せてくれたらしい。それが嬉しかったようだ


最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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