第42話 リアナの弱音
リアナの呼吸が落ち着くのを確認して、一行はようやく肩の力を抜いた。
洞窟の空気は冷たく湿り、衣の内側までじんわり染み込む。足を運ぶたび、濡れた石が鈍く音を返した。
セイが軽く手を打つと、皆の視線が集まる。
「依頼としては十分果たしたが……ワシらの本当の目的は《賢者のカケラ》探し。ここからが本番じゃ。
とはいえ――皆、かなり疲れたろう。一度外に出て、星空の下で休むのも悪くあるまい」
「そうだね。リアナちゃん、治ったとはいえ無理はさせたくないし」
ミミがすぐに頷き、胸元に手を添えるリアナを見つめる。
「……また、先ほどのような魔物が現れないとも限りません。安全を優先するべきだと思います」
エリシアの言葉に、リアナは「大丈夫」と言いかけ――仲間たちの表情を見て、言葉を飲み込んだ。
安堵と不安が入り混じる視線を受け、唇をきゅっと結び小さく頷く。
湿った洞窟の中より、夜空の下で焚き火を囲むほうが、心はずっと落ち着くはず。
セイは三人の様子を確かめ、満足げに頷いた。
「決まりじゃ。外気を吸って、体勢を立て直そう。――撤収、素早くいくぞ」
号令とともに一行は洞窟を後にした。
外に出ると、ひんやりとした夜風が頬を撫でる。薄雲の切れ間から、無数の星が瞬いていた。
手慣れた動きで装備を広げると、ほどなく野営地が整う。焚き火がぱちぱちと弾け、橙色の揺らめきが皆の顔を柔らかく照らした。
食事を終え、膝を抱えていたリアナが背筋を正し、仲間たちを見回す。
「……みんな、本当にありがとう。その、助けてくれて」
「うん! こちらこそだよ。生きててくれてありがとう、リアナちゃん!」
次の瞬間、ミミが勢いよく抱きついた。
「ちょ、ちょっと……苦しいってば、ミミさん!」
抗議の声とは裏腹に、振りほどこうとする力は弱い。
「だって、本当に、本当に心配したんだからね!」
「心配かけて、ごめんなさい……もう大丈夫」
やがてリアナも、そっとミミの背に腕を回した。
セイとエリシアは、その様子を静かに見守る。
焚き火に照らされた横顔は穏やかで、ひとときの安堵が流れた。
ふと、リアナが小さく息を吐き、微笑む。
「ミミさん、もうそろそろ……」
「あっ、そうだね。ごめんごめん。無理させちゃったね」
ミミは名残惜しそうにそっと腕をほどく。リアナは申し訳なさそうにしながらも、疲れが表情に滲んでいた。
少し間を置いて、セイが口を開く。
「リアナよ。明日の探索はどうする?」
「どうするって……何よ?」
「いや、こんな目に遭ったばかりじゃ。明日くらいは休んでもええと思ってな」
リアナは瞬きをし、それから少し不満げに眉を寄せた。
「はあ? もう平気よ。明日はちゃんと役に立ってみせるわ」
「なに言ってるの。今日の一番はリアナちゃんだったんだから! それを言うなら『明日も』だよ!」
ミミが思わず身を乗り出す。
リアナは照れ隠しにそっぽを向くが、焚き火に照らされた頬の赤みまでは隠せなかった。
◇ ◇ ◇
夜も更け、焚き火は小さくなっていた。
皆、それぞれの寝床に身を横たえ、野営地は静寂に包まれる。星だけが冴え冴えと空に瞬いていた。
リアナは何度も寝返りを打った末、そっと起き上がる。テントの幕を開け、隣のテントの前に立った。
「……ねえ、起きてる?」
すぐに布が揺れ、セイが顔を出す。
「ああ。どうした」
「ちょっと……」
言葉が続かない。視線が揺れる。
セイは一瞬だけ彼女を見つめ、それから穏やかに言った。
「少し歩くか。魔物が出ても困るから、ほんのそこらだけじゃが」
リアナは小さく頷き、二人は並んで歩き出す。
夜気が肌を撫で、吐息が白くほどける。
「星……きれいね」
「ああ。雲も晴れて、よう見える。本当にきれいな夜空じゃ」
「私の実家の近くにもね、夜空がとってもきれいに見える森があるの。
あの頃は、お母さんとこうしてよく星を見ながら歩いたなあ」
リアナは懐かしむように空を見上げ、小さく息を吐く。
「不安なことや困ったことがあったら、いつもそこで相談してた。
そしたら、なんだか解決した気になれるのよね」
「良い母親を持ったのう」
「うんっ……さっきは、心配してくれてありがとう。でも、本当に大丈夫だから」
「うむ。おぬしがそう言うなら、大丈夫なんじゃろう」
言葉少なに、二人はしばし歩き続けた。
やがてリアナがふと足を緩め、思い切ったようにセイの背中に抱きつく。
「……っ」
セイは振り返ろうとしかけ、やめた。
背中越しに伝わる、かすかな震え。
「怖かった……本当に、怖かったの。ねえ、セイ」
夜空を見上げたまま、セイは静かに言った。
「恐ろしい思いをしたのに、よう頑張った。怖いと思うのは当然じゃ。無理に平気なふりなどせんでええ」
回された腕に、そっと手を添える。
「ワシらは仲間じゃ。怖さも半分、分け合っていけばええ」
リアナは額で背を軽く叩き、そのまま顔を押しつけた。
「なによ……それ。そんなかっこいいこと言わないでよ」
声は震えている。
セイは小さく笑った。
「別にかっこつけたつもりはない。ただ――おぬしの笑顔を守るためなら、何度でも言うぞ」
リアナはしばし黙ったまま、背中に顔を埋めていた。
「……うん」
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】32
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。疲労は継続中
- 補足:元気そうに見せるリアナを少し気にかけている
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:好き(弱音を素直に伝えられる)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当ては破損。極度の消耗状態だがセイの言葉に安心
- 補足:昔の懐かしい記憶もあって、ちょっといい感じの雰囲気に。後で赤面、自分の気持ちに気づく
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高(前線での戦いに信頼が増している)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。疲労は継続中
- 補足:安堵のあまり、こっそり買い込んだお酒を飲んでしまったのは内緒
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それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品
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