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第35話 旅のあとの日常

 ルキア村の石畳を踏みしめながら、一行は見慣れた街並みを歩いていた。


「ふぅ……やっと帰ってきたのう。ギルドへの報告は後回しでええじゃろ。まずは家で、ちと休憩じゃ」


 セイが伸びをすると、ミミがうんうんと勢いよく頷く。


「さんせーいっ! ふかふかのベッドでごろーんってしたいよ~」


「……そうじゃな。帰りは宿に泊まる金もなく、野宿で乗り切ったからのう」


 リアナは肩を回しながら苦笑した。


「思ったより王都でお金使っちゃったからね。宿代まで回らなかったわ……」


「だね。野宿続きだったから、さすがに疲れちゃったよ」


 ミミの言葉に、エリシアは汗で肌に張り付いた服をそっと指で浮かせながら微笑む。


「特に今日は歩きっぱなしでしたし、もう汗でベタベタです」


「でも、おいしいものいっぱい食べられて楽しかったよ!」


 ミミは気を取り直すようにぱっと笑い、家の方へ駆け出していく。


「ただいまーっ!」


 勢いよく扉を開ける。

 ――けれど、いつもなら飛び出してくる白い影が見えない。


「……あれ? モフル?」


 玄関で靴を並べながら、周りを見回してみるが、どこにもいない。


「やっぱり……エリシアさんがいると、出てきづらいのかもしれませんね」


 リアナが小さく呟く。


「……ごめんなさい。私がいるせいで……」


 エリシアが伏し目がちに言うと、リアナは慌てて首を振った。


「い、いえ! そういう意味じゃなくて……きっと慣れてくれば、モフルもそのうち出てくると思いますよ」


 そんな三人のやりとりをよそに、セイが鼻をひくつかせる。


「……ん? なんじゃ、このうまそうな匂いは」


 視線を奥の食卓へ向けると、湯気を立てた料理がずらりと並んでいた。

 焼きたてのパン、野菜とハーブのスープ、チーズ入りのオムレツ、果物の盛り合わせ。

 どれもまだほんのり温かく、エリシアの分まできちんと人数分。


「……姿は見せんでも、ちゃんと気にかけてくれとるようじゃな。モフルめ」


 セイは肩をすくめ、食卓へ向かった。

 ミミも「わあ……」と目を輝かせ、椅子を引いて勢いよく腰を下ろすと、さっそくパンに手を伸ばす。


「えへへ……もう我慢できないよ〜! いただきまーす!」


「ちょ、ミミさん、手を合わせてから――って、もう食べてるし……」


 リアナは隣に座りながら、あきれ半分に笑う。


 セイとエリシアも席につく。


「ふふ……ありがたく、いただきましょうか」

 

 エリシアはやわらかな微笑みを浮かべ、静かに手を合わせる。

 セイとリアナも手を合わせ、ミミはもぐもぐと頬を膨らませたまま、慌てて両手をそろえた。


「「「いただきます」」」


 久しぶりに囲む、気のおけない仲間たちとのあたたかい食卓――

 それは、旅の終わりにふさわしい、何よりのごちそうだった。


 ◇


 夕食を終えるころには、外もすっかり暮れていた。

 ミミがふぅっと満腹そうに息をつき、リアナが軽く伸びをして立ち上がる。


「はぁ……やっぱり家のごはんって落ち着きますね。モフルにちゃんと感謝しないと」


「ねぇ、ねぇ〜、お風呂もちゃんと沸いてるのかな?」


 浴室のほうをそわそわと気にするミミに、セイが肩をすくめた。


「おそらく、モフルがそこまでやってくれておるじゃろう。長旅明けじゃし、順番に入ってこい」


 リアナがぱんと手を打ち、「じゃあ、私から先に失礼しますね」とすたすた浴室へ。

 その背中を見送りながら、ミミはむくれたように口を尖らせた。

 

「ずるい……あたしが一番に入りたかったのに……」


 そんなミミを、エリシアがやわらかくなだめる。


「一番じゃなくても……きっと、あたたかくて気持ちいいお湯ですよ。ミミさんも、楽しみに待ちましょう?」


 ミミは一度うんとうなずき――次の瞬間、ぱっと目を輝かせた。


「……あっ! 一緒に入ればいいんだっ!」


 ぽんと手を打ち、くるりと反転。そのまま小走りで浴室へ駆けていく。


「ちょ、ミミさん!? そ、それはさすがに……!」


 エリシアの制止に、ミミは振り返っていたずらっぽく笑った。


「むふふ、リアナちゃんの成長、ちゃんと見届けてあげなきゃね~♪」


 そのまま勢いよく浴室の扉を開け、躊躇なく中へと飛び込んでいく。


「えっ……ミミさん!? 一緒に!? ……まあ、別にいいですけど……っ、ちょ、ちょっと、変なとこ見ないでくださいよぉ……!」


 浴室の向こうから、リアナの戸惑った声が響いてくる。

 居間に残されたふたりは、思わず顔を見合わせた。


「……あやつは、ほんに自由じゃのう」


 セイは頭をぽりぽりとかき、どこか感心したように目を細める。

 そして、ふと思いついたように隣のエリシアへ視線を向けた。


「そうじゃ、エリシアも一緒に入ってきたらどうじゃ? 皆で入るのも――」


「……セイさん。この流れでそれは、“セクハラ”です」


 穏やかな表情のまま、ぴたりと釘を刺す。


 セイは一瞬かたまり、慌ててぶんぶんと両手を振った。


「い、いやいや!? ち、違うんじゃ! そんなつもりではなくてなっ!?」


 しどろもどろの様子に、エリシアはくすりと笑う。


「ふふっ……冗談です。でも私は……あとで、ひとりでゆっくり浸かりますね」


 そう言って、明かりの灯る廊下へと静かに歩いていった。


 やがて浴室の笑い声が静まり、湯気の匂いがふわりと漂ってくる。

 入れ替わるように、ミミとリアナが湯気をまとって戻ってきた。


「ふぅ〜……しあわせぇ……」


 ミミはぽやんとした顔で、まだ頬を紅潮させたまま床にごろんと転がる。

 髪は少し水を含み、ふわりとハーブの香りが漂っていた。


「ほら、ミミさん、髪乾かさないと風邪引きますよ。……ったく、はしゃぎすぎなんですから。ほら、起きてください」


 リアナは寝転がるミミをそっと抱え起こし、背もたれに寄りかからせるように座らせると、持ってきたバスタオルで濡れた髪を丁寧にぬぐってやった。

 タオル越しに指先がやさしく動くたび、ミミは目を細め、気持ちよさそうに身を預ける。


「えへへ~、ありがと、リアナちゃん」


 くすぐったそうに笑うミミを見て、セイがぽつりと呟いた。


「おぬしら、ほんとに姉妹みたいじゃのう」


「……まあ、ミミさんが妹なら、悪くないかもね」


 リアナがやれやれと肩をすくめると、ミミがむくれたように口を尖らせる。


「なにそれ~? わたしがお姉さんでしょ? ねぇ?」


「えっ、ミミさんがお姉さん? ……それはそれで……ありかも」


 リアナが少し笑いながら応じると、ミミは「やったー♪」と嬉しそうに両手を上げた。

 ほんのりあたたかい空気が、部屋に広がっていく。


 そんなやりとりを聞きながら、セイはひとつ伸びをして、ゆるりと腰を上げる。


「さて、今日はもうこれでお開きじゃな。明日からまた、ギルドの依頼やら何やらで忙しくなるぞ」


「はーい」

「……はーい……(もう眠い)」


 ミミとリアナは、エリシアに「お風呂空いたよ」と声をかけると、それぞれの部屋へ戻っていった。

 廊下の奥、まだ明かりの灯る浴室をちらりと見やり、セイも部屋へ戻っていった。



────────────────

▼ステータス情報


【名前】セイ

【年齢】25(肉体年齢)

【職業】テンプレ詰め込み勇者

【レベル】21

【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復


【同行者】

 ・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)

 - 好感度:かなり高

 - 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり

 - 状態:淡い色のぴったりとした薄手のパジャマを装備。お風呂で気分もリフレッシュ

 - 補足:リアナと姉妹だとしたら、自分が姉ポジションだと本気で思っている


 ・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)

 - 好感度:高

 - 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ

 - 状態:ゆったりしたキャラクターもののパジャマを装備。お風呂でちょっぴり気疲れ

 - 補足:男兄弟しかいないリアナは、ミミとのお風呂で仮想姉妹気分をちょっぴり満喫した


 ・エリシア(元聖女様/24歳)

 - 好感度:かなり高

 - 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)

 - 状態:ちょっと大人な薄手のネグリジェを装備。しっかりと休養をとり体力万全

 - 補足:なんだかんだでモフルのことが心配。いつか慣れて出てきてくれることを願っている



最後まで読んでいただき、ありがとうございます!


もし少しでも「面白い」「続きが気になる」と思っていただけましたら、

ブックマークや感想で応援していただけると嬉しいです。泣いて喜びます。


もちろん「面白くなかった」などのご意見も大歓迎です!

しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。


それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品

『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!


気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、

ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。


皆さまの感想が、何よりのモチベーションです。

それでは、次回もぜひよろしくお願いします!

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