第45話 ネーミングセンス
──数週間後。
久しぶりに顔をそろえたセイたちは、ルキア村のギルドカウンターへ向かった。
「お久しぶりです、セイさん。先日は夕食に招いていただき、ありがとうございました」
にこやかに頭を下げるカレン。その声に、場の空気が自然と和らぐ。
「ところで――その後、スローライフは満喫できましたか?」
「うむ……」
セイは少し考えた後、妙に深刻そうな顔でうなずいた。
「金ばかりがどんどん減っていってのう。スローライフとは、恐ろしく金のかかるものじゃ」
「……」
カレンは一瞬まばたきをして――ぷっと吹き出す。
「それ、多分スローライフできてませんよ」
「なぬっ!?」
セイがぐいっと身を乗り出す。
「カレン、おぬし……スローライフを知っておるのか!?」
周囲で依頼を待っていた冒険者たちが、クスクスと笑い声を漏らした。
セイは腕を組み、やがて唐突に眉をひそめる。
「うーむ……わし、スローライフ系のアニメ――あの妙に間延びした雰囲気がどうにも肌に合わんでな。結局ひとつも見とらんのじゃ」
いきなりジャンルそのものに毒を吐くセイ。
「えっ……アニメ……?」
カレンは思わず目を瞬かせる。
(なに言ってるんですかこの人)と言いたげな顔だ。
だがセイはそんな反応など気にも留めず、さらに身を乗り出した。
「じゃから教えてくれぬか、カレンよ。スローライフとは一体なんなのじゃ?」
真正面から問われ、カレンは小さく肩を落としつつ苦笑する。
「スローライフっていうのは、暮らしを自分の手でまかなう生き方です。畑を耕して野菜を育てたり、狩りや畜産で食料を得たり、薪を割って火を起こしたり……そうやって、ゆっくりとした時間を楽しむんです」
そして、少しだけため息をついた。
「……セイさん、まさか全部“お金で買って済ませる”だけで終わってませんでした?」
「うむ、そうじゃが」
胸を張って答えるセイ。
「やっぱり……」
カレンはきっぱりと言い放つ。
「セイさん、それはスローライフじゃなくて――ただの長期休暇です」
「ひどっ!」
ミミが思わず声を上げ、セイの腕にしがみつく。
「セイはセイなりに頑張ってたんだよ! えっと……お財布を空っぽにするくらい!」
「それは頑張ったとは言わないわね」
リアナが容赦なくツッコミを入れる。
「……でも確かに、セイが畑を耕す姿って想像できないわ」
「ふふっ……」
エリシアは口元に手を添え、やわらかく微笑んだ。
「確かにセイさんって……身の回りのことを自分でやるの、ちょっと苦手そうですもんね」
「むぅ……」
セイは顎をさすり、気まずそうに肩をすくめた。
「……っと、話が逸れてしまいましたね」
カレンは小さく咳払いをし、手元の書類を持ち上げる。
「実はちょうど皆さんに、お願いしたい依頼があるんです」
「洞窟調査や祠調査なら当分はごめんじゃぞ。ただの調査で終わった試しがないからのう」
セイは腕を組み、渋い顔で先に釘を刺す。
「いえ、今回は北の街道に発生している獣の討伐です」
カレンがさらりと否定すると、ミミがぱっと笑顔を見せた。
「休み明けには、ちょうどよさそうだね!」
「うむ、そうじゃな」
セイもようやく表情をゆるめる。
「事前の調査依頼の報告では、確認された獣は《ダスクハウンド》――魔獣です」
カレンは書類に目を落としながら続けた。
「確かに数が増えているのですが……それ以上に厄介なのは、群れの中にひときわ大きな個体がいたという点です」
「ボス的なやつってことですか?」
リアナが真剣な表情で問いかける。
「はい。さしずめ――《ボス・ダスクハウンド》です」
カレンが真顔で言い切った。
「……カレン、おぬし、ネーミングセンスが壊滅的じゃのう」
セイがため息まじりに呟いた瞬間、ミミが「ぶっ!」と吹き出し、リアナとエリシアも思わず肩を揺らした。
「し、仕方ないじゃないですか!」
カレンは顔を真っ赤にして書類を抱きしめる。
「報告書にそう書かれてたんです!」
必死の言い訳に、全員がそっと目を逸らしながら肩を揺らす。
「……まぁ、よい。受けよう、その依頼」
セイがあっさり告げると、カレンは胸をなで下ろし、書類を広げ直した。
「あ、ありがとうございます。それでは詳細を――」
カレンは書類を指でなぞりながら説明する。
「討伐対象は、北の街道に出没している《ダスクハウンド》の群れです。特に警戒すべきは群れを率いる大型個体。通常の二回りは大きく、爪も異様に発達しているとの報告があります」
その真剣な声色に、全員の表情が引き締まる。
「依頼区分はランクC。危険度はやや高めですが……皆さんなら問題ないはずです」
「ランクCかぁ。でも、いつも通りなら大丈夫だよね!」
ミミが小さく拳を突き上げる。
「……ただの獣ではなく、魔獣なのですよね」
エリシアが穏やかに問いかけた。
「はい。ダスクハウンドは夜目が利き、暗闇での連携が非常に厄介です。夜襲を受ければ、数でも不利になりかねません」
カレンの補足に、セイは短くうなずく。
「ならば明るいうちに片をつけたいところじゃの。夜営に持ち込むのは避けるべきじゃな」
「確か、北の道を進んだ先に街がありましたよね?」
リアナが思い出すように口にする。
「はい。《フェルトン》という街があります。商人の往来で発展した場所ですから、宿も店も不自由しないはずです」
カレンが記憶を探るように答えた。
「なら話は早い」
セイはパン、と手を打ち合わせ、皆を見渡す。
「今はまだ昼前。すぐに出れば、日暮れ前には現地を確認できる。その後は街で宿を取り、翌日討伐に挑めば、明日の夕方にはここへ戻れるじゃろう」
「決まりね」
リアナが力強く頷き、仲間たちも笑みを交わした。
依頼票にサインが記されると、カレンは書類をまとめ直し、深々と頭を下げる。
「よろしくお願いします。どうか……お気をつけて」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】32
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:かなり高(セイの間違ったスローライフを何の疑いもなく肯定)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。ちょっとだけ疲労気味
- 補足:実は休暇中はエリシアに魔法の指導を受け、特訓していたみたい
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:黒を基調とした剣士風ドレスを装備。休暇中はしっかり休んで体調ばっちり
- 補足:休暇中、なんだかんで一番スローライフっぽいことをしていた
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。休暇中はしっかり休んで体調ばっちり
- 補足:ミミへの魔法指導に熱心。彼女の魔法の成長の速さに驚いている
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