第33話 王都の朝
冒険者ギルド王都支部――その建物を出た先の大通り。
ギルドでの報告を終えた一行は、外の陽射しを浴びながら、そろって肩の力を抜いていた。
「……ふぅ。とりあえず、無事に昇格できてよかったのう」
腰に手を当て、空を見上げてセイが言う。すると、ミミがぱっと顔を輝かせた。
「ねえねえセイ〜。せっかく王都まで来たんだし、もうちょっと観光していかない?」
「うむ。ワシもそれを考えとったところじゃ。ルキア村に戻る前に、少しゆっくりしていくかの」
「さんせーいっ!」
両手を挙げて跳ねるミミに、リアナもにこりと微笑む。
「私も、まだ行きたい場所がいくつかあるのよね。……騎士団の資料館とか、武具店とか、王立広場の演武台とか!」
「……あの、それ全部“訓練関連”なのでは?」
エリシアが苦笑しつつ、やんわりとつっこむ。
「でも……私も、王都の教会や祈祷堂に行きたいと思ってました。昨日、ちょっとだけ立ち寄れたんですけど……できれば、ゆっくり時間をかけて」
セイはそれぞれの意見に頷き、ひとつ提案を出した。
「ならばこうしよう。今日はもう遅いし、ひとまず宿に戻って休もう。さすがに疲れたしのう。
それと――明日もう一晩、宿をとって、午前中は自由時間、それぞれ好きな場所を回って、午後は皆で名所めぐりじゃ」
「さすがセイ! まとめるのうまい〜!」
ミミが嬉しそうにセイの腕に飛びつく。すると、隣でリアナが少しむっとした顔をした。
「……ミミさんの胸が当たって、にやけてんじゃないわよ、セイ?」
「えっ。にやけておったか? これは、すまん!」
「じゃあ、リアナちゃんにも……むぎゅー♪」
おどけた声とともに、今度はリアナへ飛びつこうとするミミ。
「いえ、ミミさん。そういうことじゃなくて」
そんなやりとりを眺めながら、エリシアは思わず表情を緩め、そっと空を見上げた。
「……よい旅になりますように」
◇
その後、外で夕食を済ませた一行は宿へ戻った。
昇格試験にギルドへの報告、王都の喧騒――長い一日を終え、それぞれぐったりとした様子で部屋に入っていく。
「ふぅ〜……ベッドふかふか〜……」
ミミは部屋に入るなり、身を投げ出すようにベッドへ倒れ込んだ。
背中をぐでっと反らせた次の瞬間には、もう微かな寝息が聞こえてくる。
「……早いですね、寝るの」
リアナはくすっと笑い、毛布をそっとかけてやった。
エリシアは窓辺に腰掛け、外の景色を眺める。夜の帳が降りるなか、王都の街灯がぽつりぽつりと灯り始めていた。
「……すごく大変な一日でしたね」
その呟きに、リアナも小さく頷き、ベッドへ身を横たえる。
「ですね。……でも、すごく…………すぅ……」
言葉は途中で途切れ、そのまま寝息に変わる。
エリシアは思わず小さく笑い、そっと立ち上がってカーテンを閉じた。
「ふふ……本当に、おつかれさまでしたね」
明かりを落とし、自分もベッドの隅に腰を下ろす。
穏やかな呼吸音が二つ、部屋に響いていた。
「……私も、休もうかな」
そっと目を閉じると、部屋は静かな眠りに包まれていった。
◇
翌朝。
窓の外から朝の光が差し込み、王都の街がゆっくりと目を覚ます。
ベッドの上で大の字になったままのミミは、相変わらず幸せそうな寝顔で微かな寝息を立てていた。
「王都の教会と祈祷堂に行ってきますね。昼食前には戻ります」
支度を終えたエリシアはそう告げ、セイとリアナに軽く会釈して部屋を出る。
扉が静かに閉まり、部屋には二人と一人(熟睡中)だけが残った。
「ワシは……少し外をぶらついてくるかの。特に用はないが、まあ、散歩じゃ」
伸びをしながら言うセイに、身支度を終えたリアナが小さく手を挙げる。
「あの、セイ。私も、一緒に行ってもいい?」
「む……よいが、ほんとにただの散歩じゃぞ? つまらんかもしれん」
少し意外そうに目を瞬かせるセイ。
「大丈夫よ。ちょうど歩きたい気分だったし……それに、少し聞きたいこともあるしね」
「ふむ、まあそれなら」
こうして二人は、寝坊中のミミをそっと置いて部屋を後にした。
朝の街では、市場の露店がゆっくりと開き始め、焼きたてのパンの香ばしい匂いや、果物の甘い香りが風に乗って漂ってくる。
人通りのまだ少ない通りを、セイが手を後ろに組んで歩き、リアナは少し距離を取ってその後をついていく。
しばらくの沈黙のあと、リアナがふと口を開いた。
「ねえ、セイ……昨日の、あの魔族……ダルセナって、何者なの?」
歩みを緩めたセイが、ちらりと振り返る。
「なんじゃろうな。昨日も言ったが、正直よく分からん」
「え……?」
「いや、ワシがこの世界に来てから、まだ一年も経っとらんのじゃぞ。
なのに、あやつが封印されたのは何百年も前……そもそも、ワシ、生まれてすらおらん」
セイは苦笑して肩をすくめた。
「……でも、向こうはあなたのことを知っていたわよね。まるで、再会したみたいな言い方だった」
「うむ。それが、謎なんじゃ」
リアナは視線を落とし、歩幅を少し縮める。
「それに……少し気になることも言ってた。あなたが、もう帰ったとかなんとか……」
「帰る? どういうことじゃ?」
「知らないわよ。私に聞かれても……でも……」
言いかけて、リアナは言葉を飲み込んだ。
「……でも、なんじゃ?」
「ううん、何でもない。それよりほら、あっちのパン屋さん。朝からいい匂いがしてるわ。一緒に行きましょ、セイ」
話題を切り替えるように言って、リアナは歩き出す。
二人はパン屋で軽く休憩し、寄り道をしながら街を歩いた。
広場を抜け、噴水のある通りを通り、幾つかの露店を冷やかしながら――気づけば、宿の近くまで戻ってきていた。
部屋の扉を開けると、そこには腕を組み、頬を大きく膨らませたミミが座っていた。
ぷんすかと全身で不機嫌を表している。
「朝から、ふたりでいいことしてたの?」
セイがぽかんとし、リアナは眉をぴくりと動かす。
「だってミミさん、全然起きないんですもん。
仕方ないから、セイとふたりで“いいこと”してきました」
「おいおい、妙な言い方をするんじゃない!」
慌てて止めるセイだったが、時すでに遅し。ミミは唇を尖らせ、顔を背けた。
「あー、もういいもんねっ。リアナちゃんも、結局やることやってるんだ……!朝っぱらからお熱いね!」
布団に突っ伏すミミを、リアナが苦笑しながら軽くつつく。
「冗談ですよ。ね? まだお昼まで時間ありますし、おいしいパン屋さん見つけたので、みんなで行きましょ?」
「……ほんと?」
「ほんと。でも次はちゃんと起きてくださいね?」
「……うぅ、わかったぁ」
「おいおい、さっきそのパン屋で食べたばかりじゃぞ……また行くんか?」
――そして、結局。
「おかわり、くださーいっ!」
パン屋を再訪した二人とミミは、テラス席で思い思いのパンを頬張っていた。
ミミは満足そうに頬を膨らませ、セイは呆れつつも付き合っている。
「……本当に“また”来るとはな」
「ふふっ。でも、さっきのクロワッサン、美味しかったわよね?」
リアナが言うと、ミミも満面の笑みで頷いた。
「うんっ、バターがじゅわってしてて最高だね!」
そんな中、通りを行き交う人々の中に――見慣れた青いローブが目に入る。
「――あれ、エリシアさんじゃない?」
リアナの声に、ミミが勢いよく立ち上がって手を振った。
「エリシアちゃん! こっちこっち!」
エリシアは手を振り返し、ゆっくりと近づいてくる。
「お昼前に戻るって言ったのに……少し遅くなっちゃいました」
「大丈夫、大丈夫! ちょうど今、おかわりしてたとこだよ。ね、エリシアちゃんも一緒に食べよ!」
促されて席についたエリシアは、パンを一口かじり、穏やかに微笑んだ。
「……教会も祈祷堂も、とても静かで……穏やかな気持ちになれました。よい時間でした」
その口調に、ミミもリアナもほっとしたように笑みを返す。
「よかったね、エリシアちゃん!」
「ええ、とっても」
ひとしきりパンを味わった四人は、午後に訪れる名所を相談するため、ひとまず宿へ戻るのであった。
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▼ステータス情報
【名前】セイ
【年齢】25(肉体年齢)
【職業】テンプレ詰め込み勇者
【レベル】21
【スキル】生活知識大全/魔法知識大全/発想展開/世界法則書き換え/時間停止/運命介入/魅了体質/加齢無効/無限成長/強制ハーレム誘導/おじいちゃんの優しさ(ヒロイン全員好感度+100)/威圧/加速支援/魔法適性鑑定/精霊感応/状態異常回復
【同行者】
・ミミ(記憶喪失の少女/推定15歳)
- 好感度:かなり高(”いいこと”に興味津々)
- 能力傾向:回復系(第一段階覚醒済)/ヒーラー適性あり
- 状態:旅人風の白いワンピースを装備。しっかり寝て疲れは取れた模様
- 補足:自分だけ置いてけぼりにされたことに軽くショックを受けたが、寝坊した自分が悪いことは理解している
・リアナ(元騎士団の見習い/19歳)
- 好感度:高(ふたりの時間も悪くない)
- 能力傾向:攻撃系(雷・風属性)/貫通・麻痺・加速タイプ
- 状態:結構高そうな銀の胸当てを装備。十分な睡眠で体調ばっちり
- 補足:セイとミミの距離感に少し嫉妬心が芽生えたけど、どうもそれを認めたくないみたい
・エリシア(元聖女様/24歳)
- 好感度:かなり高(なんだかんだで今回も助けられたと思ってる)
- 能力傾向:支援・結界・祈祷(神聖属性)
- 状態:青と白のシスターっぽい洋服を装備。十分な睡眠で体調ばっちり
- 補足:相変わらずおっとりポジションながらも、ツッコミ役もこなし始める
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しっかり次につなげるべく、泣きながら執筆します。
それと、本作とは少し雰囲気の違う シリアス寄りのファンタジー作品
『暁のアストラニア』( https://ncode.syosetu.com/n2326kx/ )もぜひぜひ!
気分転換に「じっくり読める作品が欲しいな」と思ったときにでも、
ふらっと覗いていただけたら、すごく嬉しいです。
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それでは、次回もぜひよろしくお願いします!




