第38話 中級への階段
それから数日後の昼下がり。
セイたちは、いつものようにギルドを訪れていた。
依頼達成の報告を終えると、カウンター越しにカレンが記録を確認しながら穏やかに微笑む。
「セイさんたち、Dランクの実績も十分に積めていますし……そろそろCランクの依頼に挑戦してみませんか?」
「なんと? Dランクのままでも受けてよいのか?」
セイの問いに、カレンは自信たっぷりに頷いた。
「はいっ。ランクはあくまで目安です。実力があれば問題ありませんよ。
それにFランクのときも、Eランクの依頼を問題なくこなしていましたよね?」
「あれは採取や調査が中心だったしのう。FもEも、そこまで大差はなかった」
「ふふっ、そうかもしれませんけど、実績はちゃんと蓄積されてるんです。
討伐記録や依頼成功率を見ても、もうCランク相当と言っていいくらいです。
ギルドとしても、自信を持っておすすめできますよ」
「ふむ……なら、挑んでみるとするかの」
セイが頷くと、リアナが腰に手を当てて口を挟む。
「最近はDランクじゃ、ちょっと物足りなくなってきたしね。そろそろステップアップしなきゃ」
「そうですね。新しいことへの挑戦は、きっと素晴らしい経験となるはずです。
楽しみながらいきましょう」
「うんっ、楽しむの大事だよねっ!」
ミミがぱっと笑顔を咲かせる。
その様子を見て、カレンも嬉しそうに頷いた。
「はいっ! 中級帯へのステップアップにはちょうどいい時期です。
ギルドとしても、期待していますよ!」
「ふむ、期待されるのも悪くないのう。
――で、Cランクの依頼とはどんなものじゃ?」
セイが問いかけると、カレンはにこりと笑い、手元の依頼書を手早く並べた。
「そうですね、今のおすすめはこちらです!」
数枚の紙を広げながら、順に説明していく。
「まずはこちら。《集落近くの大型魔物の調査》。
最近、家畜が何者かに襲われているそうです。目撃情報はありませんが、足跡の大きさから中型以上の獣系と見られています」
「ふむ……調査が主か。場合によっては討伐まで任される、ということじゃな?」
「はい。その場合は追加報酬も出ますので、ご安心ください♪」
「じゃあ、こっちは?」
リアナが別の紙を手に取り、眉をひそめる。
「《街道沿いの盗賊団掃討》……これもCランクなんですか?」
「ええ。ただし“小規模な集団”が条件です。
三~五人ほどの武装集団が、該当区域で時折目撃されています。もし大きな組織の痕跡があれば、無理せず報告のみで構いません」
「ふぅん……でも油断はできない依頼ね」
リアナは真剣な顔で紙を戻す。
「他には……あ、少し変わり種ですが、こんな依頼もありますよ?」
カレンが差し出したのは、《廃教会の霊現象調査》。
「お化け、出るの……?」
ミミがそっとエリシアの背中に隠れる。
「ふふっ、真偽は不明ですが、夜な夜な呻き声が聞こえるとか聞こえないとか、扉が勝手に開くとか開かないとか……
地元では、かなり噂になっているようです」
「ほう……これはエリシアの聖なる力で一発じゃな」
「はい。それが本当に霊的な現象であれば、浄化で対処できると思います」
「さすがエリシアちゃん! 頼りにしてるよ!」
ミミがぱっと顔を輝かせ、手を合わせながらエリシアを見上げる。
その様子を微笑ましく眺めながら、カレンがくすりと笑った。
「霊現象系は一見ネタ枠っぽいですが、報酬は意外と良いんですよ〜。成功すれば地元の方からも感謝されますし!」
「ふむ……では、まずは幽霊退治といくかの」
《廃教会の霊現象調査》
街外れの廃教会で囁かれていた怪異の正体を突き止めるべく調査を実施。
原因は建物内に澱んでいた低級霊によるものと判明した。特に害はなかったが、住民の不安を考慮し浄化を決定。
エリシアの浄化により速やかに解決した。
あわせて建物の老朽化による危険箇所も特定し、住民へ注意喚起を行って任務完了。
《街道沿いの盗賊団掃討》
目撃証言のあった街道にて、セイが囮として単独行動を実施。
これに呼応して出現した盗賊団は五名程度の小規模集団と判明し、想定どおり掃討を開始した。
待機していたリアナが背後から挟撃に加わり、迅速に制圧を完了。
拘束した構成員はギルドを通じ、速やかに衛兵へ引き渡した。
《集落近くの大型魔物の調査》
近隣の集落で相次いでいた目撃情報を受け、大型魔物の追跡調査を実施。
正体は魔物ではなく、異常に成長した野生のイノシシと判明。餌を求め山から下りてきたものと推測される。
住民へ被害が及ぶ可能性を考慮し、その場で討伐することにした。
討伐後、周辺に同種の個体が存在しないことを確認し、集落の安全を確保して帰路に就いた。
その帰り道、セイがぽつりと呟く。
「ふむ……カレンの言うとおりじゃな。どうやら、わしらでもCランクでやっていけそうじゃ」
「当然でしょ。私、毎回命かけてるんだからね!」
リアナが腕を組み、ちょっと誇らしげに胸を張る。
「えへへ、でも無事に終わると嬉しいよね~。報酬もちょっと増えたし!」
ミミがにこっと笑いながら、背負っている袋をぽんぽんと叩いた。
◇ ◇ ◇
そしてある日──
Cランク討伐依頼の最中、深い森を進んでいた一行は、大きな分かれ道で足を止める。
「うーん……こっちが近道っぽいけど、地図には載ってないんだよね……」
リアナが地図を広げて唸る。
「この森、道が入り組んどるからな。片方は踏み跡もあるが……」
セイが周囲を見渡した、そのとき。
【新スキル】
《索敵》:自分に対して危険な敵性存在の気配を感知する。感知した気配は視界内に色で可視化され、赤に近いほど危険度が高い。感知には一定の集中が必要。
「おおっ、久しぶりのスキル取得じゃ!」
「えーっ!? 今度はどんなスキル? 当たりっぽい?」
ミミが目を輝かせて身を乗り出す。
「ふむふむ……どうやら、危険な敵の気配を感知できるらしい。集中すると気配が色で見えて、赤に近いほど危険、とあるな」
「えっ、それめちゃくちゃ便利じゃない?」
リアナも思わず前のめりになる。
「そうじゃな。で、ここで習得したということは──この分岐、どちらかを間違えれば、かなりヤバイ敵にぶつかる可能性がある……ということじゃろ」
セイは真剣な面持ちで目を閉じ、集中する。
数秒後──セイの視界に、左右それぞれの道の先に、色のついた気配がぼんやりと浮かび上がる。
「……ふむ。片方は緑、もう一方は……オレンジじゃ」
「赤に近い方が危険、ってことは……オレンジの道は結構ヤバイってこと?」
「うむ。とはいえ、そもそも“危険な敵”に反応するもののようじゃし、緑でも反応する以上、油断はできんということじゃ」
セイは剣の柄に手を添える。
「ここは、緑の方を選ぶとしよう。まだ無理をするタイミングでもないからのう」
「了解。慎重に行きましょ」
リアナが剣を引き抜き、先頭に立つ。
その背後で、エリシアが穏やかな声で続けた。
「……ええ。気を引き締めて参りましょう。静かな森ほど、何かが潜んでいるものですから」
慎重な足取りで、一行は緑色の気配の中へと歩みを進めていった。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】28(+5)
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復/索敵(New)
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。討伐依頼続きで結構お疲れ気味
- 補足:お化けが怖いと言っていたが、普段一緒にいる“モフル”が幽霊であることは完全に忘れているようだ
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:高(実戦での連携が板についてきた)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。討伐依頼続きでお疲れ気味
- 補足:Cランク依頼でも、セイとの連携で問題なく対応できていることが少し嬉しい
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。討伐依頼続きで少しお疲れ気味
- 補足:幽霊退治はまかせてくださいっ!と最近では幽霊退治の依頼ばかり選ぼうとしている
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それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品
『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!
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